糖尿病網膜症は、糖尿病によって網膜の細い血管が傷んで起きる合併症の一つです。

過去に血糖コントロール状態が悪いと、現在は血糖コントロールがよくても、重度の糖尿病網膜症になることがあります。

初期には自覚症状はほとんど現れません。無症状であっても定期的に眼底検査を受けることが重要です。

糖尿病の血糖コントロールが悪いと、網膜症の発症が早く、その後の進行も早くなります。したがって、血糖コントロールをよくすること(目標値HbA1c7.0%未満)が大切です。また血糖だけでなく、血圧や脂質異常の治療も大変重要です。

治療を受けずに放置していると、失明するおそれがあります。ただし、定期検査を受け、適切な時期に適切な治療を受けることで、失明を防止することが可能です。

糖尿病と診断されたら、網膜症を合併していなくても半年~1年に1回、初期の単純網膜症の場合は3~6カ月に1回、眼底検査を受けてください。進行している場合は、フルオレセイン蛍光眼底造影が行われます。

酸素不足を起こしていたり、新生血管ができているときは、網膜にレーザーを照射して焼き固めるレーザー治療が行われます。新生血管が切れて硝子体出血が生じたり、網膜剥離を起こしている場合には、硝子体切除が必要になります。

網膜の中心部の黄斑部に水がたまっている場合には、血管のこぶをレーザーで焼いたり、VEGF阻害薬*やステロイド薬の注射をしたり、ときには硝子体切除術が行われます。
*VEGF阻害薬:血管内皮増殖因子(VEGF)という、網膜血管から水を漏れやすくする物質に対して、そのはたらきをおさえる薬

普段の生活で気をつけてほしいこと
  • 食事や運動などの生活習慣を改善したり禁煙したりして、血糖コントロールや血圧、脂質(中性脂肪やコレステロール)を正常に保つように努めましょう。
  • 急激に視力低下がみられた場合は、眼科を受診してください。
  • 眼科医の指示に従って必要な時期に再受診してください。勝手に受診を中断しないでください。