Vogt-小柳-原田病は、眼の中に炎症が起こり、カメラのフィルムに当たる網膜が障害される病気です。日本人をはじめとするアジア人に多く見られます。

原因はよくわかっていませんが、メラニン色素を作る細胞を異物として認識して攻撃する自己免疫疾患と考えられています。他の人に感染することはありません。

視力の低下などの眼の症状だけでなく、頭痛や耳鳴りといった全身症状が現れることも多くあります。また、緑内障や白内障、新生血管黄斑症など眼関連の合併症や、白髪や皮膚の白斑などの全身合併症が生じることがあります。

治療は、初期に全身のステロイド薬治療をしっかり行うことが重要です。ステロイド薬治療は半年くらい継続する必要があります。

診断のために蛍光眼底造影検査が行われます。典型的な病像を呈していない場合、髄液検査が診断の補助になることがあります。

治療の基本は全身的ステロイド薬治療ですが、高齢の方や糖尿病などの全身疾患がある方などステロイド薬の全身投与が望ましくない場合には、代わりの治療としてステロイド薬を眼球周辺に注射する方法もあります。ただし、この治療法では、白髪や皮膚の白斑といった全身の合併症を予防することはできないかもしれません。

眼圧が不安定になる方の場合、緑内障の検査や治療が必要になります。白内障を合併すると手術が必要になることがあります。新生血管黄斑症が出現した場合には、その治療薬を眼の中に注射する必要があります。

普段の生活で気をつけてほしいこと
  • 全身ステロイド薬治療では、かなりの量のステロイド薬を使用します。ステロイド薬は全身の免疫状態を低下させるため、感染症にかかりやすくなります。また、血糖が上昇したり血圧が上がるなどの副作用が出ることがあります。そのため、治療開始後1~2週間は入院されることをお勧めします。
  • 退院後も、ステロイド薬を20mg以上内服している場合は、パチンコ店やカラオケボックスといった多数の人が狭い空間に集まるような場所に行くことは避けたほうがよいでしょう。
  • ステロイド薬治療が長期にわたるため、肥満や骨粗しょう症の副作用が現れやすくなります。炎症の急性期が過ぎたら、適度な運動を心がけてください
  • ステロイド薬を自己判断で中止することは非常に危険です。場合によってはショック症状を起こすことがあります。副作用が現れたときは、必ず主治医に告げてください。
  • ステロイド薬が途中で切れないように注意してください。再診予約日に受診できないときには事前に主治医と連絡をとって指示に従ってください。
  • 発熱や咳など、全身の症状が現れたときはすぐに受診してください。