抗うつ薬中毒は、抗うつ薬の大量の服用により、薬がもつ副作用である細胞膜興奮抑制が働き、心筋内伝導速度が遅れて心筋収縮力が減退し、その結果、血液の循環が不安定になって起こります。この状態が続くと、生命にかかわることもあります。

症状としては、不整脈、低血圧、意識障害、けいれんなどが挙げられます。

しかし、症状が乏しくてもあとで重症となる場合があり、時間経過とともに診断し、治療していきます。

急変する可能性があるので、治療は集中治療室で行います。入院は症状が消失してから12時間は必要で、最低でも24時間の入院治療になります。

治療は循環の安定化を目標にします。輸液を行い、改善が乏しければ昇圧薬を使用し、不整脈に対しては抗不整脈薬を用います。薬で安定が図れないときは体外循環を使用し、呼吸が不安定な場合は人工呼吸器による管理が必要です。

症状の消失後は、大量服用の原因について精神科の専門医と相談する必要があります。

予後は服用した抗うつ薬の種類によって異なります。三環系抗うつ薬を大量使用した場合は致死率が高くなります。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の場合は、生命の危険に至ることはまれです。