慢性運動失調は、手足の麻痺はないのに、体がふらついてうまく歩けなくなる症状が続くものをいいます。

慢性運動失調を主症状とするものに、脊髄小脳変性症という神経変性疾患があります。神経難病の一つで、小脳を中心に、徐々に中枢神経系が広く障害される進行性の病気です。

神経内科では、頭部MRIなどで小脳の萎縮を検査し、診断を下します。

脊髄小脳変性症の原因は遺伝性のものと非遺伝性のものがあり、感染性のものではありません。有病率は10万人に18人程度といわれます。そのうち約70%は、非遺伝性です。

ふらつき、歩行障害、体のバランスがとりにくい、ろれつが回らない、字が書きにくいなどの症状を示します。その他、排尿・排便困難や手足のつっぱり、筋肉が硬くなる、動作も遅くなるなどの症状が見られることもあります。病型も進行速度も一人ひとりが違います。

脊髄小脳変性症の治療法は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンなどを投与すると同時に、症状に応じて治療していきます。

ふらつきや歩行困難により体を動かさないでいると、廃用症候群といわれる障害が生じ、筋力だけでなくバランス能力が低下します。症状の進行を予防するためには、筋力訓練やバランス訓練などにより、リハビリテーションを行うことが大事です。

長期にわたるアルコールの多飲は、アルコール性小脳失調を引き起こすので、アルコールは節制しましょう。

脊髄小脳変性症は、厚生労働省が認定している特定疾患の一つです。医療費の一部負担などの制度があります。福祉制度でも、40~65歳未満は介護保険の特定疾病として認められ、傷害者年金などの制度があります。受診している医療機関や保健所に尋ねてみましょう。