せん妄とは意識が混濁して、幻覚や錯覚などが生じる状態をいいます。認知症などによる意識障害や、手術後の睡眠と覚醒のリズムの乱れによる一過性の意識障害が原因になります。

認知症の場合は、落ち着かない状態が夕方から悪化して、せん妄状態になることがあります。幻覚や錯覚により大声で叫んだり興奮したり、暴れたりします。これを夜間せん妄といいます。

手術後に生じるせん妄では、精神的に問題がなかった人が術後に妙に興奮したり、幻視・幻聴などの異常体験を訴えたりすることがあります。手術や病気への不安がせん妄を誘発することもあります。

せん妄の重症度や持続時間の長短により薬剤を使用することがあります。その薬剤により、まれに血圧が低下したり、パーキンソン症状などの副作用が現れることがあります。その場合には、すぐに他の薬剤に変更されます。

認知症の場合は、本人が使用している湯呑みや時計、ラジオ、カレンダーなど見当識(自分のいる場所の把握)を助ける環境をつくることが大事です。環境の整備だけで回復してくることもあります。

術後せん妄の場合は、できるだけ早くICUやCCUから一般病棟に移り、環境を整え、昼間は目覚め、夜間はぐっすり眠るようにして覚醒と睡眠のリズムをとることが重要です。

興奮や幻視・幻聴などの異常体験が多く、話しかけても意思の疎通ができない場合には抗精神病薬を内服したり、注射したりすることがあります。