抗がん薬の種類によっては、副作用として嘔吐や吐き気を誘発しやすく、数日間にわたって飲食ができなくなり、脱水や栄養不足から体を壊し、その後の治療意欲を損ねることがあります。

制吐療法を行わなければ、投与後24時間以内に90%以上の患者さんが嘔吐を催す高度催吐性抗がん薬としては、肺がんなど多くのがんに使用されるシスプラチン、これに準ずるものとして乳がんの抗がん薬のAC療法が挙げられます。

悪心・嘔吐は、抗がん薬が腸の細胞にはたらきかけ、セロトニンという物質が放出され、これが迷走神経を刺激して、サブスタンスPという神経伝達物質の分泌を促し、脳の嘔吐中枢から嘔吐の命令が下されるために起こると考えられます。

制吐療法を行わないと投与後24時間以内に30〜90%の患者さんが嘔吐を催す中等度催吐性抗がん薬としては、乳がんに使用するCMFなどが挙げられます。

嘔吐を引き起こすセロトニンやサブスタンスPのはたらきを食い止める受容体拮抗剤は嘔吐が起きる回路を遮断し、吐き気を止めます。ステロイドもそのはたらきは不明ですが、制吐作用があります。

ガイドラインでは抗がん薬のメニューごとに、制吐剤の種類や量を示しています。悪心・嘔吐が治まらないときは、この中から有効な方法を選び直します。

制吐剤の副作用にも注意しましょう。

  • セロトニン受容体拮抗剤では軽度の頭痛や便秘がみられます。これには鎮痛剤や下剤で対処します。
  • ニューロキニン1受容体拮抗剤では、軽度の頭痛、便秘、しゃっくりがみられます。この場合は他剤との相互作用に注意し、他剤の量を調整します。
  • ステロイドは既往症にウイルス性肝炎、糖尿病、胃・十二指腸潰瘍、神経疾患などがあるときは控えます。