全乳がんのうち、遺伝要因が関係しているのは5~10%とされています。

遺伝性乳がんや卵巣がんのうち、BRCA1あるいはBRCA2遺伝子の病的変異が知られています。

BRCA遺伝子は、性別に関係なく親から子へ1/2の確率で遺伝します。

BRCA1またはBRCA2遺伝子のいずれかに病的変異がある場合、乳がんの生涯の発症リスクは36~85%、卵巣がんの生涯の発症リスクは16~60%となります。

かんたんチェック(日本乳癌学会研究班作成)1)
母方、父方それぞれの家系について、以下の質問にお答えください。あなた自身を含めたご家族のなかに該当する方がいらっしゃる場合に、□にチェックを入れてください。

  • 40歳未満で乳がんを発症した人がいますか?
  • 年齢を問わず卵巣がん(卵管がん・腹膜がん含む)の方がいらっしゃいますか?
  • ご家族のなかでお一人の方が時期を問わず原発乳がんを2個以上発症したことがありますか?
  • 男性の方で乳がんを発症された方がいらっしゃいますか?
  • ご家族のなかでご本人を含め乳がんを発症された方が3人以上いらっしゃいますか?
  • トリプルネガティブの乳がん(ホルモン受容体陰性、HER2陰性)といわれた方がいらっしゃいますか?
  • ご家族のなかにBRCAの遺伝子変異が確認された方がいらっしゃいますか?
上記の質問に1つでも該当する項目があれば、あなたが遺伝性乳がん・卵巣がんである可能性は一般よりも高いと考えられます。専門の医療施設で詳しいリスク評価および情報提供などの遺伝カウンセリングを受けることが可能です。
*参考ウェブサイト
1)日本HBOCコンソーシアム(http://hboc.jp/downloads/kantancheck.pdf)

BRCA1/BRCA2の遺伝子検査は血液検査で行います。保険適用ではありません。

遺伝子検査の結果、BRCA1あるいはBRCA2に病的変異が認められた場合には、乳がんや卵巣がんの発症の特徴に応じた対処法が勧められます

  1. ① 乳がん検診:18歳から自分の乳房の状態をよく知るように心がけ、異常を感じたら受診しましょう。25歳からはMRI、30歳からはMRIとマンモグラフィによる検診を受けることが勧められています。
  2. ② 乳がんを発症した場合、同じ乳房の別の場所に新たな乳がんができるリスクが高く、温存手術ではなく乳房切除術を検討する必要があります。また、反対側の乳がんの発症リスクも高くなります。乳がん発症の予防のためにホルモンを抑える薬の内服が有効であることもわかっています。
  3. ③ 卵巣がんは、検診で発見されにくいため、出産を終えた女性や閉経後の女性は、予防的に卵巣を切除することも勧められています。

遺伝子検査の結果BRCA1/BRCA2に病的変異が認められなかった場合、あるいは遺伝子検査を受けない場合は、個々のリスクに応じた対処を行います。

普段の生活で気をつけてほしいこと
  • 自己乳房検診を月に1回行いましょう。乳房にしこりを感じたら受診しましょう。
  • リスクに応じた検診を定期的に受けましょう。