急性散在性脳脊髄炎は、主にウイルス感染やワクチン接種後に生じる病気で、中枢神経(脳や脊髄)に対する自己免疫性疾患です。感染症など外敵から自分自身を守るはずの免疫機構が何らかの理由で自分自身を拒絶することによって起こります。
神経線維を覆って情報伝達を手助けしている髄鞘細胞(オリゴデンドログリア)を主に傷つけます。この髄鞘が障害されることを脱髄といいます。
症状としては、頭痛、発熱、嘔吐、意識障害、視力障害、四肢の筋力低下、歩行障害、感覚障害、排泄障害などがみられます。
海外の調査では、発症率は年間100万人当たり4~8人とされ、小児に多い疾患です。
この疾患を診断するマーカーはなく、臨床経過や画像検査、血液検査、髄液検査などから総合的に診断します。
早期診断が予後に影響を与えるので、必要最低限の検査の結果をみて、すぐに治療に入ります。後に診断の見直しが行われることもあります。
保険適応のある薬剤はありません。一般には、大量のステロイドを短期間に投与するステロイドパルス療法が有効とされます。治療後は、1~2カ月かけてステロイドの量を徐々に減らしていきます。
ステロイドの長期服用では、さまざまな副作用が生じます。ただし、再発予防目的のステロイド維持は基本的に不要です。
その他、血液浄化療法、免疫グロブリンなどの治療法が有効な場合があります。
予後は良好ですが、重篤な後遺症を残す場合や、命に関わる場合もあります。一般に再発はまれです。