腸チフス・パラチフスは、チフス菌による感染症です。主に、汚染された食品や水を介して感染します。

一般に海外旅行先で感染することが多く、現在日本では1年間に20~30例が報告されています。

典型的な症状は38~40℃の発熱です。無治療のまま放置すると重症化して、腸穿孔などの重篤な合併症を生じることもあります。渡航後に、便の色が黒や赤に変化したり、お腹の痛みが強くなった場合はすぐに医療機関に受診しましょう。

感染している菌を確認するために、治療開始前に血液培養検査、便培養検査を行います。病原体が同定できない場合、病初期であれば、病原体を確定させるために骨髄穿刺を行うことがあります。

治療には抗生剤を用います。細胞内寄生細菌は薬剤が細菌に届きにくいため、治療開始後も数日間は症状が持続することがあります。

適切に治療すれば、2週間程度で回復しますが、治癒後も再発のリスクが一定程度あります。以前より症状は軽いのですが、このような場合には、必ず受診しましょう。

胆石にある人等では治癒後にも、治療しきれない菌が体内に残ることがあるため、注意が必要です。

便に病原体が排出され、それに触った手で飲食物に触り、その飲食物を介して他の人にうつすことがあります。周囲の人に感染させないためにも手洗いが重要です。また、治るまで食事を作ることは避けましょう。

感染症法上で、飲食店関係で働く方の場合は、就業が制限されます。就業を再開するには、治癒後の便培養検査で2回の陰性を確認する必要があります。

腸チフス・パラチフスはワクチンで予防が可能です。流行地に旅行するときは、渡航前にトラベルクリニックでワクチンを接種するとよいでしょう。