肝臓は体に必要な物質を合成し、老廃物を排泄する重要な働きをしています。この肝臓を構成する肝細胞が急激に大量に壊れて、肝臓の機能が低下していく病気を急性肝不全といいます。

肝臓の機能が低下すると、血液を固めるのに必要な凝固因子がつくれなくなります。また、老廃物が蓄積して肝性脳症という意識障害を起こすことがあります。

健康な人が急に発熱、全身のだるさ、吐き気、食欲不振など急性肝炎の症状に見舞われ、その8週間以内に血液中の凝固因子の濃度がある値以下になった場合に急性肝不全と診断します。特に、肝性脳症が生じている場合は急性肝不全昏睡型と診断します。

肝細胞には増殖能力があり、肝障害で多くの肝細胞が失われても自然に元に戻りますが(肝再生)、急性肝不全の場合は肝細胞が大量に壊れるため、肝細胞の増殖が遅れ、適切な治療をしないと命に関わることがあります。

肝機能検査、腎機能検査、血液凝固検査などが行われます。

B型肝炎ウイルスの感染が原因の場合は、核酸アナログを用いた抗ウイルス療法を行います。

自己免疫性肝炎や薬物アレルギーが原因の肝炎の場合は、副腎皮質ホルモンを大量に点滴するパルス療法を行います。

A型、B型急性肝炎が重症化したときには、血液凝固の異常が肝障害の原因の場合があるので、血液を固まりにくくする抗凝固療法を行います。

急性肝不全昏睡型になった場合は、肝臓の働きを補う人工肝補助療法を行います。これには、健康な人の血漿(血液中の血球以外の成分)と交換する血漿療法と、血液透析を応用した血液濾過透析があり、通常、この二つを併用します。それでも機能が回復しないときは肝移植を行います。