大腸ポリポーシス(FAP)は、放置すれば100%大腸がんになる遺伝性の病気です。10歳代に大腸に多数のポリープができ始め、20歳代から大腸がんが発生します。

常染色体の優性遺伝によるもので、第5染色体にあるAPC遺伝子の異常によって生じます。頻度は17,400人に1人と推定され、全大腸がん疾患の約1%を占めます。

診断は、大腸に100個以上の腺腫を認めるときや、100個に満たないけれどFAPになった家族がいる場合に、大腸ポリポーシスといいます。検査では、下部消化管内視鏡検査と組織を採って顕微鏡で調べる生検を行います。

大腸がん以外にも、消化管や他の臓器にがんを含むさまざまな病変が発生します。特に、十二指腸ポリープは放置するとがん化することがあるので、大腸ポリポーシスと診断されたら、上部消化管内視鏡検査を行っておく必要があります。

治療で大切なことは、大腸がんが発生する前に予防的に大腸切除を行うことです。予防手術の方法は3つあります。肛門を含めた全大腸を切除し回腸をそのまま出し人工肛門を造設する「大腸全摘・回腸人工肛門造設術」、全大腸は切除するが肛門を残し、回腸を折り曲げて袋をつくり、肛門とつなぎ合わせる「回腸嚢肛門(管)吻合術」、結腸を切除し、回腸と直腸をつなぎ合わせる「結腸全摘・回腸直腸吻合」術です。

3つの術式には利点と欠点がありますが、現在多く行われているのは、大腸全摘・回腸嚢肛門吻合術です。ただし、直腸に腺腫が少ない場合は結腸全摘・回腸直腸吻合術が行われます。

すでに進行性大腸がんの場合は、大腸がんの標準的治療を行います。