臓器や組織が、体壁や組織の隙間などをすり抜けて飛び出したものをヘルニアといいます。
足の付け根(鼠径部/そけいぶ)にできるものを鼠径ヘルニアといいます。俗に“脱腸”とも呼ばれますが、腸以外の内臓が出てくることもあります。症状は、ヘルニアが発生した部分に膨らみがみられるほか、痛みや違和感を伴う場合もあります。成人の場合、加齢に伴い腹壁が弱くなることが主な原因です。
大腿ヘルニアも鼠径ヘルニア同様足の付け根にできるものですが、やや足先側が膨らみます。高齢女性に多くみられます。
腹部の手術でお腹を縫い合わせた筋膜(筋肉を覆う硬い膜)が開き、内臓が皮膚の下まで飛び出してお腹らが膨らむのが腹壁瘢痕ヘルニアです。手術の傷の感染、高齢、糖尿病、ステロイド薬使用、腎不全などの場合、起きやすいとされています。
鼠径ヘルニアは、手術により、飛び出た腸などを元に戻したあと、メッシュの人工補強材を挿入してヘルニアの出口を塞ぐのが一般的です。手術法には鼠径部を切開して行う方法と腹腔鏡を用いる方法があります。短期入院または日帰り手術も増えています。まれにヘルニアが再発したり、慢性的な痛みなどの合併症を起こすことがあります。
大腿ヘルニアは腸がはまり込んで腸閉塞を起こし、緊急手術が必要になる場合もしばしばあります。メッシュを用いた手術が多く行われますが、腸を切除した場合には組織を縫合して穴を閉じます。
腹壁瘢痕ヘルニアは、痛みや胃腸症状があれば手術、膨らみ以外に症状がなければ様子をみます。手術は、ヘルニアが小さければ穴を縫い閉じます。大きい場合は、一般的にメッシュを使用します。