物が豊かになり過ぎ、飽食の時代になった結果、やせていることに価値が置かれる世相を見事に表す「現代を代表する心身症」です。先進国で多くみられ、日本でも増加し続けています。

先進国では女性なら誰もがやせ願望を持っていますが、本症はそれが行き過ぎた状態です。これが続くと身長の伸びが止まり、脳の萎縮が始まります。

社会環境を含め、本人の資質や家族環境など多くの発症要因が複雑に絡み合って出現しますから、多面的に考えましょう。

家族は、「なぜ、食べないのか?」「もっと、食べろ」「食べないと死ぬ」といった言葉を言ってはいけません。「食べたくないから食べない状態」であるため、患児の気持ちを考えない食の強制は無意味なだけでなく、むしろ悪化させていくことが多い病態です。

「食べて欲しい」「食べたくなるものを料理する」など、家族の姿勢や努力が必要です。

進行すると命を落とすこともあるので、慎重に経過をみていく必要があります。

医師はあなたの将来を見越して、これから少しでも心身の健康を取り戻すことに協力していきますから、無理のない範囲で、2人で考え実行していきましょう。

今はやせることばかり考えていますが、将来のことを色々な面から考えてみましょう。

このままでは、身長が伸びない、脳の萎縮、骨粗鬆症による骨折など、色々支障もでてくる可能性もありますから、最低限できることをして、予防しましょう。

身体的な危機状況を治すだけでなく、この病気になった根本原因である「心の歪み(特に母親と父親)」を治すことが大切です。基本的には家族が治す心構えをもち、医療はそれを手助けし、身体的危機を悪化させないように管理をします。

最大の原因は本人の性格(素因と育ち方が形成する)に、両親の夫婦関係から食卓状況まで家庭の問題が重なるので、総合的治療が必要で、医療だけが治すものではありません。心配すべきは「体(やせ)」だけでなく、子どもの「心の歪み」であり、最も求められるのは、子どもの素因の適切な把握、これまでの養育の見直しや、親の言動への反省です。

家庭での食卓状況の改善はすぐにでも始めてください。

早期から無月経に対する婦人科的ホルモン療法は行わないようにします。

普通の生活をしてよいのですが、やせの程度によってスポーツの禁止など、医師の判断に従ってください。少しでも食べる努力をして、体を壊さない方法を医師と一緒に考えていきましょう。