臓器や組織が体壁や組織の隙間などをすり抜けて飛び出したものをヘルニアといいます。足の付け根(鼠径部/そけいぶ)にできるものが鼠径ヘルニアです。

鼠径ヘルニアは、胎児期に発生する腹膜鞘状突起が生後も残り、ここへ腹腔内臓器が飛び出してくることで起こります。

100人中3~4人が発生するといわれます。

ヘルニアが発生した部分の皮膚が膨れます。重症になると臓器が飛び出して戻らなくなる“かん頓”になります。

かん頓の状態が続くと、飛び出した臓器の虚血・壊死を招く可能性があるため、手術により、飛び出た臓器を戻します。

手術は、全身麻酔下で行われ、1時間以内に終了します。

気管支喘息やアレルギー疾患を合併している場合には、麻酔のリスクが高いため、術前に胸部X線検査や血液検査などを行います。

血友病など出血傾向がある場合や血液凝固を抑制する薬を服用している場合には慎重に手術適応を決める必要があります。場合には、一時、血液凝固抑制剤の服用を中止することがあります。

水頭症などで腹腔内にシャントチューブを挿入している場合には、脳神経外科の医師と相談して手術・適応・時期を決めます。

片側の手術を受けて治った後、約10%の割合で、反対側に鼠径ヘルニアが発生します。その場合は、そちらの手術が必要になります。

飛び出した臓器が硬く、また、泣きやまなかったり、痛みを訴えるときはかん頓を起こしている可能性があります。すぐに小児科外科を受診してください。