抗利尿ホルモン(ADH)は、体内の水分バランスを保つために脳下垂体から分泌され、尿量を調節するホルモンです。このホルモンが必要以上に分泌される状態を抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)といいます。

髄膜炎や急性脳症などの神経疾患や、呼吸器疾患の合併症として、あるいは薬剤の副作用として起こります。

SIADHでは、腎臓から排泄され尿になるはずの水分が体内にたまるため、血液が希釈され、血中ナトリウム濃度が低下します。そのため、頭痛や吐き気、めまい、だるさなどの症状が現れます。

血中ナトリウム症が急に進行したりひどくなると、脳にむくみ(脳浮腫)を生じ、けいれんや意識障害をもたらすこともあります。

原因となっている病気の治療を行うとともに、水分を摂取したり、食塩を補充したりします。

血中ナトリウム値が大幅に低下したり、けいれんや意識障害などが起きた場合は、緊急に高濃度の食塩水を点滴したり、利尿剤を投与するなど、厳格な管理と治療が必要となります。

通常は、原因となっている病気が改善すれば、SIADHも軽快します。

一般に、小児に発症した場合は、入院しての治療が必要になります。