肺や心臓、肝臓などの臓器は、それぞれ胸膜、心膜、腹膜という膜に包まれています。これらの膜の表面を覆う組織が中皮で、この組織から発生する悪性のがんを悪性中皮腫といいます。

発生する場所によって、胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫と分かれます。胸膜中皮腫は最近、急増しています。

原因のほとんどはアスベスト吸入です。

中皮腫には上皮型、肉腫型、二相型の3タイプがあり、もっとも悪性度が高く、治療効果がないのが肉腫型です。上皮型は抗がん剤の効果が期待できます。

まず胸水を採って、がん細胞の有無を調べます。診断がつかなかったり中皮腫が疑われる場合は、胸腔鏡を用いて組織を採取して調べる組織検査を行います。そのほか、胸部CTやFDG‐PET検査を行ったり、横隔膜の状態をMRIや超音波で確認したりします。

治療は、早期の場合は手術をすることがあります。病気の一方の胸部をすべて取り去る、大きな危険を伴う手術です。

手術だけでは再発率が高いので、手術前に抗がん剤治療、手術後に放射線治療を行います。

病期が進むと、痛みが出てくることがあります。また、横隔膜にがんが進むと腹水がたまることがあります。腹水の影響で体重が増えたときは受診しましょう。

胸水検査や胸腔鏡検査の後にしこりを触れることがありますが、これは針を入れるところにがん細胞が動くためです。気がついたら担当医に相談しましょう。

中皮腫は公的補助の対象になっています。アスベスト関連の職歴がある場合は労災申請の手続きを、職歴のない場合は石綿被害救済法の手続きをします。

検査の結果が出たら、可能な限り家族と一緒に説明を聞きましょう。