呼吸した呼吸は肺胞という小さな袋まで入っていきますが、1回に呼吸する量=肺胞換気+死腔換気(肺胞までいかない呼吸量)です。(1回に呼吸する量)x(1分間の呼吸数)は1分間の呼吸量になりますが、1分間の換気量=1分間の肺胞換気量+1分間の死腔換気量(1分間の肺胞までいかない換気量)になります。体の中にたまった二酸化炭素は肺胞に入って体外に出ていきますので、肺胞に入る換気量が減ると動脈血中の二酸化炭素値は上昇するようになります。

呼吸器の病気が重症化した場合や神経・筋肉の病気による2次性肺胞低換気、脳卒中も含めて脳の病気による(2次性)中枢性肺胞低換気、高度の肥満以外に原因が不明な肥満低換気症候群、これらの病気では説明がつかない特発性肺胞低換気症候群などがあります。

肺にある肺胞と呼ばれる小さな袋で酸素と二酸化炭素の交換が行われます。肺胞低換気症候群は、肺胞の空気の出入りが低下し、肺胞での酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が低下し、動脈血中の二酸化炭素の量が増えた状態です。

はっきりとした病気が見つからない原発性低換気症候群、脳の病気のために起こる中枢性肺胞低換気症候群、肥満が原因の肥満低換気症候群などがあります。

覚醒時よりも睡眠中に低換気状態が強くなることが多くみられます。動脈血中の二酸化炭素分圧が増えると、脳の血管が拡張して脳圧が上がるので、早期起床時に頭痛に見舞われることがあります。そのほか、昼間も眠いなどの症状が現れます。

動脈血のガス分圧測定は必須です。そのほか、体重、身長測定、肺機能検査、呼吸筋力検査、さらに必要であれば脳の画像診断や神経学的検査が行われます。また、睡眠時の呼吸障害の程度を夜間の睡眠検査で調べる必要があります。

原因となった病気のコントロール(治療)を行い、それにも拘わらず、動脈血の二酸化炭素が患者さんの健康(病態)に問題があるときには、肺胞にいく呼吸量を増やす方法を使うことがあります。鼻マスク口マスクを用いて呼吸する量を増やすことが有効と考えられるときには鼻マスク、鼻口マスクを介しての人工呼吸を行うことがあります。また、これらの治療法で効果が得られない場合は、挿管・気管切開人工呼吸を行うことがあります。

「呼吸すること」を意識することが治療の中心です。呼吸を刺激する薬を使ったり、鼻マスクあるいは口マスクを用いて人工呼吸を行います。人工呼吸は、通常、睡眠中に行います。これらの治療法で効果が得られない場合には、気管切開をして人工呼吸を行います。

風邪や心不全などで急激に動脈血中の二酸化炭素分圧が増えることが多く、その際に吸入している酸素量を増やすと、急激に二酸化炭素分圧が上昇して意識障害が起こるCO2ナルコーシスに陥ることがあります。したがって、酸素投与量の増量は慎重に行わなければなりません。

肥満低換気症候群では、肥満が進行しないように積極的な減量が必要です。