乳びとは、胸管というリンパ管を流れる乳白色のリンパ液をいいます。乳びには脂肪分が多く含まれているので白色に見えます。

乳びは、腸管から吸収した脂肪と両脚から流れてきたリンパ液が合流して、胸管という1本の管を通って胸部を通り抜け、左鎖骨の付近にある静脈に流れ込みます。乳び胸水は、この胸管のどこかが損傷し、乳びが胸腔に漏れ出して貯留した状態をいいます。比較的まれな病気です。

症状としては息切れなどの呼吸困難がみられます。通常痛みはありません。

原因はさまざまですが、胸部の手術後や交通事故などによる外傷後に多く生じます。がんや悪性リンパ腫、肝硬変や心不全でもみられることがあります。

診断には、胸水を採取し、脂肪成分を調べる検査を行います。

呼吸困難が生じたときは、胸腔にチューブを挿入して乳び胸水を抜く胸水ドレナージを行います。

乳び胸水には、白質や脂肪などの栄養分や、免疫に大事な働きをするリンパ球が多く含まれています。そのため、乳び胸水を抜き続けるとリンパ球が減って免疫力が低下したり、低栄養状態になります。このため、乳びの漏れを止める必要があります。

胸水ドレナージと同時に、脂肪分の吸収を防ぐために食事をやめ、カロリーの高い点滴で栄養を補充します。脂肪分を制限した食事で栄養を補うこともあります。

食事制限や薬物療法でも乳びの漏れが止まらないときは、手術により胸管の損傷した部分を止める処置を行います。あるいは薬剤を注入して胸膜の癒着を促し、乳びがたまるスペースを減らす処置をします。

治療期間や成功率は原因によって大きく異なります。また、個人差があります。