妊娠中に起きる静脈血栓塞栓症には、深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症とがあります。

深部静脈血栓症は、下肢の静脈や、それにつながる腹部の太い静脈の中に血栓(血の塊)ができて、血液が心臓のほうへ戻りにくくなり、下肢がむくんだり、痛くなったりする病気です。

肺血栓塞栓症は、主として、下肢の静脈血栓の一部が心臓のほうに流れ、心臓から肺へ流れる血管(肺動脈)に詰まってしまう病気です。

肺血栓塞栓症の症状としては、呼吸困難、胸部痛、失神、気分不快、嘔吐などがあり、まれに重症化すると突然死や血圧低下や意識低下を招くショック症状に陥ることがあります。

深部静脈血栓症は下肢超音波検査と血液検査により、また肺血栓塞栓症は造影CTによって診断は確定します。通常の検査は胎児に影響を与えませんが、造影剤による検査では、赤ちゃんが一過性の甲状腺機能低下症になる可能性は否定できません。

治療には、血液を固まりにくくするヘパリンなどの薬剤を使用します。場合によっては血栓を溶かす薬剤を用いたり、外科的に血栓を取り除く手術を行ったりすることもあります。

妊娠中や分娩後に再発することもあるので、下肢の痛みや腫れ、胸痛などがあればすぐに受診しましょう。