前庭神経炎とは、内耳の前庭器官が障害され、突然、強い回転性のめまいを生じる病気です。めまいは数日から1週間くらい続きます。

吐き気や嘔吐など自律神経症状を伴うこともあります。しかし、めまい発作のときに、難聴、耳鳴り、耳閉感(じへいかん)などの症状は伴いません。

意識障害など他の神経障害を伴うときは、前庭神経炎ではなく、中枢性(脳内)の病変の可能性があります。

前庭神経炎の原因としては、ウイルスのHSV-1感染が第一にあげられますが、その他、循環障害なども考えられます。

検査では、検査物を注視した状態で眼が振るえないかを診る注視眼振(ちゅうしがんしん)検査、頭位・頭位眼振検査により、眼振の観察が行われます。冷水・温水刺激による温度刺激検査で眼振を誘発する検査も行われます。めまい発作のときには、方向が固定された水平性眼振が見られます。

めまい発作の急性期には少し動いただけで強いめまいが生じ、飲食ができないため、入院して点滴治療を行います。

めまい感が軽くなったら体を動かして平衡感覚の向上を促します。改善するまでに数カ月を要することもあります。

安静な状態でのめまいがなくなっても、急な動作によっては瞬間的にふらふら感が誘発されるので、日常生活では注意が必要です。階段や足場の悪いところでは手すりなどにつかまりましょう。