末梢性顔面神経麻痺には、ベル麻痺、ハント症候群、外傷性麻痺、耳炎症性麻痺、全身疾患に伴う麻痺があります。

顔面神経膝部に潜伏感染しているヘルペスウイルスが再活性化し、神経浮腫や神経の圧迫とそれによる循環(血行)の不全によって発症します。

ベル麻痺は単純ヘルペスウイルス1型が主病因とされます。人口10万人当たり約30人の発症率で、40~60歳代に好発します。約70%は自然治癒し、治療をすれば90%は完治します。

ハント症候群は、水痘‐帯状疱疹ウイルスが病因で、耳介の帯状疱疹と難聴やめまいを合併します。人口10万人当たり約5人の発症率で、高齢者ほど発症率が高まります。自然治癒率は約30%で、完治率は約60%です。

麻痺の重症度は40点法で評価します。顔面神経麻痺スコアが10点以上は不全麻痺、8点以下は完全麻痺です。

治療は薬物療法です。麻痺を発症して1週間後に、神経の変性程度を誘発筋電図検査で調べ、麻痺の予後を診断します。

顔面神経麻痺スコアが10点以上の不全麻痺やアブミ骨筋反射陽性例の場合の予後は良好です。

顔面神経麻痺スコアが8点以下で、誘発筋電図検査が10%未満の場合は重症です。神経減荷術(顔面神経の圧迫を除去する手術)の適応になります。

なお、基礎疾患に糖尿病がある場合や、ハント麻痺でめまい症状が強い場合は入院治療になります。

生活面では兎眼(とがん:瞼が閉じなくなる)による角膜障害を予防するために点眼液を使用します。

普段の生活で気をつけてほしいこと
  • ステロイド薬の副作用によって高血圧や胃痛、ほてりなどを生じることがありますが、自己判断で薬を減量したり中止したりしないで、主治医に相談しましょう。