聴神経腫瘍は、三半規管からのバランスの情報を脳に送る前庭神経から生じる良性の腫瘍です。発症は10万人に1人といわれます。

前庭神経は、聞こえのセンサーといわれる内耳からの情報を脳に送る蝸牛(かぎゅう)神経と一緒に走っています。そのため、最初の症状が難聴であることが少なくありません。

難聴は徐々に進んで悪化することもあれば、突然、難聴になることもあります。その場合は突発性難聴と区別がつかないことがあります。

腫瘍が大きくなると顔や舌の半分がしびれたり、顔面神経麻痺が生じたり、水頭症が生じてまっすぐに歩けなくなったり、意識障害を起こしたりすることがあります。

MRI検査によって診断します。

腫瘍が大きく、脳が圧迫されているような場合には、早期の手術が必要です。

腫瘍の大きさが頭蓋内に2cm以内の場合は、手術のほかに、放射線治療も選択できます。ただし、状態によっては2cm以内でも放射線治療ができない場合もあります。

腫瘍が小さく、症状が難聴とめまいだけの場合には、あえて積極的な治療を行わず、1年に1回程度MRI検査を行い、経過観察することが多くなってきています。

聴神経腫瘍によって失われた聴力はほとんどの場合、元に戻ることはありません。

聴神経腫瘍によって障害を受けた前庭神経機能は、治療によって元に戻ることはありませんが、脳は徐々にそれを補うようになります(前庭代償)。ただし、術後、代償が生じるまでの間は、転倒などを避けるように注意が必要です。