鼻の中心には空気の通り道である鼻腔があります。この鼻腔とつながっている空洞が副鼻腔です。鼻性髄液漏(びせいずいえきろう)とは、脳内の髄液が鼻副鼻腔に漏れ出て、いわば頭蓋内と副鼻腔の間に交通路ができてしまった状態です。

主な原因は、交通事故やスポーツ外傷、墜落などによる頭部外傷、手術によって行った副鼻腔損傷などです。

鼻性髄液漏は、髄膜炎をはじめ、頭蓋内感染症を引き起こす可能性があります。交通路ができた状態が長期にわたると、頭部にこぶができる髄膜脳瘤の原因になるので、早く治療する必要があります。

鼻水を採取し、その成分から髄液かどうかを調べます。

治療は、頭部外傷による急性期の鼻性髄液漏の場合は2週間を限度として髄液炎に対する抗生物質を使用しながら、自然に髄液漏が止まるのを待つ保存的治療を行います。場合によっては、脳に管を入れて髄液を抜く髄液持続ドレナージを行うこともあります。それ以外は診断がつき次第、手術を行います。

保存的治療が成功して髄液漏が止まっても30~40%に髄膜炎を併発するという報告があります。早期に手術をするほうが、髄膜炎のリスク軽減につながります。

保存的治療ができない場合は、診断がつき次第、手術を行います。手術は、手術器具を目的部位に正しく導くナビゲーションシステムを用いた内視鏡下鼻内整復術です。その成功率は1回目で90%、2回目で97%と向上しています。

手術では、下腹部や大腿部の脂肪、鼻粘膜、鼻中隔軟骨、筋膜などを使用することがあります。

髄膜炎を併発した場合、重篤な後遺症(脳機能障害)を残すことがあります。