抗がん剤治療や放射線治療により、腫瘍細胞が急速に破壊された場合、腫瘍細胞内の成分や代謝産物が腎臓の排泄能力を超えて血液中に放出されると、急性腎不全や不整脈、痙攣、多臓器不全を起こすことがあります。これらの病態と症状を含めて腫瘍崩壊症候群といいます。

腫瘍崩壊症候群は、腫瘍やその治療によって生じる、生命に危険を及ぼす可能性のある、緊急の対処を要する状態(オンコロジーエマージェンシー)の一つです。

がん治療開始後、血液検査、尿検査、尿量測定などを頻繁に行い、腫瘍崩壊症候群が起きていないかチェックします。

腫瘍崩壊症候群で重要なのは予防することです。腫瘍の種類や血液検査の結果、治療に用いる抗がん剤の種類などにより、腫瘍崩壊症候群のリスクを評価し、それに準じた予防法を実施します。

予防でもっとも重要なのが、生理食塩水などの水分を1日3~5L点滴し、尿量を一定に保つことです。

腫瘍崩壊症候群で生じる高尿酸血症を予防するために、治療前から尿酸を作ることを抑制する薬剤を使用することがあります。

腫瘍崩壊症候群が起きてしまった場合は、上記の予防法に準じて適切な水分補給の点滴や薬剤の投与を行います。重症の腎不全が起きている場合は、血液透析を実施することもあります。