膵がんはその多くが膵臓内部の膵管(膵液の流れる管)に発生します。一般に膵がんといえばこの膵管にできたがん(膵管がん)を指し、通常型膵がんともいいます。

膵がんの原因はまだはっきりわかっていません。しかし、膵がんに関わる危険因子がわかってきました。親子・兄弟姉妹に膵がんや遺伝性膵がん症候群が見られる場合や、自分に糖尿病や、膵管内乳頭粘液性腫瘍、慢性膵炎、遺伝性膵炎などがある場合、喫煙や大量飲酒の嗜好がある場合は膵がんのリスクが高まると考えられます。

外科手術でがんを切除するのが唯一の根治の手段ですが、早期発見が難しく切除できる患者さんは20%程度で、切除できたとしても再発などで予後(医学的な回復の見込み)は不良です。最近、膵がんに有効な抗がん剤が開発されていますが、治療は難しく「21世紀に取り残されたがん」といわれています。

主に痛みや黄疸、体重減少、糖尿病の悪化がみられます。痛みは腹部や腰部、背部に出現します。黄疸が出現すると皮膚や白目が黄色くなり、尿が褐色となります。

しかし、これらは膵がん以外の病気でもみられる症状です。また、膵がんと診断された時点で無症状の方も15%程度おられ、早期の膵がんでは無症状の方の割合が多くなります。

膵がんの診断・検査方法は大きく以下の3つに分けられます。

1. 腫瘍マーカー:膵がんの補助診断や経過観察に用いますが、早期 診断には有用ではありません。

2. 画像検査:腹部超音波検査、CT、MRI、超音波内視鏡検査、ERCP、PETなどがあり、膵がんの疑いの程度によってどれかを選択、あるいは組み合わせて診断をします。

3. 病理検査:画像検査までで確定診断がつかない場合に必要になります。化学療法(抗がん剤治療)や放射線療法の開始前には実施しておくことが望ましい検査です。

膵がんの手術(膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除など)では、がんが残らないように切除することは重要ですが、予防的に、より広い範囲の組織を切除する拡大手術は必要ないと考えられます。

術後はできるだけ早めに抗がん剤による補助化学療法を行うほうがよりよい予後が期待できます。なお、最近は抗がん剤治療や化学放射線療法(抗がん剤治療+体外放射線照射)を行ってから手術をする術前治療の有効性が明らかになりつつあります。

膵頭十二指腸切除術などの膵がんに対する外科切除術は、専門医がいて手術の実施数が多い施設では手術後のトラブルが少なく、トラブル発生後の処置も優れているという利点があります。そのような病院が近くになく、遠くの病院にかかる場合は、手術後の補助療法や緊急時の治療などを受けにくいというリスクがあります。自宅近くの病院とよく連携してくれる病院での手術をお勧めします。

日本膵臓学会は、膵臓疾患診療に関する総合的知識および専門的技量を有する広い領域の優れた指導的医師および診療施設を認定し、膵臓疾患に関する啓発や情報提供を通じて国民の健康と福祉に貢献することを目的に、認定指導医制度が開始し、2018年から指導医、指導施設を認定しています。日本膵臓学会のホームページに公開されています。