腕の運動をつかさどる5つの神経根が頚部から肩にかけて網の目状の腕神経叢(わんしんけいそう)を形づくっています。交通事故などの大きな力が首から肩に加わると、神経が引っ張られて腕神経叢が損傷します。

腕神経叢損傷には、頚部の脊髄から神経根が引きちぎれる節前損傷と、頚椎から出た神経が伸ばされて損傷を受ける節後損傷があります。

節前損傷は神経を脊髄につなぐことはできませんが、節後損傷の場合は神経移植により、ある程度の回復が望めます。

受傷後、3週間くらいたつと神経からの変化が確認でき、腕神経叢の損傷がわかるようになります。そこで麻痺した筋の検査を行い、麻痺の分布から損傷部位を推定します。検査には頚椎MRI、脊髄造影検査、CTミエログラフィーなどを用います。

節前損傷の場合や、節後損傷でも神経が断裂して自然回復が見込めず、受傷からの期間や年齢などから手術により回復が見込める場合には、直接神経損傷部位の確認を行い、治療方針を決定します。

神経の自然回復は1日1~2mm程度なので、腕神経叢損傷の治療は、筋の再生が生じるまでかなりの長時間がかかります。

神経手術をしたときは、神経の再支配ができるまで、数カ月以上かかると考えられます。その後、筋力が回復し、安定するまで2年以上かかります。

普段の生活で気をつけてほしいこと
  • 神経の回復を促すために、自宅で筋力強化訓練、関節可動域訓練などを継続しましょう。