腰痛は、様々な原因で生じます。中には危険な原因が潜んでいることもあり、注意が必要です。下肢痛を伴う場合、その多くは神経の圧迫によって生じます。

腰椎椎間板ヘルニアは多くの場合、腰痛が先に生じ、その後徐々に下肢痛が出現します。靴下を履くなどの前屈姿勢で痛みが強くなることが特徴です。

腰部脊柱管狭窄症は神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されることによって生じます。腰痛、下肢の痛みやしびれのため、歩行や立位を継続することが難しくなります。前屈姿勢で症状が改善することが特徴です。

腰椎椎体骨折は、骨粗鬆症などで骨が弱くなった高齢女性に多くみられます。安静にしていると痛みが少ないことに対して、寝床から起き上がるなど体を動かす際に激しい腰痛が生じることが特徴です。

より重症な腰痛の原因として、がんの脊椎転移や脊椎の感染、腹部臓器のがん、大動脈瘤などがあります。

安静にしていても痛むもの、発熱や下肢の筋力低下、排尿排便障害を伴うもの、いずれにしても症状がどんどんひどくなるものは、危険な腰痛の可能性があります。必ず専門医にご相談ください。

どういった症状がどのように出現したか、症状が特に強くなる体の姿勢や動き、下肢のしびれや脱力感、持病やストレスの有無などについて細かく質問します。

診察では、姿勢や背骨の変形、痛みの部位の確認、下肢の脱力やしびれなどの神経障害の有無を確認します。必要に応じて以下の検査を行い症状の原因を絞り込みます。

レントゲンでは、背骨の形の異常や、椎骨間の不安定性の有無などの評価を行います。MRIは、炎症の有無や神経の状態、がんの転移や骨折の有無などの評価に用います。CTは、より詳細な骨の評価などに用いられます。必要に応じて採血などの検査を追加します。

重症例を除く腰痛・下肢痛に対する治療は、一般的に体の負担が少ないものからはじめます。投薬に関しても原因に応じて薬を使い分けます。その他ブロック(注射)やコルセット、筋力トレーニングなども選択されます。

下肢の麻痺や排尿障害などが進行する場合、前述の治療にもかかわらず頑固な腰痛のために日常生活に支障を生じる場合には手術が検討されます。

【普段の生活で気を付けてほしいこと】

・ 多くの腰痛は、ずっと寝ているより痛みの範囲内で無理なく活動を続けていた方が、早く治ることがわかっています。しかし、痛みを無視して無理に動くことは厳禁です。

・ 安静にしていても痛みがどんどんひどくなる、足の力が入らない、腰痛に伴って排尿障害(尿もれなど)などが出現する場合には病院を受診しましょう。

・ 平生から適度な運動を心がけましょう。筋力の維持は転倒予防や腰痛予防の観点からも大事です。

・ 特に女性は閉経後の骨粗鬆症が問題になります。バランスの良い食事、カルシウムの摂取を心がけましょう。身長が急に縮むなどの場合は病院を受診しましょう。