ANCA関連血管炎は、小さな血管に炎症を起こし、全身のさまざまな部位に症状をきたす可能性のある疾患です。

ANCA関連血管炎には顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎生肉芽腫症の3つの疾患が含まれています。ANCA(Anti-Neutrophil Cytoplasmic Antibody, 抗好中球細胞質抗体)と呼ばれる抗体が血液検査で検出されることが多く、また、この3つの疾患には共通するような症状をきたすことがあります。

ANCAにはMPO-ANCAとPR3-ANCAの2種類があり、MPO-ANCAは顕微鏡的多発血管炎で、PR3-ANCAは多発血管炎性肉芽腫症で検出されることが多いです。

ANCA関連血管炎の中のそれぞれの疾患の中でも個人によって症状の現れ方はさまざまです。

顕微鏡的多発血管炎はANCA関連血管炎の中では最も日本人に多いタイプの血管炎であり、症状のでてくることの多い臓器としては腎臓、肺、皮膚、神経などが挙げられます。

多発血管炎性肉芽腫症はANCA関連血管炎の中でも日本人では珍しいタイプです。すっきりと治らない副鼻腔炎、繰り返す鼻血、肺の腫瘤、腎炎、手足の痺れなどが見られます。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は上記2つの疾患とは若干異なります。喘息、アレルギー性鼻炎、鼻のポリープなどがあり、それに加えて肺炎、手足の痺れ、心不全などを起こすことがあります。

ANCA関連血管炎が疑われる場合は、全身にどのような症状があるかを問診、診察で把握するとともに、血液検査、尿検査、画像検査(X線、CT、MRI、超音波など)の検査を行います。

診断には似たような症状を起こす感染症や悪性腫瘍などの除外が大切であり、また、生検と言って体の組織の一部を採取して、顕微鏡で病気の所見を観察する病理検査が必要なことがあります。

ANCA関連血管炎の治療としては、初期に病気の活動性を抑える寛解導入療法と、病気が落ち着いた後に再発を防ぐ寛解維持療法とがあります。寛解導入療法では、ステロイドとその他免疫抑制剤を合わせた治療が行われることが多いですが、重症度により治療法が異なります。維持療法でも免疫抑制剤を使用しますが、ステロイドはなるべく中止にしようとします。ただ、どうしても少量のステロイドが必要な場合もあります。

【注意していただきたいこと】

ANCA関連血管炎治療中は感染症のリスクが上がりますので、手洗いうがい、マスク、不特定多数の方との接触を避けるなど、必要なワクチンを摂取するなど感染症の予防に気をつけましょう。

ステロイドや免疫抑制剤使用中は定期的に受診し、副作用が起きていないかチェックを受けるようにしましょう。