(A)成人ミトコンドリア病の急性症状が疑われる場合の診断アルゴリズム
(B)成人ミトコンドリア病の緩徐進行性神経症状が疑われる場合の診断アルゴリズム
MELAS=mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes
LHON=Leber hereditary optic neuropathy
mtDNA=mitochondrial DNA
WES=whole exome sequencing (全エクソーム解析)
WGS=whole genome sequencing (全ゲノム配列解析).
CPEO=Chronic progressive external ophthalmoplegia(慢性進行性外眼筋麻痺)
* 感音性難聴、糖尿病、心異常、消化管・腎・肝障害などの多臓器障害の評価
†ミトコンドリア病脳卒中様発作症例の80%以上にあてはまるm.3243A→GおよびPOLG の病的変異
‡LHON症例の90%以上にあてはまるm.3460G→A、m.11778G→A、 m.14484T→C の病的変異
∫他の後天性あるいは遺伝性のミトコンドリア病類似疾患を考慮する。
¶多臓器障害の評価、家族歴の確認
‖もしミオパチーが主な臨床表現型で、血漿GDF15やFGF21の値が正常範囲であれば、ミトコンドリア病の可能性は低い
**CPEOが明瞭な場合は、ミオパチーの経路に進む。一次性ミトコンドリア病では単独の小脳症状はまれである。
††ミトコンドリア病でCKが持続的に1000 U/L以上を呈することはまれである。
‡‡臨床神経医にとって成人発症の晩発性、孤発性、進行性ミオパチーを検索することは、かなりの挑戦となります。後天性、遺伝性の両者を含め、多くの鑑別診断の可能性があり、筋生検は正確な診断をする上で重要である。骨盤や下肢のMRIは特異な遺伝性筋疾患に有用な診断的評価となるが、現時点ではミトコンドリア病に明らかな骨格筋の障害パターンは同定されていない。
∬視神経萎縮が有意な症例の少なくとも60%にあてはまる。
¶¶CPEO症例の30~50%の症例にあてはまる。過去に筋生検を施行した患者の尿路上皮細胞において、mtDNAの単一欠失あるいは多重欠失を検出可能である。
‖‖筋生検にて、COX欠損線維、他の酸化的リン酸化複合体の欠損線維、筋細胞膜下にミトコンドリアの集簇(ragged-red fibers)などのミトコンドリア機能異常の組織学的所見が観察される。しかし、これらの変化は一次性ミトコンドリア病以外でも少数の筋線維に通常でも認められることである。
*** WESやWGSにより従来報告されていない遺伝子変異の同定により、さらなる筋生検による機能的特徴の病態解明につながる。