病歴:37歳、男性(men who have sex with men、MSM)。初診より6年前にHIV感染が判明し、2年前より抗HIV療法を開始している。2週間前より、躯幹、手掌、足底に自覚症状のない紅斑が出現した。
診察:躯幹、手掌に淡い紅斑が散在性に認められる(写真参照)。
診断のためのテストとその結果:発熱はなくウイルス性発疹症は否定的であった。抗HIV療法に伴う薬疹も鑑別に挙がるが、手掌にも皮疹がみられることより梅毒を疑った。RPRカードテスト1024倍、TPHA 10240倍で、皮疹は隆起を認めず梅毒性バラ疹と診断した。
治療:パセトシンの内服を8週間行った。
転帰:皮疹は1週間後には、色素沈着を残さず軽快した。
コメント:HIV感染患者では健常人よりも薬疹が出現しやすいことが指摘されており、全身の皮疹をみた場合必ず鑑別に挙げる必要がある。近年、梅毒感染からHIV感染症が見つかる症例、逆にHIV感染症患者に梅毒が合併する症例も多くみられる。HIV感染症がベースにあると、抗体価の異常低値や高値、再感染、不十分な治療による再活性化などの病態もみられることが多いため注意を要する。