常位胎盤早期剝離のリスク因子
常位胎盤早期剝離で最も強いリスク因子は、既往歴である。その他に前回帝王切開分娩もリスクとする報告がある。
参考文献:
日本妊娠高血圧学会編:妊娠高血圧(PIH)管理ガイドライン2009、p149、メジカルビュー社、2009年
出典
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血腫の分類
血腫のなかには、胎盤と子宮壁の間にとどまり外出血を来さない潜伏出血(concealed hemorrhage)を来すものがあるので、注意が必要である。
a:concealed hemorrhage b:外出血 c:完全剝離
超音波断層法所見の分類(Jaffeの分類,1981)
超音波所見では、表に示すような所見が特徴的である。しかしながら、超音波断層法で診断可能であった早期剝離症例は、病理学的早期剝離症例の約50%であったとも報告している。
参考文献:
Jaffe MH, Schoen WC, Silver TM, Bowerman RA, Stuck KJ. Sonography of abruptio placentae. AJR Am J Roentgenol. 1981 Nov;137(5):1049-54. PubMed PMID: 6974999.
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重症度分類
胎盤早期剝離において臨床症状の重症度は剝離面積に比例する。
出典
1:
真木正博. 周産期医学 分娩・産褥 常位胎盤早期剥離(早剥). 周産期医学. 1991 臨時増刊: 243-244.
産科DICスコア
基礎疾患、臨床症状および検査所見からDIC診断を早期に行うことができる臨床的なスコアである。産科診療ガイドライン―産科編2017を参考にし、常位胎盤早期剝離と関連した項目を線で囲んでいる。
出典
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真木正博, 寺尾俊彦, 池ノ上克: 産科DICスコア. 産婦人科治療, 1985;50:119-124
常位胎盤早期剝離
常位胎盤早期剝離とは、子宮体部に付着した胎盤が、妊娠中または分娩経過中の胎児娩出以前に剝離した状態である。
超音波所見
胎盤は55mmに肥厚しており、アスタリスク(*)で示す高エコー領域の部分が血腫である。
出典
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溢血斑(Couvelaire uterus)
軽度であるが、子宮体部右側に紫色の溢血斑が認められる。
出典
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重症症例:子宮内胎児死亡からDICを来した症例
後壁から側壁に付着した胎盤が早期剝離を生じた症例の超音波断層法像である。血腫は黄色いアスタリスク(*)で示す。
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軽症例:胎動減少感で来院され、胎児機能不全から診断された症例
3分間隔の子宮収縮と収縮に伴うlate decelerationを認めるが、正常脈(基線145bpm)で基線細変動も保たれていた。
出典
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ショックインデックス
産科出血においては、出血量の推定のためショックインデックスが用いられる。妊婦のショックインデックスが1以上の場合は要注意であり、各種対応にもかかわらずショックインデックスが1.5以上であれば危機的出血と判断される。
出典
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日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本周産期・新生児医学会、日本麻酔科学会、日本輸血・細胞治療学会編:産科危機的出血への対応指針 2017.p2
主に使用される輸血用血液製剤一覧と期待される輸血効果
産科危機的出血の輸血の場合、赤血球製剤だけでなく新鮮凍結血漿を併用し、血小板濃厚液、アルブミン、抗DIC製剤などの投与も躊躇しない。
出典
1:
日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本周産期・新生児医学会、日本麻酔科学会、日本輸血・細胞治療学会編:産科危機的出血への対応指針 2017. p4
常位胎盤早期剝離に対する対応
常位胎盤早期剝離を臨床症状から疑った場合には、母児の評価を速やかに行い、原則として早期に児を娩出する方針をとる。
もし自施設での対応が困難な場合、搬送までの時間など地域性を考慮して、母体搬送もしくは急速遂娩後の母子搬送を考慮する。
参考文献:
日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会編:産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020、p164-167、2020
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