動作緩慢・歩行障害
厚生労働省の診断基準では、動作緩慢、歩行障害はパーキンソン病の自覚症状の一つ。
振戦
片側の中手関節が屈曲し、指節間関節が進展した「ペンを持つ手」を呈し、安静時を中心とした4-6Hzの振戦(典型的には、丸薬丸め型振戦)を認めればパーキンソン病を疑う。
パーキンソニズムを悪化させる薬物
ドンペリドン:ドパミン遮断効果をもつが血液脳関門を通過しにくいため、パーキンソニズムの出現・増悪は極めてまれ
[1]
。
1) 日本神経学会「パーキンソン病治療ガイドライン」作成委員会編:パーキンソン病治療ガイドライン2011.医学書院、2011.p169
出典
1:
日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会編:パーキンソン病診療ガイドライン2018.医学書院、2018.p159 表1 https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_25.pdf
L-ドパ換算用量相当量(LEDD※)への換算表
出典
1:
日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会編:パーキンソン病診療ガイドライン2018.医学書院、2018.p24(改変あり) https://neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_08.pdf
PD患者の中脳断面
病理マクロ写真:健常人(右)に比し、PD患者(左)では、中脳黒質の色素沈着が減弱している(矢印)。
出典
1:
(厚東篤生先生のご厚意による)
中脳神経細胞内のレビー小体(矢印)
病理ミクロ写真:拡大組織切片では、細胞内にエオジン好性を示すレビー小体(矢印)が認められる。
出典
1:
(厚東篤生先生のご厚意による)
PD患者の123I-イオフルパン脳SPECT画像(ダットスキャン®)
左上肢の振戦で発症したPD患者(51歳、男性)。当初、MIBG心筋シンチでは明らかな集積低下を認めなかったが、1年後、両側(左優位)上肢に筋強剛が出現した時点でのダットスキャンでは、症状と反対側の右被殻に強い両側線条体の集積低下(ドット型)を認める(SBR 4.78)。
出典
1:
著者提供
PD患者の123I-MIBG心筋シンチグラフィ(H/M=1.17)
発症後16年のPD患者(Hoehn & Yahr分類IV度)の
123
I-MIBG心筋シンチグラフィ。心筋/縦隔(H/M)比は1.17と著明に低下している。
出典
1:
著者提供
対照患者の123I-MIBG心筋シンチグラフィ(H/M=2.79)
出典
1:
著者提供
83歳女性例;頭部CT
生理的な石灰化部位である淡蒼球に石灰化を認める以外、明らかな異常を認めない。
出典
1:
著者提供
83歳女性例:MIBG心筋シンチグラフィ(後期像)
青線で囲まれた部分は1. 心臓(H)、2. 縦隔(M)、3. 肺の関心領域を示す。H/M比は1.29と低下しており、心臓交感神経の脱落が示された。
出典
1:
著者提供
早期PD治療のアルゴリズム
65歳以上(運動合併症のリスクが比較的低い)、認知機能低下(精神症状発現のリスクが高い)、当面の症状改善を優先させる特別な事情がある場合(Hoehn-Yahr分類III度以上、転倒リスクが高い、患者にとって症状改善の必要度が高い)には、L-ドパで治療を開始する。そうでない場合には、ドパミンアゴニストもしくはMAOB阻害薬を選択するが、症状の改善が不十分の場合には他の薬剤への変更あるいは併用を考慮する。
出典
1:
日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会編:パーキンソン病診療ガイドライン2018.医学書院、2018.p107 https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_22.pdf
wearing offの治療アルゴリズム
wearing offが認められた場合、まずL-ドパの少量頻回投与(1日4~5回)、またはドパミンアルゴニストの開始・増量・変更を行う。これが有効でない場合、COMT阻害薬、MAOB阻害薬、イストラデフェリン、またはゾニサミドを併用する。改善がない場合、L-ドパの頻回投与およびドパミンアルゴニスト増量・変更(アポカイン皮下注を含む)を行う。それでも十分でない場合、DATを考慮する。
出典
1:
日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会編:パーキンソン病診療ガイドライン2018.医学書院、2018.p125(改変あり) https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_23.pdf
生活に支障となるpeak-doseジスキネジアの治療アルゴリズム
生活に支障となるpeak-doseジスキネジアがある場合には、まずL-ドパ少量頻回投与を試みるが、それでも改善がなく、薬剤を減量することで運動症状が悪化するおそれがある場合、アマンタジンの併用、あるいはドパミンアゴニストの追加によるL-ドパ1日量の減量を試みる。
運動症状が悪化するおそれがない場合、併用薬がなければL-ドパの減量、イストラデフェリン、MAOB阻害薬、COMT阻害薬、ドパミンアゴニストを併用している場合、これらの薬剤を減量ないし中止する。
それでもジスキネジアがある場合、アマンタジンの併用、あるいはドパミンアゴニストの追加によるL-ドパ1日量の減量を試みる。それでも改善がみられない場合、DAT(DBSあるいはL-ドパ持続経腸療法)を試みる。
出典
1:
日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会編:パーキンソン病診療ガイドライン2018.医学書院、2018.p179(改変あり) https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_26.pdf
幻覚・妄想の治療アルゴリズム
幻覚・妄想があっても、生活や仕事に支障がなければ経過観察する。しかし、支障がある場合、まず直近に加えた薬物を中止する。次いで、幻覚・妄想の原因となりやすい抗コリン薬、アマタジン、セレギリンを中止する。次いでドパミンアゴニスト減量中止、COMT阻害薬、ゾニサミドを中止する。この間、運動症状が悪化する場合、L-ドパを増量することもあるが、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル)を追加しても改善が認められないときには、L-ドパを減量する。さらに、症状が持続する場合には、クエチアピンなどの非定型抗精神病薬を使用する。それでも症状が改善しない場合には、運動症状の悪化や過鎮静に注意しながら定型抗精神病薬を用いることになる。
出典
1:
日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会編:パーキンソン病診療ガイドライン2018.医学書院、2018.p248(改変あり) https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_28.pdf
すくみ足治療アルゴリズム
すくみ足は、通常、無動の1つに分類されるが、始めの1歩や回旋時のみならず、狭いところを通る時や人込みなどで増悪し、一般的な無動とは異なる。すくみ足は、転倒のリスクとなるため可能な限り治療を行うことが望ましい。
wearing offのoff時に生じるすくみ足は、wearing offに準じて治療を行う。つまり、L-ドパまたはドパミンアゴニストの用量調節を行う。
また、on時のすくみに対しては、視覚・聴覚のキューを用いる。
それでも効果が不十分な場合は、ドロキシドパ(ドプス)の投与を検討する。
出典
1:
日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会編:パーキンソン病診療ガイドライン2018.医学書院、2018.p189 https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_26.pdf