高Na血症の病態を水分量とNa量との関係から考えると図のように3つに分けられる。
- A:体液量減少を伴う高Na血症:水分量もNa量も減少しているが水分喪失のほうが大きい場合。
- B:体液量正常の高Na血症:Na量は正常で水分喪失のみがある場合。
- C:体液量増加を伴う高Na血症:水分量もNa量も増加しているがNaの増加のほうが大きい場合。
- Aの病態では水分、Naともに失われるがその原因として、腎性に失われる場合はマニトール投与時や高血糖時にみられる浸透圧利尿が挙げられる。さらに水利尿薬であるトルバプタン使用時には、水喪失による高Na血症を呈する。特にループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬などを併用されていることが多く、水分、Naとも喪失する病態となり注意が必要である。また、腎外性に失われる場合は嘔吐や下痢、発汗によるものが多い。この両者の鑑別には尿中Na濃度が有用であり腎性喪失の場合UNa>20mEq/L、腎外性喪失の場合UNa<20mEq/Lとなることが多い。
- Bの病態では主に水分が失われるが、その代表疾患は尿崩症と本態性高Na血症である。尿崩症では抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が低下する中枢性尿崩症と腎集合管でのADH-V2受容体の異常による腎性尿崩症があるが、いずれの場合でも尿浸透圧は低張で多尿を呈する。
- しかし、渇感が正常で飲水が可能であれば著明な高Na血症を呈することは少ない。
- Cの病態では体内へのNa貯留により高Na血症を呈する。一般に体内に過剰のNaが貯留されるのは、過剰の塩分投与、重炭酸塩の投与、高張液による血液透析など医原性のことが多い。疾患としては原発性アルドステロン症やCushing症候群のようにミネラルコルチコイドの作用により体内へNa貯留が起こる場合である。