ビタミンB1と糖質代謝の関係について示す。
ビタミンB1は、生体内でその活性体であるチアミンピロリン酸(TPP)に変換される。TPPは、ピルビン酸をアセチルCoAに変換するピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)の補酵素であり、PDHの活性化には必須の成分である。
ビタミンB1が不足すると、この反応系が阻害される。不足したATP産生を補うために嫌気的解糖が亢進し、ピルビン酸が多量に産生される。このピルビン酸から乳酸が大量に産生されて蓄積し、乳酸アシドーシスが起こると考えられる。
また、ビタミンB1はこのほかにもα-ケトグルタール酸デヒドロゲナーゼや、ペントースリン酸回路のトランスケトラーゼの補酵素としても重要である。
ビタミンB1は、心臓、腎臓、肝臓、脳などのエネルギー代謝活性の高い臓器に高濃度に存在し、その必要量は糖質およびエネルギー量に比例するといわれている。完全静脈栄養(TPN)時には大量の糖質が投与されることから、体内でのビタミンB1の消費量も増大する。
補酵素として機能したビタミンB1は、そのままの形または代謝されて尿中に排泄される。そのため、ビタミンB1欠乏を防止するためには、一定量を常に補給する必要がある。