感染性腸炎を起こす代表的な病原体(原因食、潜伏期、血便・腹痛・発熱の有無)
感染性腸炎を起こす病原体で代表的なもののみを記載した。感染性腸炎の潜伏期は通常半日から3日程度である。細菌性毒素型食中毒を起こす黄色ブドウ球菌やセレウス菌(嘔吐毒型)は毒素による発症のため、数時間と短い。一方で、赤痢アメーバでは徐々に症状が増悪していき、感染機会から数週間で医療機関を受診することが多い。ヒト-ヒト感染は赤痢菌・腸管出血性大腸菌・ノロウイルスで多い。これらの感染では介護者の感染防止対策が重要である。特に、ノロウイルスに対しては消毒用エタノールが効果を示さないため、石鹼での手洗いが重要である。
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黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)
電子顕微鏡像:
グラム陽性球菌であり、左側では厚い細胞壁が観察され、右側ではブドウのふさ状に集合した菌体が観察される。
毒素型食中毒の原因菌である。厳密にいえば感染性腸炎ではないが、急性下痢では重要な原因菌である。
a:超薄切片法
b:走査電子顕微鏡像
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大腸菌(Escherichia coli)
電子顕微鏡像(シャドウイング法):
菌体周囲の線毛(短く直線的)と長く太いラセン状の鞭毛が観察される。
下痢を起こす病原大腸菌には多種あり、最も重症化するのは腸管出血性大腸菌感染症である。
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セレウス菌(Bacillus cereus)
走査電子顕微鏡像:
壊れた桿状菌体から抜け出している球状芽胞が観察される。
下痢型と毒素型(嘔吐型)の2種の食中毒を起こす。日本では嘔吐型が中心である。
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コレラ菌(Vibrio cholerae)
電子顕微鏡像(シャドウイング法):
コンマ状菌体の菌端に1本の鞭毛が観察される。
水様性下痢を起こす。海外感染が主であるが、国内でもエビなど輸入凍結水産物からの感染はある。
コレラは3類感染症であり、説明は他項[ID0017]を参照。
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腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)
電子顕微鏡像(シャドウイング法):
桿菌状菌体の菌端に1本の鞭毛が観察される。海水(3%食塩)に棲息しており、海産物の摂食で発症する。日本の代表的感染性腸炎(食中毒)起因細菌である。
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カンピロバクター(Campylobacter jejuni)
電子顕微鏡像(シャドウイング法):
ラセン状菌体の両端に1本の鞭毛が観察される。
肉食、生肉類食の増加から、細菌性で現在は日本で最も多い起因菌である。便の光顕観察で特有のラセン状菌体が観察されることがある。
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サルモネラ(Salmonella enterica serovarEnteritidis)
電子顕微鏡像(シャドウイング法):
桿菌状菌体の周囲に多くの鞭毛(周毛性鞭毛)が観察される。
日本の代表的感染性腸炎(食中毒)起因細菌である。非チフス性サルモネラも血液に侵入しやすい傾向はある。
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エルシニア(Yersinia enterocolitica)
電子顕微鏡像(超薄切片法):
グラム陰性桿であり、外膜と内膜が明瞭に観察される。
下痢からの検出はまれであるが、持続熱、リンパ節腫脹もしくは虫垂炎様症状など多彩な症状を示す。西日本に検出例が多い。
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感染性腸炎の症状と起因微生物
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大川清孝:大腸肛門の病気 感染性腸炎 大腸肛門病学会ホームページ(https://www.coloproctology.gr.jp/modules/citizen/index.php?content_id=4)