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顔面紅斑の診断のアルゴリズム

顔面の紅斑をみたら、自覚症状と紅斑の性状に注目する。痒い場合は湿疹・皮膚炎と真菌症、痛い場合は感染症、自覚症状を欠く場合は全身症状の有無により膠原病・紅斑症と乾癬・酒さが疑われる。
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顔面蝶形紅斑を生じる皮膚疾患

蝶形紅斑は全身性エリテスト―デスに最も特徴的な皮疹として有名であるが、そのほかにも皮膚筋炎、各種炎症性疾患、感染症、代謝異常など多彩な疾患でみられる。
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1: 宮地良樹, 古川福実編:皮膚疾患診療実践ガイド 第2版,文光堂, 2009;4

全身性エリテマトーデス(SLE)の蝶形紅斑

病 歴:20歳女性。初診の3カ月前より発熱、関節痛とともに顔面に紅斑出現。痒みはない。
診 察:頬部を中心に左右対称性に軽度の鱗屑を付す浸潤を触れる紅斑を認める。
診断のためのテストとその結果:検尿で尿タンパク++、採血検査で白血球3,100 /cmm、抗核抗体640倍、抗DNA抗体110 IU/mLであった。
治 療:プレドニゾロン30 mg/日より開始し、諸症状は徐々に軽快した。
転 帰:顔面の紅斑は軽度の色素沈着を残して治癒、プレドニゾロン5 mg/日で症状は安定している。
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小児の皮膚筋炎

病 歴:6歳男性。運動会の翌日より38℃の発熱、上腕と大腿の筋肉痛、頬の紅斑が出現。
診 察:両側の頬部に左右対称性に浸潤を触れる鮮紅色の紅斑を認める。自覚症状はない。
診断のためのテストとその結果:ANA 640x、抗Jo-1抗体陰性、CRP 1.6 mg/mL、ESR 40 mm/1hr値、CK 650 IU/L、アルドラーゼ12.0 IU/L
治 療:入院安静のうえ、プレドニゾロン30 mg/日開始。
転 帰:症状は徐々に軽快し、プレドニゾロンを漸減し、3 mg/日で維持療法を継続。
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多形滲出性紅斑

病 歴:25歳男性。右下腿の蜂巣織炎のため、ダラシンカプセル®、ケフラールカプセル®を処方されたところ、内服開始後7日目から顔面を含むほぼ全身に痒みを伴わない紅斑が出現した。
診 察:全身に1~3 cm大の滲出性の紅斑が多発している。顔面では紅斑は融合してびまん性となっている。眼と口腔の粘膜には異常はない。
診断のためのテストとその結果:被疑薬のDLST検査はいずれも陰性(SI<121%)。薬剤のパッチテストではダラシンカプセル®が陽性となった。ダラシンカプセル®の主成分のクリンダマイシン塩酸塩による滲出性紅斑型の薬疹と診断した。
治 療:プレドニゾロン30 mg/日の内服治療を開始し、7日目より徐々に減量した。
転 帰:治療開始後7日で紅斑はほぼ軽快し、14日後には軽度の色素沈着を残して治癒した。
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日光過敏性皮膚炎

病 歴:75歳女性。3カ月前より日光に当たると顔面に紅斑が出現するようになった。痒みは軽度。高血圧に対して4カ月前からサイアザイド系の降圧剤を開始されている。
診 察:両頬部を中心に、前額部、眼周囲、下顎に鮮紅色の浮腫性紅斑を認める。
診断のためのテストとその結果:降圧剤のパッチテスト陽性。DLST陽性であった。
治 療:降圧剤を中止、プレドニゾロン30 mg/日内服、アルクロメタゾンプロピオン酸エステル軟膏1日2回外用を開始した。日常生活では遮光を指示した。
転 帰:約1週間の経過で軽い色素沈着を残して治癒した。
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伝染性紅斑

病 歴:5歳女児。7日前に軽い風邪様症状があった。昨日から両頬が赤くなってきた。軽度の痒みがある。今朝から四肢にも皮疹が出現してきた。全身状態は良好。
診 察:両頬に境界明瞭でやや濃淡のある鮮紅色の紅斑がみられる。上腕外側と大腿伸側には不規則な網目状の紅斑がある。
診断のためのテストとその結果:一般検査では異常なし。ヒトパルボウイルスB19の抗体検査は本例では施行していない(妊娠中のみ保険診療で検査可能)。
治 療:痒みは軽度で、全身症状も伴わないため、薬剤は使用していない。
転 帰:約1週間で皮疹は消退した。
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脂漏性皮膚炎

病 歴:58歳女性。数年来顔に紅斑が出現する。痒みはあるが程度は軽い。
診 察:眉間、頬、鼻周囲、口囲にオイリーな紅斑性丘疹が分布。
診断のためのテストとその結果: 真菌検査陰性。化粧品のパッチテスト陰性。
治 療:ヒドロコルチゾン酪酸エステルクリーム1日2回外用、リボフラビン40 mg/日、ピリドキサール40 mg/日内服。
転 帰:治療で症状は軽快するが、体調を崩すと部分的に再燃する。
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接触皮膚炎

病 歴:59歳女性。初診の1カ月前に新しい化粧水と日焼け止めクリームを開始したところ、2週間後から顔が赤く痒くなってきた。
診 察:顔面全体に鱗屑を伴う大小の浮腫性紅斑が散在している。
診断のためのテストとその結果:パッチテストで日焼け止めクリームが陽性であった。
治 療:日焼け止めクリームを中止して、ヒドロコルチゾン酪酸エステル軟膏を1日2回外用した。
転 帰:7日後には顔面の紅斑は軽度の色素沈着を残して治癒した。
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アトピー性皮膚炎

病 歴:33歳女性。幼少時よりアトピー性皮膚炎があり、治療中。初診の3カ月前より皮膚は徐々に悪化。痒みが強く夜間不眠となった。
診 察:眼囲から頬部にかけて掻破痕と鱗屑を伴う紅斑があり、苔癬化を伴う。
診断のためのテストとその結果:血清TARC値1,200 pg/mL、総IgE 15,000IU/mL、ハウスダスト6+、コナヒョウヒダニ6+、スギ6+、ヒノキ5+。
治 療:オロパタジン塩酸塩錠1日2回の内服と、タクロリムス軟膏とヒドロコルチゾン酪酸エステルクリームの外用により、症状は徐々に軽快した。
なお、アトピー性皮膚炎の新規外用薬として2020年6月24日からデルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏:JAK阻害薬)、2022年6月1日よりジファミラスト軟膏(モイゼルト軟膏:ホスホジエステラーゼ4阻害薬)が上市された。ステロイド外用薬以外の選択肢が増えたことで外用治療は大きく進歩した。実際の使用に当たっては日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021等を参照されたい。
転 帰:14日後には顔面の紅斑は軽度の色素沈着を残して治癒した。
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顔面白癬

病 歴:88歳女性。半年前より顔の湿疹のため市販のステロイド軟膏をときどき塗っていた。徐々に効かなくなり、1カ月前から皮膚症状が悪化、痒みが増してきた。
診 察:左頬前額部、眉間、鼻周囲を中心に鱗屑を伴う大豆大前後の紅斑が散在。鼻背の紅斑には膿疱も混在している。
診断のためのテストとその結果:皮疹部位の鱗屑の直接鏡検にて真菌要素を確認した。
治 療:ケコトナゾールクリーム1日2回外用。
転 帰:7日後には軽快し、14日後には治癒した。
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丹毒

病 歴:67歳女性。初診の3日前より左顔面に熱感と痛みを伴って紅斑が出現。38.6℃の発熱がある。
診 察:左頬を中心に熱感と圧痛を伴う浮腫性紅斑が存在。紅斑の分布は鼻唇溝を越えていない。
診断のためのテストとその結果: 白血球13,000 cmm、分画では左方移動、CRP 6.2 mg/mL。
治 療:入院のうえ、アンピシリン/ クロキサシリン合剤2 g/日の点滴静注を7日間施行。
転 帰:2日後には解熱し、7日後には紅斑はほぼ消退した。
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帯状疱疹

病 歴:80歳女性。初診の3日前より左頬部に痛みを伴う紅斑が出現。2日前より紅斑の上に小水疱が数個出現してきた。痒みはない。
診 察:左頬部に2×3 cm大の浮腫性紅斑があり局面内に小水疱が数個あり一部は自壊してびらんを形成している。紅斑は下眼瞼にも認める。
診断のためのテストとその結果:Tzanckテスト陽性。
治 療:バラシクロビル塩酸塩3,000 mg/日とアセトアミノフェン1,500 mg/日による内服治療を7日間施行した。
転 帰:皮疹は約10日で治癒したが左頬部の神経痛が持続している。
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酒さ

病 歴:66歳男性。40歳頃より鼻部を中心に前額、頬部、口周囲に発赤が出現し消長を繰り返しながら徐々に拡大してきた。ほてりは強いが痒みはほとんどない。ステロイド外用薬の使用歴はない。
診 察:鼻部を中心に前額、眉間、両頬部、口囲に毛細血管拡張を伴う紅斑を認める。
診断のためのテストとその結果:真菌直接鏡検陰性。標準試薬によるパッチテストではすべて陰性。
治 療:アルコールや香辛料を控え、ストレスを減らし、ビタミンB群の多い食事の摂取など生活習慣の改善を図った。
なお、2022年5月26日にメトロニダゾール外用薬(ロゼックスゲル0.75%)が保険適用となった。欧米など80カ国以上で使われている標準治療薬である。日本皮膚科学会の尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023に沿った使用が推奨される。
転 帰:症状は徐々に軽快しているが難治性である。
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酒さ様皮膚炎

病 歴:72歳女性。初診の1年前より慢性湿疹の診断でかかりつけ医からmediumクラスのステロイド軟膏を処方されていた。最近顔の赤みが悪化、持続してきた。ほてりと痒みがある。
診 察:顔面全体に毛細血管拡張による潮紅と紅斑性丘疹が散在している。
診断のためのテストとその結果:真菌直接鏡検陰性。抗核抗体陰性。
治 療:ケトコナゾールクリーム1日2回外用、ミノサイクリン100 mg/日、ベポタスチン20 mg/日、リボフラビン40 mg/日、ピリドキサール40 mg/日内服。
転 帰:症状は徐々に軽快し、3カ月で略治。背景にある脂漏性皮膚炎に対してケコトナゾールクリームの外用は継続中。
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シェーグレン症候群

病 歴:37歳女性。数年前より全身倦怠感を自覚し、手指の関節痛と原因不明の発熱を繰り返していた。約3カ月前より顔面に紅斑が出現してきた。紅斑は痒みも痛みもない。眼や口の乾きは自覚していない。
診 察:左前額部と両頬部に爪甲大前後の浸潤の強い紅斑が散在し、左頬部では環状を呈している。
診断のためのテストとその結果:ANA 640倍、 抗SS-A抗体、抗SS-B抗体陽性。眼科でシルマーテスト陽性。ガムテストで唾液分泌量の低下あり。皮膚生検像、口唇粘膜小唾液腺生検像は本症に合致。
治 療:プレドニゾロン(PSL)10 mg/日 内服開始。
転 帰:症状は徐々に軽快、PSLを漸減し、現在2 mg/日で皮疹はほぼ消退、全身症状も軽快している。
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尋常性乾癬

病 歴:28歳男性。初診の2年前より頬に紅斑。痒みなし。頭皮のフケと肘頭、膝蓋に同様の皮疹。擦ると広がり日光に当たると軽快する。
診 察:両頬部に境界明瞭で膜様の銀白色の鱗屑を付す浸潤を触れる紅斑が存在。
診断のためのテストとその結果:皮膚生検により尋常性乾癬に特徴的な組織像を確認。
治 療:朝 アルクロメタゾンプロピオン酸エステル軟膏、夜 タカルシトールクリームの外用と生活指導(擦らない)を開始した。
転 帰:皮疹は徐々に軽快したため、現在はタカルシトールクリームのみ継続している。
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顔面紅斑の診断のアルゴリズム

顔面の紅斑をみたら、自覚症状と紅斑の性状に注目する。痒い場合は湿疹・皮膚炎と真菌症、痛い場合は感染症、自覚症状を欠く場合は全身症状の有無により膠原病・紅斑症と乾癬・酒さが疑われる。
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顔面蝶形紅斑を生じる皮膚疾患

蝶形紅斑は全身性エリテスト―デスに最も特徴的な皮疹として有名であるが、そのほかにも皮膚筋炎、各種炎症性疾患、感染症、代謝異常など多彩な疾患でみられる。
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1: 宮地良樹, 古川福実編:皮膚疾患診療実践ガイド 第2版,文光堂, 2009;4