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皮膚血管炎の診断フローチャート

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1: 川名誠司:皮膚血管炎へのアプローチ、川名誠司/陳科榮共著、皮膚血管炎:医学書院、2013;51-78

下腿、大腿の点状紫斑(特発性血小板減少性紫斑病(慢性型):下肢に多発する点状紫斑)

ケースの説明
病歴:70歳代男性、突然下肢に紫斑が出現し、徐々に増加。
診察:両側の下肢と腹部、背部に左右対称性に汎発性の点状紫斑を認める。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴から診断。採血検査で血小板数が2万/µLであった以外、CBC、一般生化学、血液凝固検査、骨髄検査はすべて正常範囲内であった。また、抗血小板抗体は陽性であった。
治療:胃内視鏡検査、組織鏡検法にてヘリコバクター・ピロリ菌陽性のため、除菌療法を行った。
転帰:2カ月後に紫斑の出現はなくなった。
コメント:慢性型の多くは長期間にわたって軽快・増悪を繰り返すので、紫斑消失後も経過観察が必要である。
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1: 川名誠司先生ご提供

症候性血小板減少性紫斑病の原因

血小板減少の原因は多岐にわたる。血小板減少をみたときには、血小板の産生障害、破壊亢進、消費亢進、あるいはその他が原因かを検討する。
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1: 川名誠司先生ご提供

後天性凝固因子異常の原因

後天性凝固因子異常症は、通常、複数の凝固因子活性の低下が原因となり出血傾向が生じる。その成因は大きく3つに分類される。
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1: 川名誠司先生ご提供

後天性凝固因子異常による紫斑

ケースの説明
病歴:80歳代男性。1週間前から爪が変色し、疼痛を伴うようになり、当科を受診。
診察:両足趾の爪甲下に紫斑が多発している。
診断のためのテストとその結果:肺癌stageⅣで加療中、1カ月前に肺塞栓症を合併し、ワルファリン内服が開始されていた。血液検査で血小板正常、PT、APTT延長があり、PT-INR2.8と延長を確認した。
治療:呼吸器内科医と相談し、PT-INR2を指標にワルファリンを調節、内服継続を行った。
転帰:2週間後に紫斑は改善傾向を示した。
コメント:複数の新規抗凝固薬が登場しているが、ワルファリンを使用する機会は依然として多い。紫斑をみた際に後天性凝固因子異常は忘れてはならない病態である。
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1: 著者提供

ヒトパルボウイルスB19感染に伴う紫斑

ケースの説明
病歴:30歳代女性。初診10日前から感冒に罹患、4日前から全身に皮疹を認め、3日前から40度代の発熱がみられるようになったため、当科受診。
診察:両膝蓋部に鮮紅色の紅斑がみられ、両下腿には点状紫斑と小型の斑状紫斑が混在、多発している。
診断のためのテストとその結果:採血検査で末梢血白血球数3,200/mm3、CRP 5.4mg/dL、血小板数6.7万/µL、抗ヒトパルボウイルスB19 IgM抗体陽性。
治療:アセトアミノフェン内服、補液と安静加療。
転帰:7日後に軽快。
コメント:皮疹は血管炎による紫斑と誤診しやすい。紫斑の性状をよく観察することが大切である。
 
[[ヒトパルボウイルス感染]]参照
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1: 著者提供

高γ-グロブリン血症性紫斑

ケースの説明
病歴:30歳代女性。2年前から出没する紫斑を主訴に来院。
診察:下腿に点状/斑状紫斑と褐色色素斑が混在。
診断のためのテストとその結果:皮膚病理組織所見は真皮上層血管周囲のリンパ球浸潤と赤血球血管外漏出であった。採血結果で総蛋白9.3g/dL、γ-グロブリン37.0%、抗SSA抗体および抗SSB抗体陽性、シルマーテスト陽性であった。口唇小唾液腺生検結果からシェーグレン症候群と診断した。
治療:血管強化薬とプレドニゾロン20mg/日の内服加療を行うも難治のため、ミゾリビン150mg/日を追加後、皮疹改善。
転帰:半年後にはγ-グロブリンは正常化し、下肢の皮疹は褪色した。
コメント:高γ-グロブリン血症性紫斑は、シェーグレン症候群を高頻度(30~50%)に合併する。
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1: 著者提供

クリオグロブリン血症

ケースの説明
病歴:60歳代女性。5年来繰り返す下腿の紫斑を主訴に当科を受診した。
診察:両下腿に多発する褐色の色素斑と共に粟粒大の紫斑が混在している。
診断のためのテストとその結果:C型肝炎で消化器内科に通院中であったため、C型肝炎に伴うクリオグロブリン血症を疑った。血液検査でIgG2413mg/dL、総蛋白7.5g/dL、γグロブリン25.3%と上昇、クリオグロブリン定性陽性、CH50 10 U/mL未満であり、C型肝炎に伴うクリオグロブリン血症と診断した。
治療:原疾患に対し、インターフェロン療法継続、ビタミンC内服とvery strong classのステロイド剤外用を行った。
転帰:3カ月後に紫斑は消失した。
コメント:紫斑と共に褐色の色素斑(厳密にはヘモジデリンの沈着)が混在する場合は、本症やクリオグロブリン血症などを疑う。
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1: 著者提供

老人性紫斑の初診時皮膚症状

ケースの説明
病歴:80歳代男性。以前から繰り返す紫斑を主訴に受診。
診察:前腕伸側に不規則な形の大小様々な大きさの斑状紫斑を認める。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴から診断。採血結果でCBC、血液生化学、血液凝固・線溶系検査はすべて正常範囲内であった。
治療:ビタミンC内服を投与し、長袖衣の着用を勧めた。
転帰:紫斑は数週間で消退したが、その後もときどき出現する。
コメント:加齢変化で皮膚が脆弱化し、易出血性となる。外的刺激と日光曝露を避けるよう生活指導する。
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1: 著者提供

IgA血管炎

ケースの説明
病歴:20歳代女性。感冒後に生じ、約2週間出没する下肢の紫斑を主訴に受診した。
診察:下腿に米粒大までの軽度盛り上がった紫斑が多発し、一部は島嶼状に紫斑が配列している部位、線状の紫斑を呈する部位がみられている。
診断のためのテストとその結果:採血でIgA 539mg/dLと上昇していたが、尿所見に異常なし。関節痛や腹痛もない。病理組織像で核破砕性血管炎像を認め、蛍光抗体直接法で真皮上層の細小血管壁にIgAとC3の沈着がみられたことからIgA血管炎と診断した。
治療:ビタミンC、血管強化薬では効果がなく、ジアフェニルスルホン内服後、皮疹は改善した。
転帰:発症5カ月後に皮疹は消失した。
コメント:IgA血管炎は小児から成人に至る幅広い年齢にみられる代表的核破砕性血管炎である。圧迫や搔破痕に沿って紫斑がみられることも本疾患の特徴の1つである。
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1: 著者提供

皮膚血管炎の分類

皮膚血管炎は皮膚限局性と全身性があり、それぞれに原発性と続発性がある。続発性血管炎とは、原因・誘因として膠原病、薬剤副反応、感染症、悪性腫瘍などの関与が証明された血管炎をいう。
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1: 川名誠司先生ご提供

単純性紫斑

ケースの説明
病歴:20歳代女性。1カ月前から四肢に紫斑が繰り返している。
診察:四肢に1~3mm大の点状紫斑が多発している。自覚症状なし。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴から本症を疑い、血小板・血液凝固・線溶系検査に異常を認めないことから診断する。必要に応じて、皮膚生検によって血管炎像がないことを確認する。
治療:血管強化薬を投与。この患者はダイエット目的に激しい運動を行っていたため、中止を指導した。
転帰:皮疹は速やかに軽快、その後、紫斑の再燃はみられない。
コメント:IgA血管炎(Henoch-Schönlein紫斑、アナフィラクトイド紫斑)との鑑別が必要([[IgA血管炎]]参照)。臓器出血のおそれなどはなく、多くは自然治癒することを説明。
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Schamberg病

ケースの説明
病歴:50歳代女性。4カ月前から下肢に赤褐色斑が生じているのに気づき受診。
診察:両側下腿~足背に褐色のヘモジデリン沈着を伴う点状紫斑より形成される指頭大の局面が多発している。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴から診断。病理組織検査で真皮上層と表皮下層のリンパ球浸潤と出血を認める。
治療:血管強化薬内服とステロイド外用薬で加療を行った。
転帰:治療開始後1カ月で皮疹は改善した。
コメント:下肢静脈うっ滞が原因と考えられる場合には、その治療をする。
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1: 著者提供

播種性血管内凝固症候群(DIC)に伴う紫斑

ケースの説明
病歴:50歳代女性。ネフローゼ症候群で副腎皮質ステロイドホルモン剤入院加療中に熱発し、全身に紫斑を伴うようになり、皮膚科に診療依頼。
診察:体幹、四肢に大小さまざまな大きさの斑状紫斑が多発している。
診断のためのテストとその結果:意識レベル低下、血圧低下などの診察所見、病歴から診断する。採血結果で白血球数上昇、CRP高度上昇、肝・腎障害、骨格筋壊死所見、DIC所見を認めた。血液培養でESBL産生E.Coliが陽性であった。
治療:抗菌薬投与、抗凝固・抗血栓療法を施行したが、改善傾向がみられなかった。
転帰:25日後に死亡した。
コメント:本症は敗血症の最重症型であり、致死率は40%以上である。四肢切断を要する症例も多い。
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1: 著者提供

感染性心内膜炎に伴う手掌足底の有痛性紫斑

ケースの説明
病歴:40歳代男性。初診7日前から倦怠感、5日前から発熱と悪寒を生じていた。初診2日前、駅で動けなくなっていため、救急要請。急性多発脳梗塞などの所見から感染性心内膜炎を疑われ、手足に多発している有痛性紅斑、紫斑について、皮膚科診察依頼となった。なお、入院時に未治療の2型糖尿病(HbA1c 10.1%)が明らかとなった。
診察:手掌、足底および足趾に米粒大までの有痛性紅斑が多発し、一部では紫斑を伴っている。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴、白血球数12,700/mm3と増加、CRP23.7 mg/dLと高値、心エコー所見から感染性心内膜炎と診断。皮膚生検組織、血液培養で黄色ブドウ球菌が同定された。
治療:抗菌薬投与とうっ血性心不全の治療を施行した。
転帰:1カ月後にCRPは陰性化したが、6週間後に心筋膿瘍を疑う所見があり、約2カ月間抗菌剤加療を行い、第57病日に退院した。
コメント:本症は指趾血管の細菌性塞栓によって生じる。感染性心内膜炎の誘因は歯科処置が最も多く、次いで中心静脈カテーテル留置である。
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1: 著者提供

コレステロール結晶塞栓症

ケースの説明
病歴:60歳代男性。循環器科にて経皮的冠動脈造影術を施行。その後から下肢に皮疹を認めたため皮膚科に紹介受診。
診察:足底から足趾にかけて網状皮斑がみられ、足趾ではチアノーゼが明らかであり、疼痛を伴っている。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴から本症を疑った。採血結果で白血球増多、好酸球増多、CRP上昇、赤沈亢進、低補体血症、BUN・クレアチニンの上昇がみられ、病理組織学的に真皮~脂肪織の小血管と小動脈の内腔に針状ないし紡錘形のcleftを認めたため、確定診断した。
治療:アルプロスタジル連日静注とPSL20mg/日投与で加療を行った。
転帰:疼痛、皮疹ともに2カ月後には改善した。
コメント:本症は、高血圧、心疾患、動脈硬化、糖尿病などを有する高齢患者に大血管手術やカテーテル操作、あるいは抗凝固療法を行った時、血管壁の粥状硬化巣とそれを覆う防御的血栓が損傷を受け、そこからコレステロール結晶が飛散し、全身の末梢血管に塞栓を来すものである。従来、致死率は60~80%で極めて予後が悪い疾患とされ、主たる死因は腎不全、心筋梗塞、消化管出血、脳梗塞などの多臓器不全であった。しかし、近年、疾患認知度が上がり、早期診断例が増加してきたため、予後も改善しつつある。皮膚症状から本症を疑ったら、積極的に皮膚生検を行い、早期診断することが推奨される。
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1: 著者提供

リベド様血管症

ケースの説明
病歴:30歳代男性。初診2年前から紫斑を伴う潰瘍を繰り返し、夏季に増悪する。近医受診し、精査加療目的に当科を受診した。
診察:両足背に米粒大までの紫斑が多発し、左足外側縁では樹枝状の小潰瘍を形成し、白色の壊死組織を伴っている。
診断のためのテストとその結果:採血検査結果では抗核抗体、抗カルジオリピンβ-2GPI複合体抗体、ループスアンチコアグラントいずれも陰性で、プロテインC、S活性の低下はみられなかった。足背紫斑部の病理組織検査では真皮乳頭層から上層のフィブリン血栓が多発し、血管周囲にリンパ球浸潤や出血像を認めた。臨床所見、検査所見とあわせてリベド様血管症と診断した。
治療:バイアスピリン内服加療を行ったが難治のため、リバーロキサバン内服加療を行った。
転帰:治療開始2カ月で皮疹は改善した。
コメント:夏季に増悪する足背、下腿の紫斑を伴う樹枝状潰瘍は本症に特徴的臨床像である。
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1: 著者提供

紫斑の診断フローチャート

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1: 川名誠司先生ご提供

皮膚血管炎の診断フローチャート

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1: 川名誠司:皮膚血管炎へのアプローチ、川名誠司/陳科榮共著、皮膚血管炎:医学書院、2013;51-78

下腿、大腿の点状紫斑(特発性血小板減少性紫斑病(慢性型):下肢に多発する点状紫斑)

ケースの説明
病歴:70歳代男性、突然下肢に紫斑が出現し、徐々に増加。
診察:両側の下肢と腹部、背部に左右対称性に汎発性の点状紫斑を認める。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴から診断。採血検査で血小板数が2万/µLであった以外、CBC、一般生化学、血液凝固検査、骨髄検査はすべて正常範囲内であった。また、抗血小板抗体は陽性であった。
治療:胃内視鏡検査、組織鏡検法にてヘリコバクター・ピロリ菌陽性のため、除菌療法を行った。
転帰:2カ月後に紫斑の出現はなくなった。
コメント:慢性型の多くは長期間にわたって軽快・増悪を繰り返すので、紫斑消失後も経過観察が必要である。
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