a:治療前、b:治療後
病 歴:60歳代女性。1カ月前から、手指のこわばり、手の皮膚の硬化を感じるようになってきたため受診。
診 察:両手指から手背にかけて光沢を帯びた強い皮膚硬化がみられ、手指の屈曲制限が認められた。軽度の硬化が顔面や体幹まで及んでいた。
診断のためのテストとその結果:自己抗体の検索で、抗RNAポリメラーゼIII抗体が陽性であった。胸部CTにて、軽度の間質性肺炎を認めた。
治 療:皮膚硬化に対して、プレドニゾロン30mg/日内服を開始し、以後漸減した。
転 帰:3年9カ月後の時点で、プレドニゾロン5mg/日内服中であるが、皮膚硬化と手指の屈曲制限は改善している。
コメント:全身性強皮症に特異的な自己抗体として、抗トポイソメラーゼⅠ抗体、抗セントロメア抗体以外に、抗RNAポリメラーゼIII抗体の測定が保険収載されている。抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性者では、多くは広範な皮膚硬化を呈し、腎クリーゼの頻度が高い。また、本抗体が陽性の症例では陰性の症例よりも、悪性腫瘍の合併が多い。本症例ではやむを得ずブレドニゾロンを30mg/日使用したが、ステロイドの用量が増えると腎クリーゼのリスクが高まる可能性があるので注意が必要である。近年は、免疫抑制薬やリツキシマブが使用されるようになってきている。