ケースの説明
病歴:70歳代男性、5日前より右大腿から陰嚢にかけて帯状に小水疱が集簇し、痛みを伴う。2日前より排尿障害あり。
診察:右鼠径から陰嚢に紅暈を伴う小水疱が集簇し、びらん、潰瘍を形成する。
診断のためのテストとその結果:診察所見(半側の神経支配領域に分布する小水疱の集簇で疼痛を伴う)、抗原検査(蛍光抗体法:水疱蓋、水疱底部の細胞を採取し、スライドガラスに載せ、蛍光抗体法にて検出する)、核酸検出法(リアルタイムPCR法:免疫不全状態であって、水痘帯状疱疹ウイルス感染症が強く疑われる患者のみ保険収載)。
治療:抗ウイルス薬の内服、外用。重症例では抗ウイルス薬の点滴治療を行う。疼痛に対してNSAIDsあるいはプレガバリンが用いられる。
転帰:皮疹は1~2週間で痂皮を形成し上皮化する。皮疹が改善したあとも疼痛が残ることがある。発症後3カ月以上も持続する疼痛は、帯状疱疹後神経痛と呼ばれ、プレガバリンが用いられる。無効の症例では神経ブロックも行われる。
コメント:仙骨神経麻痺により排尿障害を生じることがある。ステロイドや免疫抑制薬投与中、あるいはエイズなどの免疫抑制状態では全身に小水疱が散布し、汎発疹と呼ばれる。