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外陰部潰瘍・びらんの診断アルゴリズム

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単純疱疹(性器ヘルペス):単純ヘルペスウイルス 1型(HSV-1)あるいは2型(HSV-2)による感染

ケースの説明
病歴:30歳代男性、1日前より包皮に小水疱、小潰瘍を生じている。著しい痛みを伴う。
診察:包皮に小水疱、小潰瘍が散在し、鼠径リンパ節の腫大を伴う。
診断のためのテストとその結果:診察所見、抗原検査(イムノクロマト法:水疱内容を溶解液に撹拌したものを検査プレートに載せ、所定の位置に陽性バンドが出現するかを観察する、蛍光抗体法:水疱蓋、水疱底部の細胞を採取し、スライドガラスに載せ、蛍光抗体法にて検出する)、核酸検出法(PCR、LAMP法など:保険未承認。但し免疫不全状態であって、単純疱疹ウイルス感染症が強く疑われる患者のみリアルタイムPCR法が保険収載)、血清反応(型特異的IgG抗体の検出)。
治療:抗ウイルス薬の内服、外用。再発性の性器ヘルペスでは抗ウイルス薬の継続投与を行う。
転帰:初感染では発熱などの全身症状を伴うことがあるが、約2週間で治癒。HSV-2感染では再発性となることが多い。
コメント:性行為に伴う、HSV-2初感染の症例が多いが、最近ではHSV-1による症例が増加している。仙骨神経障害により排尿障害を生じることがある(Elsberg症候群)。
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帯状疱疹:水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化

ケースの説明
病歴:70歳代男性、5日前より右大腿から陰嚢にかけて帯状に小水疱が集簇し、痛みを伴う。2日前より排尿障害あり。
診察:右鼠径から陰嚢に紅暈を伴う小水疱が集簇し、びらん、潰瘍を形成する。
診断のためのテストとその結果:診察所見(半側の神経支配領域に分布する小水疱の集簇で疼痛を伴う)、抗原検査(蛍光抗体法:水疱蓋、水疱底部の細胞を採取し、スライドガラスに載せ、蛍光抗体法にて検出する)、核酸検出法(リアルタイムPCR法:免疫不全状態であって、水痘帯状疱疹ウイルス感染症が強く疑われる患者のみ保険収載)。
治療:抗ウイルス薬の内服、外用。重症例では抗ウイルス薬の点滴治療を行う。疼痛に対してNSAIDsあるいはプレガバリンが用いられる。
転帰:皮疹は1~2週間で痂皮を形成し上皮化する。皮疹が改善したあとも疼痛が残ることがある。発症後3カ月以上も持続する疼痛は、帯状疱疹後神経痛と呼ばれ、プレガバリンが用いられる。無効の症例では神経ブロックも行われる。
コメント:仙骨神経麻痺により排尿障害を生じることがある。ステロイドや免疫抑制薬投与中、あるいはエイズなどの免疫抑制状態では全身に小水疱が散布し、汎発疹と呼ばれる。
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壊死性筋膜炎:劇症型溶連菌感染症

ケースの説明
病歴:60歳代女性、2日前より発熱、1日前より左下肢の腫脹、疼痛。
診察:体温39℃、左大腿から鼠径、大陰唇から下腹部に著明な腫脹があり、びらん、潰瘍を伴い、圧痛を訴える。
診断のためのテストとその結果:診察所見、血液検査所見(白血球、好中球増多、CRP上昇、プロカルシトニン増加)、細菌検査(腫脹皮膚の穿刺液より細菌を検出)より診断。
治療:抗菌薬の点滴を行う。
転帰:抗菌薬が無効な例では感受性検査所見を参考に抗菌薬を変更。
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外陰パジェット病

病歴:60歳代女性、半年前外陰部の紅斑に気づき、近医で湿疹として外用治療を受けていたが、拡大し、びらん、潰瘍を伴うようになり受診。
診察:外陰部に手拳大の紅斑とその中央にびらん、潰瘍あり。右鼠径リンパ節を触知する。
診断のためのテストとその結果:皮膚生検を行う。病理組織像で表皮内にパジェット細胞がみられる。
治療:腫瘍広汎切除術および植皮術を行う。所属リンパ節転移例ではリンパ節郭清術を追加する。センチネルリンパ節生検を行うこともある。遠隔転移例では化学療法を行う。
予後:病期によって異なる。
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ボーエン病:表皮内癌の一種

病歴:70歳代男性、半年前に陰嚢の紅斑と脱色素斑に気づいたが放置。1カ月前よりその中央にびらん、潰瘍を生じた。
診察:陰嚢前面に紅斑、脱色素斑、黒褐色斑が混在する手拳大、地図状の局面があり、中央に小指頭大の潰瘍がある。
診断のためのテストとその結果:皮膚生検を行う。病理組織像で表皮全層に個細胞角化、多核異常角化細胞(clumping cell)を特徴とする、異型表皮細胞がみられる。
治療:腫瘍切除を行う。
コメント:ボーエン病とよく似た組織像をもつ疾患にボーエン様丘疹症がある。外陰部に黒色の多発性丘疹を生じ、しばしばヒトパピローマウイルス(HPV)-16が検出される。
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ケイラー紅色肥厚症:陰茎などの外陰部に生じたボーエン病

病歴:50歳代男性、3カ月前より亀頭に紅斑があり、次第にびらん、潰瘍を形成。
診察:亀頭に境界不明瞭な紅斑、中央にびらん、潰瘍あり。
診断のためのテストとその結果:皮膚生検でボーエン病と同様な組織像(表皮全層に個細胞角化、多核異常角化細胞 [clumping cell] を特徴とする異型表皮細胞)がみられる。
治療:外科的切除を行う。
転帰:有棘細胞癌を発症しやすいので注意が必要である。
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有棘細胞癌

病歴40歳代男性、4カ月前に亀頭の疣状の丘疹に気づいたが放置、次第に増大。
診察:亀頭に紅色の表面にびらんを伴う腫瘤がみられ、滲出液を伴う。圧痛はない。
診断のためのテストとその結果:皮膚生検を行い、病理組織像で表皮内に個細胞角化、核異型、癌真珠、細胞分裂像のある腫瘍細胞巣がみられる。
治療:外科的切除を行う。所属リンパ節転移例ではリンパ節郭清術を行う。浸潤癌、転移巣に対しては化学療法あるいは放射線療法。
予後:病期により異なる。一般に有棘細胞癌の5年生存率は、病期Iでは92%、IIは83%、IIIAで60~80%、IIIB 48%、IVは10%。
コメント:外陰部の有棘細胞癌発症の危険因子として、包茎、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染、巨大尖圭コンジローマ、硬化性萎縮性苔癬、扁平苔癬が挙げられる。
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基底細胞癌

病歴:70歳代女性、約9カ月前に外陰部の黒色丘疹に気づく。その後徐々に増大し、中央に潰瘍を形成。
診察:恥骨部から大陰唇に鶏卵大の深い潰瘍(蚕食性潰瘍)があり、周囲は黒褐色の堤防状結節が縁どる状態。
診断のためのテストとその結果:臨床所見、ダーモスコピー所見(arborizing vessels、multiple blue-gray globules/large blue-gray ovoid nests、spoke wheel areas、leaf-like structure、ulcer)と病理組織所見(基底細胞様の腫瘍巣で、最外層は柵状配列を示す。腫瘍巣と周囲結合織の間に裂隙形成)より診断。
治療:外科的切除を行う。
転帰:転移はまれであり、十分切除されれば予後良好。潰瘍が水平あるいは垂直方向に進行する破壊型では軟部組織、骨を破壊することがある。
コメント: 黄色人種の基底細胞癌は黒色調を呈することが多いが、白色人種では皮膚色あるいは淡紅色のことが多い。
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水疱性類天疱瘡

病歴:70歳女性、3週間前より、四肢、体幹に緊満性水疱が多発し、強い痒みを訴える。
診察:体幹、四肢、大陰唇、腟に3~5mmの紅斑を伴う水疱、びらん、潰瘍が多発する。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病理組織検査(表皮下水疱)、蛍光抗体直接法(基底膜部にIgGが線状に陽性)、1M食塩水処理皮膚を用いた蛍光抗体間接法(基底膜部表皮側にIgGが陽性)から診断。血液検査で類天疱瘡抗原(BP)180 NC16Aに対する抗体を検出する。好酸球増多を伴うことが多い。
治療:ステロイド内服を開始し、用量を漸減する。免疫抑制薬あるいは血漿交換療法も有効。軽症例ではジアフェニルスルホン(DDS)、テトラサイクリン系抗菌薬とニコチン酸アミド併用療法、ステロイド外用も有効。
転帰:ステロイド内服を初期量0.5mg/kg/日で開始し、有効の例が多い。その後、臨床症状(水疱新生)と自己抗体価を参考に漸減する。
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後天性表皮水疱症

病歴:70歳代男性、2週間前より、四肢、体幹に緊満性水疱が多発。
診察:体幹、四肢および陰嚢、陰茎に3~5mmの水疱、びらんが散在する。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病理組織検査(表皮下水疱)、蛍光抗体直接法(基底膜部にIgGが線状に陽性)、1M 食塩水処理皮膚を用いた蛍光抗体間接法所見(基底膜部真皮側にIgGが陽性)から診断。
治療:ステロイド内服で治療。難治例では免疫抑制薬を併用する。
転帰:ステロイド内服に抵抗性のことが多い。
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ベーチェット病

病歴:10歳代女児、3日前より外陰部、肛囲、口腔粘膜に潰瘍が多発し、疼痛を伴う(a:外陰部の潰瘍、b:右頬粘膜潰瘍)。下腿に有痛性の硬結を触れる紅斑があり、膝、肘関節痛を伴う。
診察:外陰部、肛囲、頬粘膜に直径3~6 mmの潰瘍が多発する。両下腿に直径10~15mmの有痛性で、硬結を伴う紅斑が1カ所ずつみられる。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴から診断。針反応陽性(40%の症例)、レンサ球菌死菌抗原によるプリックテストも有用。HLA B51陽性(60%の症例)。急性期には血液検査でCRP上昇、好中球数増加。眼科で虹彩毛様体炎、網膜ぶどう膜炎の有無をチェックする。
治療:発熱、関節痛、皮膚症状に対しNSAIDsあるいはコルヒチン内服、ステロイド外用。眼症状に対し免疫抑制薬、TNFα阻害薬。眼症状の進行期、神経型にステロイド全身投与。血管型あるいは血栓性静脈炎に対して抗凝固薬。
転帰:急性症状を繰り返すことが多い。腸管型、血管型、神経型では重篤となることがある。
コメント:眼症状のなかで、眼底型の網膜ぶどう膜炎では視力の予後は悪かったが、免疫抑制薬、TNFα阻害薬の導入により改善している。
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全身性エリテマトーデス(SLE)

病歴:30歳代女性、3カ月前よりレイノー症状、2週間前より両頬の紅斑、腟粘膜の潰瘍に気づく。
診察:体温37.8℃、両頬、手指、爪周囲に境界明瞭な浮腫性紅斑、腟に5~8 mmの深い潰瘍が3カ所みられる。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴、検査所見(汎血球減少、抗核抗体、抗2本鎖DNA抗体、抗Sm抗体陽性、補体低値)により診断。紅斑の組織所見と蛍光抗体直接法で基底膜部にIgG、IgM、C3の沈着(ループスバンドテスト陽性)も重要。
治療:ステロイド全身投与を行う。初期量は腎病変の病型と程度による。ステロイドで効果不十分な例ではステロイドパルス療法や免疫抑制療法を行う。
転帰:全身的予後は腎病変、心病変、肺病変の程度により異なる。ステロイドや免疫抑制薬投与に伴う感染症も予後を左右する。外陰部潰瘍は治療により寛解するが、悪化と寛解を繰り返すこともある。
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硬化性萎縮性苔癬:中年以降の女性の外陰部に多い

病歴:60歳代女性、数年前から外陰部に痒みのある白色局面。
診察:両側大陰唇に境界明瞭な白色萎縮性局面があり、その一部に潰瘍を形成する。
診断のためのテストとその結果:皮膚病理組織検査。表皮萎縮、液状変性と真皮上層の著明な浮腫と膠原線維の均質化、真皮中層の帯状リンパ球浸潤がみられる。
治療:ステロイド外用。
転帰:難治例が多い。
コメント: 数%の症例で病変部に有棘細胞癌を生じるため、注意深い経過観察が必要である。
以前は、女性の外陰部に発症した本症は陰門萎縮症(kraurosis vulvae)、男性例は陰茎萎縮症(kraurosis penis)あるいは閉塞性乾燥性亀頭炎(balanitis xerotica obliterans)と呼ばれた。
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外陰部潰瘍・びらんの診断アルゴリズム

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単純疱疹(性器ヘルペス):単純ヘルペスウイルス 1型(HSV-1)あるいは2型(HSV-2)による感染

ケースの説明
病歴:30歳代男性、1日前より包皮に小水疱、小潰瘍を生じている。著しい痛みを伴う。
診察:包皮に小水疱、小潰瘍が散在し、鼠径リンパ節の腫大を伴う。
診断のためのテストとその結果:診察所見、抗原検査(イムノクロマト法:水疱内容を溶解液に撹拌したものを検査プレートに載せ、所定の位置に陽性バンドが出現するかを観察する、蛍光抗体法:水疱蓋、水疱底部の細胞を採取し、スライドガラスに載せ、蛍光抗体法にて検出する)、核酸検出法(PCR、LAMP法など:保険未承認。但し免疫不全状態であって、単純疱疹ウイルス感染症が強く疑われる患者のみリアルタイムPCR法が保険収載)、血清反応(型特異的IgG抗体の検出)。
治療:抗ウイルス薬の内服、外用。再発性の性器ヘルペスでは抗ウイルス薬の継続投与を行う。
転帰:初感染では発熱などの全身症状を伴うことがあるが、約2週間で治癒。HSV-2感染では再発性となることが多い。
コメント:性行為に伴う、HSV-2初感染の症例が多いが、最近ではHSV-1による症例が増加している。仙骨神経障害により排尿障害を生じることがある(Elsberg症候群)。
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