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発熱を伴う皮膚疾患の診断アルゴリズム(感染症以外を疑う場合)

中長期的な発熱や皮疹の遷延が認められる場合は鑑別がやや多岐にわたる。
膠原病や自己免疫疾患の場合、除外診断も含めて診断決定までに時間を要する場合があり、悪性腫瘍が疑われる場合は診断を急ぐ必要がある。薬疹や外的要因は同定が困難なことも多く、生活歴、(処方薬剤以外の)内服歴などにも注意が必要である。
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1: 谷崎英昭先生ご提供

EBウイルス感染による発熱を伴う皮膚疾患

病 歴:30歳代男性、生来健康であった。初診前日より38.5℃の発熱、咽頭痛が出現。躯幹より粟粒大の紅斑が四肢に拡大した。近医でアモキシシリン(パセトシン)投与を試みられたが、改善が乏しく当院紹介となった。
診 察:躯幹と近位四肢に境界不明瞭で淡い紅斑が出現し癒合していた。軽度瘙痒を伴っていた。水疱形成・粘膜疹は認められなかった。
診断のためのテストとその結果:診察時はウイルス感染を念頭に中毒疹と診断。発熱を伴っていたため、採血を実施し、EBウイルスIgG陽性、IgM陰性、EBNA:40倍と高値であった。
治 療:ジフルプレドナート(マイザー)軟膏の外用と安静を指示した。
転 帰:約1週間の経過で皮疹は消退して略治となった
 
a:背部広範囲に浸潤を有する紅斑を認め一部癒合していた。水疱や膿疱の混在はなかった。
b:背部皮疹の拡大像。数ミリ大までの紅斑と小丘疹が混在して癒合している箇所も認める。
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1: 谷崎英昭先生ご提供

スティーブンス・ジョンソン症候群による発熱を伴う皮膚疾患

病 歴:60歳代女性、生来健康であったが、初診7日前より39℃の発熱が出現。近医内科でアモキシシリン(サワシリン)・アセトアミノフェン(カロナール)・アズレンスルホン酸ナトリウム/L-グルタミン(グリマック)を処方されたが、3日後までに紅斑が全身に拡大した。近医皮膚科で内服を中止されるも口唇のびらんと眼球結膜の充血を認めたため当科紹介となった。
診 察:全身に標的様の紅斑を認め、頚部リンパ節腫脹が著明であった。眼球結膜の充血と軟口蓋に発赤を認めた。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴から溶連菌感染を含む感染症・スティーブンス・ジョンソン症候群を疑い採血を行ったところウイルス抗体価・抗ストレプトリジン-O値など陰性であった。高度肝機能障害を認めた。
治 療:プレドニゾロン(プレドニン)40 mg/日とセファゾリン(CEZ)3 g/日を開始したところ、翌日には自覚症状の改善を認めた。発熱も速やかに解熱した。
転 帰:開始後2週間にかけて全身の紅斑は色素沈着となった。後日サワシリンのリンパ球幼弱化試験(drug lymphocyte stimulation test、DLST)が陽性であった。
 
a:口唇全体にびらんがあり、舌縁にもアフタの散在を認めた。
b:躯幹・四肢にも中心部に一部壊死傾向を伴った浸潤を有する紅斑が多数散在していた。癒合傾向は乏しかった。
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1: 谷崎英昭先生ご提供

全身性エリテマトーデス(SLE)による発熱を伴う皮膚疾患

病 歴:50歳代女性、20歳代よりSLEと診断されている。1週間前より39℃後半の発熱・手背と顔面の紅斑が出現。蛋白尿・汎血球減少・各抗体価陽性よりSLEの増悪と診断された。皮疹のコントロールが不良であり、加療目的に当院紹介となった。
診 察:顔面に瘙痒を伴う癒合した紅斑が遷延し軽度褐色調を呈していた。両腋窩には融合した浸潤の強い紅斑を認めた背部にも大小の淡い紅斑が散在していた。
診断のためのテストとその結果:露光部を中心とした紅斑があり、補体の低下、抗核抗体・抗dsDNA抗体・抗ssDNA抗体が著明高値であった。
治 療:SLEDAI 32点と増悪期と考えられ、ステロイドパルス療法後プレドニゾロン(プレドニン)1 mg/kgで開始し以後2週間おきに漸減した。
転 帰:熱発・皮疹は比較的速やかに消退したが、腎生検実施後にシクロホスファミド(エンドキサン)を追加して加療継続中である。
 
a:顔面ほぼ全面に熱感を伴う紅斑を認めた。両頬部は軽度色素沈着をともない、薄い鱗屑が付着していた。
b:背部を中心に大小の不整な浸潤を有する紅斑が散在していた。両腋窩は癒合して局面となり、軽度疼痛を伴っていた。
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中毒性表皮壊死症(TEN)による発熱を伴う皮膚疾患

病 歴:40歳代男性、クモ膜下出血発症時よりゾニサミド内服を開始。内服18日目より全身に紅斑・丘疹が出現。39℃台の発熱・全身の紅斑も伴い、臀部・四肢の水疱形成・皮膚びらんが拡大してきたため当科緊急入院となった。
診断のためのテストとその結果:病歴よりゾニサミドによる中毒性表皮壊死症を疑った。CRP:13.2、好酸球:24%と高値であった。DLSTも陽性であった。薬剤性過敏症症候群(DIHS)の診断基準は満たさなかった。
治 療:原因薬剤の中止、感染症の発症に注意しながらプレドニゾロン(PSL)1 mg/kgで開始した。
転 帰:治療開始とともに状態は速やかに改善し、皮膚症状も軽度色素沈着を残して治癒した。
 
a:両臀部に紅色から一部褐色の混じる浮腫性紅斑を認め、皮膚壊死・壊死後のびらんも混在している。
b:足背から趾背部の擦過やすい箇所などは容易にびらんを呈した。明らかな感染兆候は認められない。
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1: 谷崎英昭先生ご提供

手足口病による発熱を伴う皮膚疾患

病 歴:30歳代男性、生来健康であったが、初診2日前より40℃の発熱、手掌の紅斑が出現。徐々に全身に拡大して水疱が多発した。口腔内にもアフタ様のびらんが出現したため食事摂取困難となって当科緊急入院となった。
診 察:体温38.4℃。手掌・足底を含む全身に中央に臍窩を伴う小水疱が散在し、口腔内びらんを伴っていた。頭痛や嘔気は認めなかった。
診断のためのテストとその結果:Tzanck試験陽性より重症の手足口病を疑って以下検査を行った。インフルエンザ陰性・水痘ウイルス既感染パターンであった。HSV陰性・EBV陰性・水疱症も否定的であった。
治 療:当初、成人水痘も鑑別に挙げてアシクロビル(ビクロックス)1週間点滴加療を行った。手足口病が疑われてからは、補液を中心に安静加療を継続した。
転 帰:治療開始後2週間で水疱は痂皮化したが、炎症反応(CRP)と四肢末梢のしびれ感は3カ月にわたって遷延し、最終的には改善した。
a:両手掌に大小の水疱が混在していた。
b:四肢にも緊満性の水疱が多数出現し、軽度瘙痒を伴っていた。
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1: 谷崎英昭先生ご提供

熱傷後の蜂窩織炎による発熱を伴う皮膚疾患

病 歴:60歳代女性、多系統萎縮症、うっ滞性皮膚炎の既往あり。初診8日前に左下腿に保温のため熱いタオルを10分間巻いていたが我慢していたとのこと。その後、左下腿に発赤が出現してきたため当科を受診、同日入院となった。
診 察:左下腿伸側を中心に熱感と水疱形成・小びらんを認めた。発熱・圧痛も伴っていた。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴より熱傷後の創部2次感染と判断。血液検査においても白血球と炎症反応の高値を認めた。下肢超音波検査より深部静脈血栓症は否定的であった。
治 療:入院同日よりセファゾリンナトリウム(セファメジンα)の投与、局所はジメチルイソプロピルアズレン(アズノール)外用を継続した。下肢挙上の徹底も指導した。
転 帰:2週間後にはびらん部の上皮化は終了し、炎症後の色素沈着となって略治となった。
 
a:。左下腿に熱感と圧痛を伴う紅斑が有り、中心部は皮膚表面の壊死が強く水疱形成も混在している(初診時)
b:左下腿に熱感と圧痛を伴う比較的境界明瞭な紅斑を認め、炎症後と思われる皮膚剥離も生じていた(加療後)
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1: 谷崎英昭先生ご提供

白血病による発熱を伴う皮膚疾患

病 歴:60歳代男性、8年前より健診時に血球減少を指摘されていた。近医での骨髄検査により骨髄異型性症候群と診断され、3年間経過観察をされていたが、輸血依存性の血球減少が遷延。38℃台の発熱・咳嗽が出現し、急性骨髄性白血病への進展が疑われ入院となった。
診断のためのテストとその結果:急性骨髄性白血病の診断は血液内科にて行われた。経過途中で図(a、b)のような浸潤を有する硬結が多数出現し、皮膚生検の結果皮膚浸潤と診断した。
治 療:多くの化学療法を実施するも不応性であり、易感染状態より状態は悪化していった。
転 帰:加療開始から約1年で肺状態が悪化により永眠された。
 
a:躯幹に大小の浸潤を有する紅斑が散在していた。
b:四肢にも熱感をともなう紅斑を認めた。圧痛はなかった。
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1: 谷崎英昭先生ご提供

蕁麻疹による発熱を伴う皮膚疾患

病 歴:40歳代男性、バッドキアリ症候群の既往あり。初診の2週間前より誘因なく全身に膨疹が出現。瘙痒が強く、発熱と全身倦怠感を伴ってきたために当科受診となった。
診断のためのテストとその結果:皮疹より蕁麻疹と判断。持続時間より血管炎関連疾患も疑われたが、本人が生検を拒否した。CRP:4.2、好酸球:14.2%と高値であった。
治 療:近医より抗ヒスタミン薬が処方されていたが、本人希望により他抗ヒスタミン薬を追加し併用することでコントロールを試みた。
転 帰:内服併用2週間で徐々に膨疹の出現は減少し、内服漸減期間を経て治癒した。
 
a:躯幹・四肢に大小・一部癒合する膨疹を認め、瘙痒を伴っていた。
b:頚部から顔面・頭部にかけても膨疹が出現。呼吸苦は伴っていなかった。
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1: 谷崎英昭先生ご提供

ゾニサミドによる発熱を伴った薬剤性過敏症症候群(DIHS)

病 歴:40歳代女性。若年時より鼻出血が頻回あり、43歳時に突然の意識障害から脳動静脈奇形(AVM)と診断。以後、ゾニサミドを内服していたが、症状が安定していたため4カ月間内服を休薬。内服再開41日目より全身に紅斑・丘疹が出現。39℃台の発熱・乾性咳・肝機能障害も伴っていた。
診断のためのテストとその結果:顔面に不整な紅斑を認め、口唇には小びらんを伴っていた。躯幹・四肢には母指頭大までの淡い紅斑が多数認められた。掻痒感は軽度出会った。AST:67、ALT:133、CRP:10.8、好酸球:11.0%と高値であった。
治 療:治療初期はステロイド外用と補液にて経過をみていていたが、紅斑出現から2週間目にかけて肺野に好酸球浸潤影を認め、PSL 25 mg/dL内服を追加。
転 帰:内服併用2週間で徐々 に膨疹の出現は減少し、内服漸減期間を経て治癒した。
 
a:躯幹・四肢に大小・一部癒合する膨疹を認め、瘙痒を伴っていた。
b:頚部から顔面・頭部にかけても膨疹が出現。呼吸苦は伴っていなかった。
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1: 谷崎英昭先生ご提供

ツツガムシ病による発熱を伴う皮膚疾患

病 歴:70歳代男性、初診の2週間前に山へ行き、頚部の痒みを自覚したため市販の外用薬を使用していた。2週間後から全身の紅斑と発熱が出現しツツガムシ病を疑われて当科紹介受診。
診断のためのテストとその結果:採血データ(GOT:83、GPT:103)ツツガムシ抗体価陽性(Orientia tsutsugamushi Shimokoshi型IgG、IgMともペア血清で増加あり)より診断。
治 療:入院にて1週間ミノサイクリン(ミノマイシン)200 mg/日点滴投与、退院後1週間ミノサイクリン(ミノマイシン)200 mg/日内服投与を継続した。治療開始とともに紅斑は消退傾向を示した。
転 帰:軽快した。
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1: 山形大学皮膚科 林昌浩先生ご提供

成人スティル病による発熱を伴う皮膚疾患

病 歴:40歳代女性、初診の1カ月前より39℃の発熱・関節痛・咽頭痛・四肢の淡い紅斑が出現。診断確定時より腎機能のコントロールが不良であり、加療目的に当院紹介となった。
診 察:全身に瘙痒を伴う紅色丘疹が散在し、肩部には融合した浸潤の強い紅斑を認めた鼻根部にも淡い紅斑が残存していた。
診断のためのテストとその結果:WBC:12,500、Neut:10,300、CRP:11.3、GOT:73、GPT:127、各種抗体陰性であった。
治 療:16歳以上、成人発症スティル病分類基準を満たし診断。
転 帰:プレドニゾロン(プレドニン)30 mg/日から加療を開始し、熱発・皮疹は比較的速やかに消退傾向を示したが、10 mg/日以下になると発熱と紅斑が再燃するため、10~15 mg/日で継続加療中である。
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1: 谷崎英昭先生ご提供

発熱を伴う皮膚疾患の診断アルゴリズム(感染症を疑う場合)

比較的短期間の経過で感染症が誘因と考えられる場合、細菌性か細菌性以外をまず鑑別に挙げる。
細菌性が疑われる場合、感染部位を特定することを意識することで原因菌の同定が容易なることがあり、初期の抗生剤投与についても効率よく実施できる。
細菌性以外の場合は、海外渡航の有無を含めた旅行歴などの患者エピソードと併せて、地域で流行している可能性のある疾患を把握することで、より迅速な対応が可能となる。
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1: 谷崎英昭先生ご提供

発熱を伴う皮膚疾患の診断アルゴリズム(感染症以外を疑う場合)

中長期的な発熱や皮疹の遷延が認められる場合は鑑別がやや多岐にわたる。
膠原病や自己免疫疾患の場合、除外診断も含めて診断決定までに時間を要する場合があり、悪性腫瘍が疑われる場合は診断を急ぐ必要がある。薬疹や外的要因は同定が困難なことも多く、生活歴、(処方薬剤以外の)内服歴などにも注意が必要である。
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1: 谷崎英昭先生ご提供

EBウイルス感染による発熱を伴う皮膚疾患

病 歴:30歳代男性、生来健康であった。初診前日より38.5℃の発熱、咽頭痛が出現。躯幹より粟粒大の紅斑が四肢に拡大した。近医でアモキシシリン(パセトシン)投与を試みられたが、改善が乏しく当院紹介となった。
診 察:躯幹と近位四肢に境界不明瞭で淡い紅斑が出現し癒合していた。軽度瘙痒を伴っていた。水疱形成・粘膜疹は認められなかった。
診断のためのテストとその結果:診察時はウイルス感染を念頭に中毒疹と診断。発熱を伴っていたため、採血を実施し、EBウイルスIgG陽性、IgM陰性、EBNA:40倍と高値であった。
治 療:ジフルプレドナート(マイザー)軟膏の外用と安静を指示した。
転 帰:約1週間の経過で皮疹は消退して略治となった
 
a:背部広範囲に浸潤を有する紅斑を認め一部癒合していた。水疱や膿疱の混在はなかった。
b:背部皮疹の拡大像。数ミリ大までの紅斑と小丘疹が混在して癒合している箇所も認める。
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1: 谷崎英昭先生ご提供