Now processing ... 
 Now searching ... 
 Now loading ... 

貨幣状湿疹の治療

出典
img
1: 著者提供

貨幣状湿疹(下肢。多発、急性)

病 歴:40歳代男性、1カ月ほど前より下肢の湿疹が治らず、最近になりさらに数が増えてきたことを主訴に受診した。
診 察:下肢に辺縁明瞭な円形の湿疹が多発、夜間の痒みを伴う。貨幣状湿疹と診断した。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴から診断する。
治 療:ステロイド外用薬と抗ヒスタミン内服薬で治療を開始した。痒みの強い湿潤性の皮疹には亜鉛華単軟膏の重層療法を併用した。
転 帰:2カ月間の内服・外用療法で治癒した。
コメント:貨幣状湿疹は再発することが多い。静脈潅流異常など基礎疾患を有する場合もある。
写 真:初診時。下肢に境界明瞭な湿潤性紅斑が多発。
出典
img
1: 著者提供

貨幣状湿疹(下肢。多発、慢性)

病 歴:40歳代男性、数カ月前より下肢に丸い湿疹が出現。痒みが強く、次第に掻き壊しがひどくなり、なかなか治らないことを主訴に受診した。
診 察:右下腿に苔癬化を有する円形~不整形の湿疹を認め、貨幣状湿疹と診断した。
治 療:夜間の掻破を防止するため抗ヒスタミン薬を投与し、ステロイド外用薬単純塗布の上から亜鉛華単軟膏を重層、さらに光線療法を併用した。
転 帰:慢性であったため色素沈着を伴い治癒した。
コメント:慢性化した貨幣状湿疹は色素沈着を残して治癒し、軽快までより時間を要することが多い。
写 真:下肢に苔癬化を伴う境界明瞭な貨幣状~不整形の湿疹が多発。
出典
img
1: 著者提供

貨幣状湿疹(下肢。外傷部位に続発、慢性湿疹)

病 歴:25歳男性、数年前に下腿を骨折しその固定のために金属製ボルトを挿入していた。抜去後、色素沈着部位に一致して湿疹が出現した。
診 察:右下腿ボルト抜去部位に一致して貨幣状湿疹を認める。
治 療:夜間の掻破を防止するため抗ヒスタミン薬を投与し、Strongクラスのステロイド外用薬の上から亜鉛華単軟膏を重層した。
転 帰:一時的に治癒するが再発を繰り返す。
コメント:外傷に伴う貨幣状湿疹は通常より治癒しにくい。誘因として外傷および金属製ボルトの挿入による金属アレルギーも考えられるため、ニッケルやクロムなどの金属によるパッチテストがその診断・治療に有用なことがある。
写 真:ボルト挿入部位に色素沈着を伴う境界明瞭な湿潤性紅斑が多発、外傷により厚い痂皮を伴う場合などはデブリードマンが有用である。
出典
img
1: 著者提供

貨幣状湿疹(下肢。多発、病初期)

病 歴:30歳代男性、冬になり皮膚がかさかさし、下肢に痒みのある湿疹(a)ができたことを主訴に受診した。
診 察:右下腿全体の皮脂が減少し、同部位に丘疹・小水疱を有する痒みのある紅斑を認める。下方に円形の乾いた湿疹(b)も認め、早期の貨幣状湿疹と考えた。
治 療:保湿外用薬でスキンケアを行い、ステロイド外用薬を1日2回外用した。
転 帰:病初期であったため2週間ほどで治癒した。
コメント:初期の皮疹の場合には外用薬のみでも治癒させ得る。
写 真:初診時。下肢に丘疹・小水疱を伴う紅斑が散在。皮膚の乾燥を伴った。
出典
img
1: 著者提供

自家感作性皮膚炎(躯幹、成人)

病 歴:60歳代男性、数カ月前より下腿に円形の湿疹が出現、痒みが強い。皮疹は次第に増悪し、全身に散布、拡大した。背部全体にも下肢の皮疹に類似した大小多数の円形の皮疹を認めた。
診 察:背部にも下腿同様の円形の皮疹を多数認め、その周囲には小丘疹・水疱が散布。
治 療:症状は全身にわたるが、基礎疾患もないことから抗ヒスタミン薬と、短期間のステロイド内服薬を併用して治療した。さらに下肢の原発巣にはステロイド外用薬を塗布しその上から亜鉛華単軟膏を重層、全身に光線療法も施行した。
転 帰:治療開始1週間後より瘙痒は激減、散布疹も消失した。さらに1カ月間の治療を追加し、皮疹は色素沈着を残して治癒した。
コメント:貨幣状湿疹は、無治療で放置すると自家感作性皮膚炎の様相を呈し重症化することがある。そのような場合、治療にはステロイド薬内服が有効なこともある。
写 真:自家感作疹が全身に多発。痒みが強く周囲を掻き壊す。
出典
img
1: 著者提供

自家感作性皮膚炎(躯幹、若年者)

病 歴:10歳代男児、数カ月前より下肢に湿疹が出現、痒みが強く、なかなか治らない。その後上気道炎を併発、同様の皮疹が全身に拡大したことを主訴に受診した。
診 察:背部に円形の紅斑、略全身に小水疱・丘疹、大小の紅斑局面を多数認めた。
治 療:若年者であることからステロイド内服薬は使用せず、夜間の掻破を防止するため抗ヒスタミン薬をやや多めに投与した。大きな湿疹にはステロイド外用薬の上から亜鉛華単軟膏の重層を行った。
転 帰:1カ月ほどで色素沈着を伴い治癒した。
コメント:上気道炎罹患後に皮膚症状が増悪したような場合には、先行する感染症状の治療(病巣感染)が有用な場合もある。またジベルバラ色粃糠疹との鑑別も必要なことがあるが、貨幣状湿疹では原発疹、続発疹ともに粃糠疹ではなく湿疹である。
出典
img
1: 著者提供

貨幣状湿疹(手背、単発、急性)

病 歴:20歳代女性、手背に丸い湿疹が出現、なかなか治らないことを主訴に受診した。
診 察:患者は介護職であり、刺激の強い石鹸や消毒薬で1日に何十回も手を洗浄・消毒するため、手指全体が乾燥・粗造化している。右手背に円形の紅斑、落屑、亀裂を伴う湿疹を認め、貨幣状湿疹と診断した。
診断のためのテストとその結果:診察所見、職業、病歴などから診断する。
治 療:ステロイド外用薬と抗ヒスタミン薬内服で治療を開始した。同時にヘパリン類似物質含有ローションで、日中のハンドケアをしっかり行った。痒みの強い浸出性の皮疹には夜間の亜鉛華単軟膏の重層療法を併用した。
転 帰:1カ月程度の治療でほぼ治癒したが、スキンケアを怠ると再発しやすい。
コメント:手の貨幣状湿疹は女子に多く、主婦湿疹を伴うことが多い。また職業に伴って生じる皮疹は再発することが多く、難治である。皮膚炎の予防のために使っているゴム製の手袋などが原因となっていることもある。治療と同時にスキンケア、増悪因子除去などの継続的な予防・対策が必要である。
写 真:初診時。手背に境界明瞭な亀裂のある紅斑があり、手指・手背の皮脂減少を伴う。
出典
img
1: 著者提供

貨幣状湿疹(下腿。単発、亜急性)

病 歴:30歳代男性、2カ月前より下肢に丸い湿疹が出現、市販薬を使用しても出没を繰り返し、痒みが強いことを主訴に受診した。
診 察:右下腿に直径2㎝大、円形の色素沈着、周辺部に丘疹・小水疱が集簇、軽度の苔癬化を認めることから貨幣状湿疹と診断した。
治 療:痒みが強いので夜間の掻破を防止するため抗ヒスタミン薬を投与し、ステロイド外用薬の上から亜鉛華単軟膏を重層した。
転 帰:色素沈着を伴い治癒。
コメント:貨幣状湿疹はきちんと(皮膚の浸潤がなくなるまで)治療をしないと再発を繰り返す。
写 真:初診時。右下腿に境界明瞭な苔癬化のある茶褐色調の紅斑局面。表面はやや乾燥粗造化し、周辺に丘疹・小水疱を伴う。
出典
img
1: 著者提供

貨幣状湿疹(足背)

病 歴:30歳代男性、1カ月前より足背に湿疹が出現。治りにくいため受診した。
診 察:仕事ではいている作業靴がきつく、靴のベロが当たる左足背に貨幣状の辺縁やや不明瞭な湿疹を認める。布地の擦過、圧迫による貨幣状湿疹と診断した。
治 療:抗アレルギー薬を内服し、ステロイド外用薬の上から亜鉛華単軟膏を重層した。またサイズの合う靴を選ばせたり、靴下なども生地の柔らかいものを使うなどしたりして、生活指導を行った。
転 帰:皮疹は色素沈着を伴って治癒したが、長時間作業靴をはくと湿疹化を繰り返す。なるべく原因を取り除くことが肝要であるが、増悪の原因が職業にある場合は対処が困難で再発を繰り返しやすい。
コメント:頻回の摩擦や継続的な擦過・圧迫を受ける部位には湿疹を発症しやすい。
写 真:足背に境界やや不明瞭な色素沈着のある皮疹。
出典
img
1: 著者提供

貨幣状湿疹(貨幣状湿疹 下腿 多発 滲出)

病 歴:40歳代男性、数カ月前より下肢に湿疹が出現。下肢全体が乾燥しかゆみがあった。湿疹は徐々に増数。痒みが強く掻き壊していたら次第にじゅくじゅくしてきたと受診した。
診 察:皮脂の減少した左下腿に悪臭のある黄色調の滲出を伴う貨幣状の湿疹を認めた。貨幣状湿疹に掻破による細菌感染を伴ったと診断した。
治 療:抗アレルギー薬と短期間の内服抗菌薬を併用し、ステロイド外用薬の上から亜鉛華単軟膏を重層した。乾燥した皮膚にはヘパリン含有ローションを適量塗布した。
転 帰:皮疹は次第に乾燥し色素沈着を伴って治癒した。皮膚の乾燥もスキンケアにより治まった。
コメント:皮疹に感染症状が合併する場合には抗菌薬の内服、細菌培養検査が治療に有効なことがある。
写 真:左下腿に境界明瞭で、周辺に黄苔を伴う湿潤性紅斑局面が存在。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:うっ滞性皮膚炎

病 歴:55歳女性、以前より下肢に静脈瘤があったが数カ月前より同部位の皮膚に湿疹が出現。なかなか治らないことを主訴に受診した。
診 察:両下腿に静脈瘤が多発。同部位に色素沈着や紫斑を伴う湿疹性の皮疹を多数認める。うっ滞性皮膚炎に伴う貨幣状湿疹と考えた。
治 療:夜間の掻破を防止するために抗アレルギー薬を投与、ステロイド外用薬を塗布した。また皮膚の乾燥・粗造を改善するため入浴後などに適宜ヘパリン類似物質含有ローションなどを使用した。光線療法も併用した。
転 帰:色素沈着を伴い治癒。
コメント:基礎疾患があるような場合には再発を繰り返す。下肢静脈瘤に伴ううっ滞性皮膚炎の改善には弾性ストッキングの着用が有用なこともある。
写 真:初診時。左下腿に静脈瘤が多発、同部位に色素沈着を伴う慢性湿疹が多発。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:アトピー性皮膚炎(殿部)

病 歴:15歳男児、学校では野球部に所属。数カ月前より殿部に強い痒みを伴う湿疹が出現、なかなか治らないことを主訴に受診。
診 察:略全身の皮膚の乾燥。肘窩、膝窩、後頚部、殿部を中心に痒みの強い皮疹が多発。スポーツをした後など、発汗により痒みが増強する。一部毛嚢には炎症も伴い、痤瘡を混ず。
治 療:夜間の掻破を防止するため抗ヒスタミン薬を投与し、皮疹にはステロイド外用薬を塗布。痤瘡には抗菌外用薬を使用した。発汗により増悪することから、アトピー性皮膚炎に対する生活指導として、運動後の汗の始末やスキンケア、発汗時の下着の素材(木綿やナイロン等)などの指導を行った。
転 帰:3週間ほどで治癒した。
コメント:アトピー性皮膚炎(AD)でも随所に貨幣状(円形)に見える皮疹を認めることがある。ADと貨幣状湿疹の鑑別は問診や血液検査にて本人や家族のアトピー素因を確認したり、定型的な皮疹や経過を確認したりすることにより行う。ADの皮疹は毛嚢一致性の丘疹が主体である。側腹部、肩甲部などにいわゆるアトピー性乾燥肌の皮疹を認めることが多く、好発部位も特徴的である。
写 真:殿部に痒みの強い円形の皮疹、毛嚢炎が多発。睡眠時、衣服に血がつくほど掻破している。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:アトピー性皮膚炎(腕)

(鑑別疾患:アトピー性皮膚炎(殿部)の症例[ID0612]と同じ)アトピー性皮膚炎においても全身各所に貨幣状(円形・類円形)の湿疹を認めることがある。
写 真:右前腕に瘙痒を伴う円形の湿疹がある。よく皮疹を観察すると毛孔に一致して皮疹が存在することがわかる。皮脂欠乏症やアトピー性毛孔炎を伴う。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:尋常性乾癬(肘)

病 歴:25歳男性、数カ月前より肘や膝、体幹などにあまり痒みのない円形の皮疹が出現、なかなか治らないことを主訴に受診した。
診 察:肘、膝、側腹部、背部、頭部に痂皮を有する円形の皮疹を認める。皮疹は蝋片現象(b)、アウスピッツ現象(c)が陽性であり、尋常性乾癬と診断した。
治 療:皮疹にはステロイド外用薬、ビタミンD3含有軟膏を塗布。また、ナローバンドUVB療法も適宜併用した。
転 帰:1カ月ほどで治癒したが、冬期に増悪する。治療を中断することにより再発を繰り返す。
コメント:尋常性乾癬の皮疹も円形になることが多い。痒みの程度はさまざまである。貨幣状湿疹とは経過や好発部位などが異なり、アウスピッツ現象やKöbner現象(d:別の症例写真)を認めることも診断の一助となる。光線療法(PUVA療法、ナローバンドUVB療法、エキシマ)も有効である。通常の湿疹の治療とは異なり、ステロイド外用薬のみならずビタミンD3含有製剤が有効である。ステロイド外用薬とビタミンD3製剤の配合薬はより簡便で効果も高い。また重症の場合にはPDE4阻害薬やシクロスポリン、メトトレキセートなどの内服薬、さらに重症で関節症状なども伴えば生物製剤を用いることもある。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:慢性色素性紫斑(下腿)

病 歴:40歳代女性、数年前より下腿にあまり自覚症状のない、紫斑を伴う環状の皮疹が出現。なかなか治らないことを主訴に受診した。
診 察:下腿に小紫斑を伴う円形の皮疹を認める。痒みなどはない。
治 療:皮疹にはステロイド外用薬を塗布。血管強化薬やビタミンC(保険適用外)を投与。長時間にわたる立ち仕事は避けるように指導した。
転 帰:2カ月ほどで軽快するも年に数回再発。
コメント:血小板数や機能等の凝固系の異常、循環器系、毛細血管系の異常はなく、原因不明である。治療により一時軽快するものの再発が多い。慢性色素性紫斑には数種の亜型が存在し、鑑別には皮膚生検術が必要な場合もある。
写 真:下肢に小紫斑を伴う円形の紅斑、紫斑局面が散在する。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:環状紅斑(腰部)

病 歴:20歳代女性、数カ月前より身体各所(首、体幹、上下肢)に環状の紅斑が出現、遠心性に広がり軽度の痒みがある。なかなか治らないことを主訴に受診した。
診 察:頚部、背部、側腹部、上下肢に遠心性に拡大する環状の皮疹を認める。遠心性環状紅斑と診断した。
治 療:皮疹にはステロイド外用薬を塗布。また、紫外線療法も併用した。
転 帰:2カ月ほどで治癒した。
コメント:感染症など前駆症状を有する場合もあるが、原因は不明である。初期には小紅斑から始まるが、徐々に環状となり拡大、後期には辺縁に紅色小丘疹を生ずることもあり、湿疹性遠心性環状紅斑と呼ばれることもある。真菌症に類似した中心治癒傾向も示す。
が、真菌症と異なり辺縁の性状はほぼ一様で、痂皮などもなく、全体的にスムーズな感じがある。毎年同じ時期に再発し、年余にわたり再発を繰り返すこともある。
写 真:中心治癒傾向を呈す環状に広がる紅斑が遠心性に拡大。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:体部白癬

病 歴:40歳代男性、数カ月前より右手背に環状に広がる紅斑が出現、軽度の痒みがある。市販薬(ステロイド外用薬)を使用したら広がったと来院した。
診 察:右手背側縁に辺縁がやや不整な環状の皮疹を認める(a)。中央部、辺縁に軽度の鱗屑、周囲に小膿疱を認める。辺縁部の鱗屑を採取。KOH法にて検鏡し菌体要素を確認(b)、糸状菌を多数認め(矢印)、手白癬と診断した。
治 療:皮疹には抗真菌外用薬を塗布。
転 帰:1カ月ほどで治癒。
コメント:皮疹に不適切な外用薬(ステロイド外用薬)を使用することにより増悪。感染症などが疑われる場合は、検鏡や培養により診断を確定してから治療を開始する必要がある。難治な場合、病変が広範囲な場合には抗真菌内服薬の服用も有用である。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:痒疹(下肢)

病 歴 10歳代男児、数カ月前より下肢を中心に虫刺され様の皮疹が多発。強い痒みがあり掻き壊す。なかなか治らないことを主訴に受診した。
診 察:両下肢に虫刺され様の皮疹が多発。経過より亜急性痒疹と診断した。
治 療:皮疹にはvery strong classのステロイド外用薬を塗布。抗ヒスタミン薬を内服させた。
転 帰:3カ月ほどで皮疹の大部分は治癒したが、ところどころに治りにくい痒疹結節が残存した。
コメント:皮疹は環状ではなく丘疹状で瘙破による浸潤を伴う。ブユや蚊、ダニなどの虫刺され、外傷などから続発することが多い。夜間にも瘙痒が強く、内服薬による痒みのコントロールを要する。経過が長いほど難治であるためStrongestクラスのステロイド外用薬が必要な場合もあるが、若年者では皮膚の萎縮や多毛などの副作用が生じやすいため、その使用には十分な注意を払わなければならない。
写 真:両下肢に痒疹結節が多発、強い痒みにより掻き壊し、湿潤する。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:帯状疱疹(背部)

病 歴:20歳代女性、4~5日前より背部に環状に広がる紅斑が出現、当初、軽度の痒みがあったが、昨日ぐらいから次第に強い痛みに変わり、胸部にも痛みが広がってきたため受診した。
診 察:右肩甲部に小水疱を伴う紅斑が散在。皮疹部のみならず神経分布に沿って、皮疹の認められない体の前面にも神経痛(違和感やチクチク刺すような痛み)がある。帯状疱疹と診断した。
治 療:バラシクロビル(抗ウイルス薬)を7日間投与。
転 帰:3週間ほどで神経痛を残すことなく治癒した。
コメント:初期の帯状疱疹は痒みや紅斑から発症することもある。痛みのため他科を受診し、その後湿布薬にかぶれたといって皮膚科を受診することもある。若年者においては帯状疱疹後神経痛に移行することは少ないが、50歳以上の患者では注意が必要である。帯状疱疹におけるバラシクロビル・アシクロビル・ビダラビン等の抗ウイルス薬の保険適用は7日間までであり、抗ウイルス薬は内服と外用を併用して処方することは保険上認められず、単純疱疹(5日間投与)とは抗ウイルス薬の投与日数や投与量が異なるので注意を要す。デルマクイックⓇという簡易診断キットが発売されており、鑑別がつきにくい帯状疱疹(VZV)の診断に有用であるが、単純疱疹(HS)においては陰性となる。
写 真:右肩甲部に小水疱を伴う紅斑が散発。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:壊疽性膿皮症(右下肢)

病 歴:40歳代男性、数年前より下肢に膿胞、丘疹が出現、膿苔をつけ徐々に拡大、潰瘍化し、痛みが強い。症状が繰り返し、難治であることを主訴に受診。
診 察:下肢に、膿苔をつける円形の潰瘍。下方にも瘢痕治癒部位を認める。組織検査にて壊疽性膿皮症と診断。
治 療:皮疹にはプロスタグランジン外用薬を塗布。抗血小板薬やステロイド内服薬、レクチゾールⓇ(DDS)等も併用して治療を行った。
転 帰:6カ月ほどで瘢痕治癒するが再発を繰り返す。
コメント:基礎疾患を有する場合があり、リウマチ系疾患の検査も必要である。特異的な検査所見はない。
写 真:膿苔をつける潰瘍が徐々に拡大し、下方に白色調の瘢痕も認める。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:固定薬疹(腕)

病 歴:20歳代女性、数カ月前より腕に円形の紅斑が出現。色素沈着を伴って治癒するが症状が繰り返すことを主訴に受診。
診 察:上腕に色素沈着を伴う円形の紅斑。
治 療:頭痛や生理痛のため、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)を内服するたびに皮疹が出現することを確認し、被疑薬を内服しないように指導。
転 帰:1カ月ほどで治癒し、色素沈着は徐々に消褪した。
コメント:固定薬疹は色素沈着を伴って治癒、再発を繰り返す。NSAIDsが原因となることが多いが、それ以外の薬剤が原因となることもあるため詳細な問診が必要である。LST等の検査も有用であるが、偽陰性の場合もままある。
写 真:治癒した紅斑は色素沈着を残す。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:紫斑(腕)

病 歴:60歳代男性、数カ月前より上肢(特に前腕外側)に円形の紫斑が頻発、増数する。圧力や外傷などにより皮疹は容易に発症、拡大する。
診 察:下肢血栓症の予防のため、抗凝固薬としてワーファリンⓇを内服している。前胸部、両上肢に特に誘因なく円形の紫斑が出現。
治 療:皮疹にはヒルドイドローションⓇを塗布。また、柔らかい布地の下着をつける、同部を外力から保護するなど、生活上のアドバイスを行った。
転 帰:1カ月ほどで症状は改善するものの、軽い刺激にてすぐに再発する。
コメント:ワーファリンⓇやバファリンⓇなどの抗凝固薬や抗血小板薬を長期に服用した場合、特に老年者などにおいては皮下出血が容易に起こり得る。
写 真:右前腕に円形の紫斑が散在。
出典
img
1: 著者提供

鑑別疾患:結節性紅斑(下肢)

病 歴:20歳代女性、数カ月前より下肢に円形で皮下に湿潤の触れる紅斑、色素沈着が出現、同部位に痛みがあるため受診。
診 察:皮下に浸潤の触れる淡い紅斑、紫斑が多発。圧痛、自発痛がある。皮疹が出現する前に上気道炎様の前駆症状があった。
治 療:前駆症状として上気道炎などの感染症状があったので抗菌薬を服用させ、痛みに対してはNSAIDsを投与した。外用薬にもNSAIDs外用薬とステロイド外用薬を使用した。
転 帰:内服外用にて2カ月ほどで症状は軽度色素沈着を伴って軽快したが、長時間の立ち仕事をすると再発する。
コメント:結節性紅斑は基礎疾患を有する場合があり、感染症、リウマチ性疾患やサルコイドーシスなどの検査が必要なことがある。治療にはヨードカリなどが有効な場合もあり、さらに重症な場合にはステロイド薬の内服が必要になることもある。
写 真:右下肢に浸潤の触れる圧痛のある円形の紅斑が並ぶ。一部色素沈着も認める。
出典
img
1: 著者提供

貨幣状湿疹の治療

出典
img
1: 著者提供

貨幣状湿疹(下肢。多発、急性)

病 歴:40歳代男性、1カ月ほど前より下肢の湿疹が治らず、最近になりさらに数が増えてきたことを主訴に受診した。
診 察:下肢に辺縁明瞭な円形の湿疹が多発、夜間の痒みを伴う。貨幣状湿疹と診断した。
診断のためのテストとその結果:診察所見、病歴から診断する。
治 療:ステロイド外用薬と抗ヒスタミン内服薬で治療を開始した。痒みの強い湿潤性の皮疹には亜鉛華単軟膏の重層療法を併用した。
転 帰:2カ月間の内服・外用療法で治癒した。
コメント:貨幣状湿疹は再発することが多い。静脈潅流異常など基礎疾患を有する場合もある。
写 真:初診時。下肢に境界明瞭な湿潤性紅斑が多発。
出典
img
1: 著者提供