病 歴:20歳代女性、手背に丸い湿疹が出現、なかなか治らないことを主訴に受診した。
診 察:患者は介護職であり、刺激の強い石鹸や消毒薬で1日に何十回も手を洗浄・消毒するため、手指全体が乾燥・粗造化している。右手背に円形の紅斑、落屑、亀裂を伴う湿疹を認め、貨幣状湿疹と診断した。
診断のためのテストとその結果:診察所見、職業、病歴などから診断する。
治 療:ステロイド外用薬と抗ヒスタミン薬内服で治療を開始した。同時にヘパリン類似物質含有ローションで、日中のハンドケアをしっかり行った。痒みの強い浸出性の皮疹には夜間の亜鉛華単軟膏の重層療法を併用した。
転 帰:1カ月程度の治療でほぼ治癒したが、スキンケアを怠ると再発しやすい。
コメント:手の貨幣状湿疹は女子に多く、主婦湿疹を伴うことが多い。また職業に伴って生じる皮疹は再発することが多く、難治である。皮膚炎の予防のために使っているゴム製の手袋などが原因となっていることもある。治療と同時にスキンケア、増悪因子除去などの継続的な予防・対策が必要である。
写 真:初診時。手背に境界明瞭な亀裂のある紅斑があり、手指・手背の皮脂減少を伴う。