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主要動脈

下肢の血管走行で覚えておくことは、総腸骨動脈―外腸骨動脈―浅大腿動脈のメインラインが膝下で前脛骨動脈、腓骨動脈、後脛骨動脈の3本に分岐することである。さらに前脛骨動脈は、足関節を越えて足背動脈と名称を変え、後脛骨動脈と前足部でループを形成する。腓骨動脈は直接足には流入しないが、脛骨動脈への血流供給としての役割を持つ。

angiosome

ある動脈が血液を供給する範囲は、ある程度限られている。これらを区画割りして、3D的に血流分布を考慮したブロック別領域がアンギオソム(angiosome)である。人体には40近くのアンギオソムがあるが、足と足首周辺には、3つの動脈(前脛骨動脈、後脛骨動脈、腓骨動脈)から主に6種類のアンギオソムが存在するといわれている。このアンギオソムという概念を導入することはさまざまな利点がある。例えば皮弁などの皮膚切開部の決定、SPPなどのレーザードプラーのセンサーの設置、経皮的動脈形成術(PTA)やバイパスなど血行再建時のガイド等々、これらを頭に入れておくとずいぶんレベルの高い診療ができるのではないだろうか。これだけでなく、特に中足骨沿いには重要な動脈が走行しているので、手術の際にこれらを温存したりといった工夫もみられる。

足の断面模型

足を構成しているパーツは骨、筋、健、関節、血管、神経などである。これだけ複雑な構造物が足という小さな部位に集中して存在し、かつ全体重がかかっていることは驚くに値する。さて、この断面図で注目してほしいのは、脂肪組織である。脂肪はある程度クッションとしての役割を果たしているが、関節周囲には少なく、この部分に胼胝が好発しやすいことにも関連している。感染症で最初に障害されるのは脂肪であることが多く、重症感染症では多くが融解壊死を起こしている。
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足を構成している骨

足の骨は大きく2つに分けて考えると単純に理解しやすい。すなわち、それぞれの趾を構成している前足部の骨(中足骨―基節骨―中節骨―末節骨、ただし、母趾には中節骨がない)と中・後足部を構成する足根骨や踵骨である。

足の筋腱

伸筋腱類は足背に、屈筋腱群は足底に起始部を持ち膝部まで伸びている。足部の感染が下腿部まで上行するのは、こういった腱の構造が影響している。

足のアーチ構造

足は図のようにa、b、cの3点で支持されており、ac、bcが縦アーチ、abが横アーチである。これらのバランスが崩れると足の変形につながり、胼胝、鶏眼の発生要因の1つとなる。

発生部位から見た類推法

a:血行障害性
b:神経障害性
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糖尿病足病変・潰瘍の発症機序

糖尿病足病変は神経障害と末梢血管障害を基盤とし、そこへさまざまな増悪因子が加わることで最終的に切断に至る。
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神経障害:爪の食い込みで起こる潰瘍

病 歴:70歳、男性。PAD合併。
診 察:右2趾が痛いとのことで来院。
診断のためのテストとその結果:視診のみ。
治 療:右母趾の爪切りと右2趾にポリウレタンドレッシングを施した。
転 帰:除圧により1週間後治癒した。
コメント:外反母趾などにたまに合併する爪甲の外側への弯曲は、気をつけてみるべきポイントである。フットケアが行き届いていれば、このようなことにはならない。
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神経障害: kissing ulcer

病 歴:83歳、女性。糖尿病歴12年。右4趾の難治性潰瘍を主訴に来院。
診 察:下肢の著明な浮腫を認め、右4趾外側、PIP関節部に腱まで達する潰瘍が存在。
診断のためのテストとその結果:浮腫を来す疾患の鑑別として、心機能、腎機能、甲状腺疾患、薬剤性などを調べたが特に異常はなかった。ABIはやや低下していたが、下肢挙上による疼痛の訴えはなかったためPADに伴う反応性の浮腫とは考えなかった。1日中座りっぱなしでテレビを見ているとのことで、浮腫は足趾にまで及んでおり、関節が突出している部位に生じた一種のpressure soreと考えた。したがって、厳密にいえば褥瘡と捉えることもできる。
治 療:ハイドロコロイド材を貼付し、患肢挙上と圧迫療法で浮腫対策を行い軽快した。
コメント:ADLが低下することで、高齢者の場合この症例のように座位をとり続けることが多い。そうなれば、浮腫は必発であり、特に皮膚が脆弱な(最近ではdermatoporosisという名称で呼ばれることもある)高齢者では高度になりやすい。さらに糖尿病で知覚神経が障害されると、潰瘍の痛みがわからないまま悪化していく。圧迫療法で気をつけたいのは、巻いた末梢から先に、代償性に浮腫が生じるので、自験例では足関節までを予防する程度の圧で軽く巻いた。PAD患者や心不全患者は、圧迫療法の適応外であることが多いので気をつける必要がある。
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血行障害:爪甲剝離は虚血のサイン

病 歴:73歳、女性。透析歴19年。大動脈弁閉鎖不全で手術予定中。右母趾の爪がぐらぐらしているとのことで来院。
診 察:右母趾は爪甲剝離となっていた。
診断のためのテストとその結果:鑷子でつまんでみて、剝離が爪床のどの範囲まで及んでいるかを確認したところ、根元から動いたので全層剝離と考えた。打撲の既往や血腫の存在もなく、虚血によるものと想定した。そこで、ABIを測定しようとしたが、拍動が微弱で左右とも測定できず。また、単純X線では浅大腿動脈から細動脈までのレベルが写っていた(これは透析患者であるため、ほぼ全例がこのような所見を得られる)。
治 療:血行再建術の適応をコンサルトしたが、透析中も血圧が下がり1時間程度しかできないとのことで、循環動態が悪すぎるため、まず大動脈弁置換術を優先するようにとのことであった。潰瘍が末節骨にまで到達するのは時間の問題と考えて、乾燥を防ぎつつ抗菌作用を期待して、ゲーベンクリーム外用とした。
転 帰:患部は徐々に拡大し、初診から2カ月後に死亡。
コメント:爪甲剝離を生じているときに虚血を疑うことは、成書に記載されていない。しかし、実際の臨床ではよく遭遇する現象であるので気をつけておく必要がある。血行再建あるいは感染制御で治癒することもある。末節骨に潰瘍が及んでいる場合は、腐骨となっていることがあるので、積極的に治療するならばエアドリルによる切削も1つの方法である。
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神経障害:胼胝ベースの潰瘍、開帳足

病 歴:63歳、男性。2型糖尿病。
診 察:左2趾MP関節部が突出して潰瘍となっている。関節包は保たれていた。
診断のためのテストとその結果:単純X線で横アーチの形状が保たれているかをチェックしたところ、開帳足となっていた。細菌培養検査も同時に施行したが陰性。神経障害のスクリーニングでモノフィラメント法を施行したところ、知覚障害が判明した。
治 療:穴あきパッドによる除圧。
コメント:糖尿病では、知覚神経のみならず、運動神経や自律神経も障害される。運動神経障害により筋力低下が起こり、ひいては関節拘縮が起こるメカニズムは、脳梗塞後に肘などでみられる麻痺と同じであり、一度変形すると回復させることは困難である。足の横アーチが崩れると開帳足となり、突出部に荷重が集中して胼胝になる。さらに、胼胝を放置すると皮下血腫が生じ、やがて亀裂が入り潰瘍化する。このケースでは感染を伴わなかったため、除圧しただけで治癒した。
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感染:足趾のみの壊疽(血行障害がなく、感染コントロールがつけば救肢可能である)

病 歴:60歳、男性。2型糖尿病(罹患歴18年)。心筋梗塞で数度のカテーテル治療、バイパス術を受けている。右下肢蜂窩織炎を繰り返しており、今回が3回目とのことで紹介受診。
診 察:右足背が発赤腫脹して熱感を伴っており、右4趾は根元が暗赤色を呈している。
診断のためのテストとその結果:白血球9,500/μl、CRP10.05mg/dl、BS230mg/dl、細菌培養Enterobacter aerogenes 3+、Serratia marcescens3+、Enterobacter cloacae2+、ABI右1.00左0.89、心エコーでは陳旧性の心筋梗塞によりEF30%と低下。
治療および転帰:抗菌薬点滴を2週間施行したところ、発赤腫脹はかなり改善された。しかし、右4趾は根元からミイラ化が進行し、最終的にMP関節で離断した。その後、陰圧閉鎖療法により肉芽の増生が認められ、5カ月後に完治した。
コメント:この例のように足趾の潰瘍から感染を来して、蜂窩織炎になるケースはときどきみられる。蜂窩織炎は軟部組織の感染であるが、その主座は真皮から脂肪組織にかけてである。足の感染で気をつけておくべきことは、筋膜や腱まで拡大していないかということである。幸いにもこのケースでは、抗菌薬が奏効し、かつ血流もさほど悪くなかったので足を温存できた。感染症では、細菌の毒素、炎症反応の結果組織が腫脹して血管が圧迫されて起こる血流障害、局所で生じた菌血症によるmicro DICなどにより、壊疽が進行すると想像されているが、明らかなエビデンスはない。
a:初診時
b:切開したところ
c:足趾離断後
d:完治したところ
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感染:前足部までの潰瘍(血行障害がなく、感染コントロールがつけば救肢可能である)

病 歴:2型糖尿病(罹患歴10年)。内服加療中。初診の5カ月前に左2趾の先端に傷が生じて近医皮膚科に通院するも、潰瘍が足背および左3趾にまで拡大したため同院整形外科で下肢切断を勧められる。同院での手術が不可能なため(常勤医不在)当院整形外科へ紹介となる。切断前に救肢できないかコンサルトを受けた。
診 察:左前足部背側一面に緑色膿を付着した潰瘍病変が存在し、左2趾DIP関節は脱臼していた。また、左3趾の2趾側も潰瘍化していた。
診断のためのテストとその結果:細菌培養検査を施行したところ、緑膿菌が検出された。X線で左2趾DIP関節脱臼を確認した。ABIは正常だったので、下肢温存は可能と考え、感染対策からスタートすることにした。
治 療:緑膿菌に感受性のあるセフタジジムを投与したところ、感染兆候は落ち着いた。そこで、再生不可能な皮膚と骨、腱などを除去し、可能な限り温存を図った。局所麻酔下に、写真に示すように、正常な皮膚を残して、これを利用しカバーする形で断端形成を行った。術後の縫合不全により、やや治癒は遅れたが、保存的治療により3カ月後に完治した。
a:初診時
b:1週後
c、d、e:4週後の術中所見
f:3カ月後に完治したところ
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血行障害+感染:壊死性筋膜炎

患者:74歳、男性。
既往歴:2型糖尿病、慢性腎不全(透析歴4年)、間質性肺炎(2009年、プレドニゾロン[PSL]5mg内服中)。
現病歴:透析通院中に右踵、右5趾の変色があるとのことで当科を紹介される。心エコーなどの所見から、精査必要と考えA病院に紹介。冠動脈の有意狭窄は認められないものの、両側後脛骨動脈完全閉塞および両側前脛骨動脈の90%閉塞と診断される。左前脛骨動脈の病変部に対し、対側穿刺でアプローチするも病変部が非常に硬く、通過性も悪いためにdeviceが断裂。同日、血管外科のあるB病院に転院となり、除去術施行。退院後、当科を再診される。
診 察: 右外踝下方に黄色の壊死組織を認める(a)。
診断のためのテストとその結果: 症状出現2カ月前の定期検査ではABI(右:1.52、左:1.19)、baPWV(右:2069、左:3134)と著明な石灰化が推測される結果であった。造影検査は両側後脛骨動脈完全閉塞および両側前脛骨動脈の90%閉塞と診断される。細菌検査ではCitrobacter freundii 3+、腸球菌2+、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)1+が検出された。
治療および経過:翌月、左腓骨動脈近位部の90%狭窄および後脛骨動脈分岐直後の100%狭窄にバルーン形成術(plain old ballooning angioplasty、POBA)、左浅大腿動脈の75%狭窄部にはステント留置も追加し、術前測定不能だったABIは0.65に改善。しかしその後、呂律困難となり、5日後、当院へ転院となる。保存的治療により経過をみていたところ、転院1カ月後、急速に高熱とともに右足の発赤、腫脹、熱感、悪臭を伴う滲出液などの所見が出現した(b)。足底も同様に発赤を認め(c)、右5趾は中足骨頭も壊死していた(d)。翌週、大腿切断術施行。しかし、術後の経過は思わしくなく、2日後に永眠される。
コメント:筋膜は文字通り、筋肉を包む膜であるが、浅筋膜と深筋膜の2層から成る。浅筋膜は外側に位置し、非常にまばらな結合織で構成されている(その構造は、ヘチマを想像していただくとよいかもしれない)。これが却って、感染を急速に拡大させる一因となっていると考えられている。また、血流がきわめて乏しいことも感染に弱いことを反映している。したがって、筋膜に感染を生じることにより発症する壊死性筋膜炎は、特に深部の感染症であるために、デブリードマンも大がかりとなり、かつ外部に発赤などの症状が顕在化する頃には、すでに内部で壊死が相当進行しているため、ほとんどのケースで大切断となってしまう。提示した症例は、下腿切断は不可能と判断し、大腿切断を余儀なくされた例であるが写真eに示した通り、筋膜の融解が膝下まで認められた。糖尿病は壊死性筋膜炎における特に重要なリスクファクターであり、また、最もよく起こる部位は下肢である。この症例はまさに典型例であるといえる。
なお、最近の考え方としては、このような軟部組織の感染症をnecrotizing soft tissue infectionsと一括して捉え、その罹患組織により、cellulitis、myositis、fasciitisと分類することが海外では主流になりつつある。これらに共通した特徴は、激烈な勢いで組織が破壊され、全身性症状が出現し、高い致死率を示すことである。起因菌別に、type1(さまざまな菌種による)、type2(A群溶連菌による)と分類することもある[1]。
a:初診時右足
b、c:8週後の増悪時所見
d:8週後の増悪時のデブリードマン時の所見。中足骨頭が観察されるが、すでに骨皮質の色調も悪く、ほぼすべて壊死を起こしている。
e:切断肢の壊死部分を切開したところ、筋膜が融解していることが確認された。
 
(参考文献)
1.[http://www.uptodate.com/contents/necrotizing-soft-tissue-infections?source=search_result&search=necrotizing+fasciitis&selectedTitle=1%7E72 Necrotizing soft tissue infections. Topic 7662 Version 9.0]
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Calciphylaxis

病 歴:51歳、女性。慢性腎不全で5年前から透析。
診 察:左大腿内側に網目状暗赤色斑とその中心に黒色痂皮を認める(a)。
診断のためのテストとその結果:bのように単純X線で、大腿部の中細動脈が確認できる。このレベルの血管が高度な石灰化を起こすのが、Calciphylaxisの大きな特徴である。血清アルブミン値は3.0mg/dlと少し低下していた。
治 療:対症療法(主に疼痛コントロール。局所は再生不可能であるため、二次感染の予防目的)
転 帰:発症6カ月で死亡。
コメント:Calciphylaxisとは、主に透析患者にみられる原因不明、予後不良の皮膚潰瘍を主体とした病変である。疾患概念が普及していないという懸念から、2009年度厚生労働省難治性疾患克服研究事業の対象として疫学調査が行われた。その結果、この疾患に知識のある透析医は40%程度にすぎないことが判明した。この調査では症例対照研究により発症の危険因子としてワルファリン内服と低アルブミン血症が同定された。有効な治療法はなく、この症例のような対症療法しか対応方法がない。なお、疾患の詳細については、本研究の中心となっている[http://www.dialysis.med.keio.ac.jp/kouroushou/content02.html 慶應義塾大学の血液浄化・透析センターのHP]を参照されることをお勧めする。
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コレステロール結晶塞栓症(atheroembolism)

病 歴:61歳、女性。25年前から2型糖尿病に罹患しており、インスリン治療を開始される。3年前に糖尿病性腎症により血液透析導入。1カ月前から右下肢の疼痛、発赤を訴えていたが、突然右足底に斑点状の虚血性壊死が出現。歩行困難となり入院。
診 察:右足底および足趾の多発性壊死巣を認める(a)。
診断のためのテストとその結果:ABI測定、単純X線写真により動脈硬化の状態を把握。問診および透析通院時のカルテを参照するが、発症前1年間に血管内におけるカテーテル操作などの既往はない。
治 療:デブリードマンおよびフィブラストスプレー噴霧およびイントラサイトジェル塗布。疼痛コントロールとして各種鎮痛薬。また、この症例に対してはLDLアフェレーシスを10回施行した。
転 帰:入院後しばらく新生潰瘍の出現をみたが、保存的治療により半年後に完治。特に足趾切断も要せず、歩行可能となり退院(b)。
コメント:blue toe症候群とは、足趾の虚血性色調変化や潰瘍病変等を来すもので、明らかな外傷や低温誘発性損傷もしくは全身性にチアノーゼを来すような疾患を欠く一連の症状を呈するものを指す。blue toe症候群の原因は動脈血流の減少、静脈還流障害、循環血液の異常のいずれかのカテゴリーに分類される[1]。コレステロール結晶塞栓症(atheroembolism)は、blue toe症候群を生じる代表的な原因疾患であるが、同義ではない。
コレステロール結晶塞栓症はカテーテル操作の際に動脈壁に存在するコレステロールの塊を破壊してしまうことにより、偶発的に生じる疾患と捉えられがちであるが、自然発症例も存在するため、問診のみで診断を下すことは不可能である。診断は病理組織標本内にコレステロール結晶の存在が証明できれば確定されるが、虚血部位にメスを入れると新たな傷をつくることになり、治癒が困難になることから、全例で推奨できる検査ではない。むしろ、デブリードマンの際に得られた壊死組織を検体とした場合に、血管内にコレステロール結晶が塞栓形成している像を偶然捉えることができれば幸運であると考えたほうがよい。治療は、大規模臨床試験により有効性を実証されたものはなく、副腎皮質ホルモン[2][3][4][5][6][7]、iloprost[8][9]、LDLアフェレーシス[10][11][12]などを少数の患者に試した報告程度しかなく、しかも大きな効果は得られなかったとしている。したがって、実際の局所療法はこの症例のように対症療法を行うことになる。
なお、糖尿病は直接的にコレステロール結晶塞栓症を生じる原因疾患としては適当でないが、このケースのように動脈硬化を生じる背景として重要であり、症例数も多いためにここに取り上げた。
 
(参考文献)
1. Hirschmann JV and Raugi GJ. Blue (or purple) toe syndrome. J Am Acad Dermatol. 2009 ;60:1-20 (PMID: 19103358.)
2. Mann SJ, Sos TA. Treatment of atheroembolization with corticosteroids. Am J Hypertens 2001; 14:831. (PMID:11497203)
3. Motegi S, Abe M, Shimizu A, et al. Cholesterol crystal embolization: skin manifestation, gastrointestinal and central nervous symptom treated with corticosteroid. J Dermatol 2005; 32:295. (PMID:15863854)
4. Matsumura T, Matsumoto A, Ohno M, et al. A case of cholesterol embolism confirmed by skin biopsy and successfully treated with statins and steroids. Am J Med Sci 2006; 331:280. (PMID:16702800)
5. Koga J, Ohno M, Okamoto K, et al. Cholesterol embolization treated with corticosteroids--two case reports. Angiology 2005; 56:497. (PMID:16079936)
6. Yücel AE, Kart-Köseoglu H, Demirhan B, Ozdemir FN. Cholesterol crystal embolization mimicking vasculitis: success with corticosteroid and cyclophosphamide therapy in two cases. Rheumatol Int 2006; 26:454. (PMID:16025335)
7. Fabbian F, Catalano C, Lambertini D, et al. A possible role of corticosteroids in cholesterol crystal embolization. Nephron 1999; 83:189. (PMID:10516511)
8. Elinav E, Chajek-Shaul T, Stern M. Improvement in cholesterol emboli syndrome after iloprost therapy. BMJ 2002; 324:268. (PMID:11823357)
9. Minatohara K. Renal failure associated with blue toe syndrome: effective treatment with intravenous prostaglandin E-1. Acta Derm Venereol 2006; 86:364. (PMID:16874430)
10.Hasegawa M, Sugiyama S. Apheresis in the treatment of cholesterol embolic disease. Ther Apher Dial 2003; 7:435. (PMID:12887728)
11.Tamura K, Umemura M, Yano H, et al. Acute renal failure due to cholesterol crystal embolism treated with LDL apheresis followed by corticosteroid and candesartan. Clin Exp Nephrol 2003; 7:67. (PMID:14586747)
12.Muso E, Mune M, Fujii Y, et al. Significantly rapid relief from steroid-resistant nephrotic syndrome by LDL apheresis compared with steroid monotherapy. Nephron 2001; 89:408. (PMID:11721158)
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単純X線(軟線)

血管の写りやすい条件にすれば、このように浅大腿動脈が確認できる。
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ABI、TBI、baPWV

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ドプラー

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血管エコー

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SPP

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1: 写真提供:株式会社カネカメディックス

造影CT

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1: 著者提供

TcPO2

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1: ラジオメーター株式会社ホームページ(https://www.radiometer.co.jp/)より

モノフィラメント法

a:5.07モノフィラメントで触覚がなければ神経障害を疑う。
b:実際の使い方。
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VAC ATS system

陰圧閉鎖療法をユニット化した治療器。入院でしか使えないこと、レンタル方式であるために事務的な契約手続きが必要であるといったこともあるが、保存的治療における革新的な役割を果たした。わが国への導入は2010年4月からである。週に3回程度、フォームと呼ばれるスポンジを交換することで良好な肉芽形成が得られる。なお、使用にあたりKCI社からの講習を受ける必要がある。
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1: 写真提供:スリーエムジャパン株式会社

CO2浴

a:人工的に炭酸を水に溶解する器械
b:お湯に入れて溶かすタイプ
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脊髄刺激電極

リード線を刺激部位に固定し、刺激装置を体内に埋め込む(心臓ペースメーカーと同じ)。患者は自分で刺激具合を調整できる。バッテリーは約10年ごとに交換。
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1: 写真提供:日本メドトロニック株式会社

LDLアフェレーシス

LDL(low density lipoprotein)やVLDL(very low density lipoprotein)は俗に言う悪玉コレステロールである。血液中のこれらリポ蛋白は動脈硬化惹起因子として知られている。血液透析と同じような装置を用いて、強い陰性荷電を帯びたデキストラン硫酸をリガンドとして含むカラムを通すことにより、吸着・除去する治療がLDLアフェレーシスである。血液透析を行っている患者であれば、既存のシャントを使用することにより、容易に施行できる。しかし、それ以外の患者ではブラッドアクセス(血液を出し入れするルート)の確保にやや難があることから、それほど一般的ではない治療である。3カ月10回までは、閉塞性動脈硬化症に対する保険適用があるので、血液透析患者における難治性下肢血行不全による潰瘍性病変には選択肢として考慮すべき治療法といえる。ちなみに、この治療法は家族性高コレステロール血症、巣状糸球体硬化症にも保険適用が認められている。
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1: 著者提供

高圧酸素

高圧酸素療法は、創傷治癒促進のみならず、多くの疾患に保険適用がある。その作用機序は、血液中および組織中の酸素分圧を高めることにより低酸素状態を改善するだけでなく、圧力による浮腫の軽減、また酸素の毒性効果により細菌の増殖が抑制されるなど多岐にわたる[1]。また、組織の低酸素状態が改善されることにより、線維芽細胞の分化や血管新生を促進し、創傷治癒が進んでいく。ただ、この装置を持つ医療機関は少なく、すべての施設で行える治療ではないこと、また、1回の治療に3時間以上かかかることや、その間、患者に付き添わなければならないことを考慮すると、あまりにも保険点数が低い(1日あたり200点)ため一般的な治療とはいいがたい。
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1: 著者提供

血管新生療法(骨髄単核細胞移植の例)

a:全身麻酔下に、両腸骨より600~1,000mLの骨髄液を採取
b:比重遠心分離法にて単核球を分離濃縮
c:最終的に30~50mLに濃縮
d:30Gシリンジにて下腿筋肉内に移植(0.3~0.5mLずつ約100カ所)
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1: 著者提供

マゴット

保険適用はないが、医療用無菌ウジを使った治療としてマゴット治療がある。わが国で商業的に無菌ウジを製造飼育しているのは2社のみである。乾燥した壊死病変にはあまり適応がないが、湿性壊死病変では、ウジが壊死組織を活発に貪食し、デブリードマンの効果が高いといわれている。
 
参考文献:
岡田匠,三井秀也:糖尿病性潰瘍・壊疽に対するMaggot Therapy.日皮会誌2008;118(3)409-413.
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1: 写真提供:日本医科大学付属病院再生医療科

免荷装具

免荷装具とひとくちに言っても、さまざまな種類があり、その使用方法もそれぞれに異なる。糖尿病においては、神経障害による足の変形で、胼胝や鶏眼といった不均等な足底圧を反映した病変が生じやすい。これらを是正するために、免荷装具が使用される。免荷装具は圧力分散効果により、pressure soreとしての潰瘍を治癒させるため使用する。それと同時に、すでに治癒した創の再発予防としての役割も必要不可欠である。
出典
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1: 著者提供

血管造影

足関節よりも末梢の細かい血管の状態をみるためには欠かせない検査である。また、石灰化の進んだ動脈でもその影響を受けずに読影できる。しかし、逆に石灰化している動脈を穿刺した際に、コレステロールの固まりを突き破ってしまい、コレステロール結晶塞栓症を誘発する可能性もある。検査と治療を同時に施行するほうがリスクが少なくて済むので、最近は血管内治療(EVT)と組み合わせて行われることもある。
出典
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1: 著者提供

RENASYS

Smith & Nephew社からRENASYSという陰圧閉鎖療法のユニットが2012月9月に発売された。機械本体が小型軽量であり、バッテリー駆動時間が長いので、携帯に適している。また、スポンジ状のフォーム以外にコットンタイプのものも選択できるといった点が特徴である。
出典
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1: 写真提供:スミス・アンド・ネフュー ウンド マネジメント株式会社

VAC ULTA

出典
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1: 写真提供:スリーエムジャパン株式会社

PICO創傷治療システム

単回使用型の電池駆動装置で、キャニスターをもたず、ドレッシング材からの自然蒸散で廃液を逃す。
出典
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1: 写真提供:スミス・アンド・ネフュー株式会社

3M Snap

単回使用型のバネ式装置で、一定の圧力で陰圧をかける定荷重バネにより、カートリッジ内に浸出液を吸引しさらにゲル化して逆流しないように貯留させる。
出典
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1: 写真提供:スリーエムジャパン株式会社

PRP(多血小板血漿)投与

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1: 著者提供

UNO単回使用創傷治癒システム

単回使用の電池式駆動型で、持続・間欠モードの選択や複数の陰圧をかけることができるカートリッジ式装置。15日間使用できる。
出典
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1: 写真提供:センチュリーメディカル株式会社

フェルト絆

出典
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1: 写真提供:アルケア株式会社

糖尿病性潰瘍・壊疽診療アルゴリズム

糖尿病足病変の治療アルゴリズムにはいくつかの案があるが、日本皮膚科学会の創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン委員会によるものは、シンプルでわかりやすい構成となっている。
出典
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1: 爲政大幾,安部正敏,池上隆太ほか:創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン―3:糖尿病性潰瘍・壊疽ガイドライン、図1.日皮会誌2017;127(9):1989-2031. (改変あり)