病歴:27歳、女性。初診の5カ月前より躯幹、頭部に鱗屑を伴う紅斑局面が多発していた。尋常性乾癬などの炎症性角化性疾患を疑われ、ステロイド外用薬にて経過をみられていた。皮疹は一旦軽快傾向にあったものの、1カ月前より悪化したため当科を紹介された。
診察:躯幹を中心に瘙痒を伴わない環状の局面が散在性にみられる(a、b)。
診断のためのテストとその結果:ステロイド外用薬に反応しにくい皮疹であることから、肉芽腫性病変を疑い皮膚生検を施行。術前検査の梅毒抗体検査が定性で陽性であり、定量検査を行いガラス板法512倍、TPHA10240倍。皮膚病理組織ではWarthin- Starry染色により表皮内のT.p.を確認し、梅毒2期疹と診断した。
治療:アモキシシリン(サワシリン)内服を8週間行った。
転帰:診断確定前までステロイド外用を行っていたため、皮疹は遷延した。アモキシシリン(サワシリン)内服終了後に皮疹は色素沈着を残して軽快した(c:内服終了後の皮膚所見)。
コメント:このような臨床症状を呈する2期疹は非常に稀であるが、丘疹性梅毒疹のなかに環状の皮疹を呈するものがある。初期の臨床診断が尋常性乾癬とされていたことからも、梅毒の皮疹の多様性がうかがえる。ステロイド外用薬などの治療に反応しづらい皮疹を認める場合は、皮膚生検を行う必要がある。