病 歴:10年以上前から下腹部に黒色結節が出現。場所柄よく擦れたり、痒かったりしてよくいじっていた。緩徐に拡大してきたため来院。
診 察:下腹部に16mm大の扁平隆起した黒色結節があり、その中央部はやや発赤を伴い瘢痕様である。
診断のためのテストとその結果:臨床像から脂漏性角化症が考えやすいが、基底細胞癌を否定できないので切除を行った。組織の結果は脂漏性角化症であった。
治 療:病理組織学的に取り切れていたため、経過観察とした。
転 帰:術後現在、再発はない。
コメント:基底細胞癌や悪性黒色腫も念頭に置く必要はあるが、悪性黒色腫でみられる色素のしみ出しや、基底細胞癌でみられる堤防状隆起はなく、色調も一様である。よく見ると面皰様開孔もある。掻破によりわかりにくい臨床像となっているが、いずれにせよ脂漏性角化症はさまざまな臨床像をとり、他の疾患との鑑別が必ずしも容易ではないということを頭に入れておく必要がある。