ケースの説明
病 歴:61歳女性。左足背の難治性潰瘍を主訴に受診。幼少時に焚火の引火によって熱傷を受傷した。
診 察:左足背から足趾にかけての潰瘍を認め、第5趾は脱臼して偏位している。周囲には熱傷瘢痕による引きつれも明らかである。
診 断:潰瘍周囲から生検を行って、高分化型のSCCと診断した。
治 療:内側の瘢痕も含めて腱膜直上で切除し、分層植皮で再建した。なお第5趾は切断している。術後補助療法として、PM療法を3クール施行している。
転 帰:術後2年を経過して局所再発・転移は認めていない。
コメント:熱傷瘢痕癌は一般に受診が遅れるケースが多い。その理由の第1は、瘢痕化した醜形を他人に見せたくないという気持ちがあって傷を隠している。第2に、昔からの瘢痕傷が治りにくいと勘違いして、まさか皮膚癌のSCCが発生しているとは考えていない。今後も啓発活動が必要である。
写真: a:初診時 b:手術時 c:病理組織学的所見