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肝斑のアルゴリズム

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顔面のシミを主訴に来院した患者の色素病変の内訳

シミは皮膚科の教科書では肝斑の俗称とされている。しかし「シミ」を主訴に病院を訪れる患者をみてみると、肝斑の患者は意外と少なく、大部分は老人性色素斑(図[ID0605])あるいは扁平な脂漏性角化症(図[ID0613])で、なかには遅発性の太田母斑(FDM)(図[ID0606],表[ID0614],図[ID0616],図[ID0617],図[ID0618],図[ID0619],図[ID3601])や色素性母斑の場合も少なくない。また化粧品かぶれなどの炎症後色素沈着や固定薬疹(図[ID0615])なども含まれている。実際に帝京大学医学部付属病院皮膚科を受診した顔面の色素病変患者を調べてみると、シミを主訴にする患者が最も多く、シミを主訴に来院する患者の60%近くは老人性色素斑で、12%はFDM(太田母斑も含む)であった。次いで扁平な老人性疣贅(脂漏性角化症)が7%を占め、皮膚科教科書でその俗称がシミとされている肝斑は、わずか5%にすぎなかった。ただしこの集計は冬を2回含む1年半の集計であるため、紫外線暴露によって増加する肝斑患者は少なく見積もられたかもしれない。しかし夏季を2回含む集計であっても、10%に満たないと思われる。
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1: 渡辺晋一:シミ・ソバカスの実態、香粧会誌 2000;24: 290.

肝斑

病歴:30歳代女性、数年前から夏季になると両頬部に色素斑が生じ、冬季には色調の改善がみられる。
診察:両頬部の頬骨に一致して、境界鮮明な褐色斑がほぼ左右対称性に存在。
診断のためのテストとその結果:ほぼ左右対称性に境界鮮明な褐色斑が存在し、上下眼瞼には色素斑はない。紫外線曝露により色素斑の増強がみられることから肝斑であることがわかる。
治療:5%ハイドロキノンの外用と紫外線を避けるように指導。
転帰:ハイドロキノン外用2カ月で色素斑は薄くなった。
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肝斑

病歴:50歳代女性、数年前から両頬部に色素斑が生じ、なかなか薄くならないため来院した。
診察:両頬部に、境界鮮明な褐色斑がほぼ左右対称性に存在。
診断のためのテストとその結果: ほぼ左右対称性に境界鮮明な褐色斑が存在し、上下眼瞼には色素斑はない。
治療:5%ハイドロキノンの外用と紫外線を避けるように指導。
転帰:ハイドロキノン外用2カ月で色素斑はほぼ消失。
画像(上):初診時、(下):ハイドロキノン外用2カ月後
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肝斑

病歴:50歳代男性、数年前から両頬部に色素斑が生じた。
診察:両頬部に、境界鮮明な褐色斑がほぼ左右対称性に存在。
診断のためのテストとその結果: ほぼ左右対称性に境界鮮明な褐色斑が存在し、上下眼瞼には色素斑はない。
治療:4%ハイドロキノンを左頬部のみに1日1回外用。
転帰:ハイドロキノンの外用を行った左頬部は色調の改善がみられる。右頬部も紫外線の曝露が減じたためか、多少の改善がみられている。
上図:治療前
下図:治療2カ月後
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老人性色素斑

後天性色素沈着症のなかで最も頻度が高く、シミを主訴に来院する患者の60%を占める(図[ID0601])。俗に「老人性のシミ」と呼ばれ、臨床症状は日光裸露部に生ずる境界鮮明な円形から類円形の淡~黒褐色斑で、点状のものから貨幣大のものまである。欧米ではsolar lentigoと呼ばれ、森岡が命名した光線性花弁状色素斑(図[ID0612])もsolar lentigoと同じである。また扁平な脂漏性角化症(老人性疣贅)(図[ID0613])が老人性色素斑と呼ばれることもあるが、病理学的には両者は異なる。つまり老人性色素斑は病理学的に光線性花弁状色素斑やsolar lentigoに近いものと老人性疣贅に近いものの2種類に分類できるが、同一病変に両者が混在するものもあるため、臨床的には厳密にその区別ができないこともある。
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肝斑と紛らわしい後天性両側性太田母斑様色素斑(Hori’s nevus)

病歴:50歳代男性、40歳頃から両額にシミが生じ、徐々に目立つようになったため、来院。
診察:両側の額にほぼ左右対称性に、境界不鮮明な灰紫色調を帯びた地図上の濃い褐色斑が存在。
診断のためのテストとその結果:境界不鮮明な色素斑で、やや灰紫色調を帯びた濃い褐色斑であることから、後天性両側性太田母斑様色素斑であることがわかる。
治療:Qスイッチルビーレーザー照射を3~4カ月おきに計4回行った。
転帰:色素病変はほぼ消失した。
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肝斑ということで紹介された尋常性白斑患者

病歴:50歳代女性、数年前から顔にシミが生じて、なかなかよくならないということで、近医皮膚科を受診した。そこで、肝斑と診断され、当科を紹介された。
診察:目の回りと両額に地図状の境界鮮明な褐色斑が存在し、その他の皮膚はむしろ脱色素斑となっている。
診断のためのテストとその結果:左右対称性に境界鮮明な色素病変が存在するため、肝斑も考えられるが、肝斑では上下眼瞼に色素斑が生ずることはない。そこで、顔だけでなく、頚部のほうの皮疹を見てみると、目の回りと額の一部が正常皮膚色であり、正常皮膚色と思われた部位は脱色素斑であることがわかった。以上より、顔面に広範囲に生じた尋常性白斑と診断した。また詳しく問診すると、患者も徐々に皮膚色が白く抜けてきたと申告した。
治療:とりあえず尋常性白斑のためにステロイドの外用を行った。一方海外ではこのような広範囲に生じた尋常性白斑に対し、健常皮膚の脱色目的でハイドロキノン・モノベンジルエーテルの外用が行われることがある。ただしこの外用薬は日本では認可されていない。
転帰:日本ではハイドロキノン・モノベンジルエーテルが認可されていないので、治療は難しい。脱色素斑部位に紫外線を照射する治療が基本になるが、患者は色を濃くする治療は希望しなかった。
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肝斑

病歴:40歳代女性、30歳頃から両頬部にシミが生ずるようになり、なかなか消失しないため来院。
診察:両頬部から上口唇に褐色斑が存在し、両鼻根部にも淡い褐色斑がみられる。頬部の皮疹の境界は鮮明で、上下眼瞼を色素斑は避けている。
診断のためのテストとその結果:後天性両側性太田母斑様色素斑と間違われやすいが、境界が鮮明な褐色斑で、上下眼瞼を皮疹が避けていることから肝斑であることがわかる。
治療:ハイドロキノンの外用を行い、紫外線曝露を避けることを指導した。
転帰:ハイドロキノン外用2カ月でかなり色調の改善が認められたが、紫外線の防御をきちんと行わないと、再発がみられる。
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肝斑にQスイッチレーザー治療を行った場合の色素沈着の変化

レーザー照射後すぐに痂皮形成がみられ、1週間程度で痂皮が剝がれると、色は消失する。しかしその後すぐに炎症後色素沈着が起こり、レーザー照射の1カ月後には、治療前より色が濃くなる。その後、炎症後色素沈着は徐々に減じ、結局は治療前の色に戻る。ただし炎症後色素沈着が起こっているときにレーザー照射を繰り返すと、活性化した表皮メラノサイトが破壊されるため、脱色素斑になる。
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作用機序によるskin lightening agent(美白剤とピーリング剤)

日本でいう美白剤はこの表の1、2、3に相当し、1が狭義のメラニン合成阻害剤である。ピーリング剤は4の表皮のターンオーバーを促進することにより色を薄くするもので、レチノイド外用剤とケミカルピーリング剤がある。レチノイド外用剤とケミカルピーリング剤はskin lightening agentであるが、日本でいう美白剤の定義には合致しない。トラネキサム酸はわが国では美白剤とされているが、海外ではskin lightening agentとされておらず、また美白剤としての証拠も乏しい。特にわが国ではトラネキサム酸の内服が肝斑の治療薬として広く使用されているが、有効とのエビデンスは乏しく、むしろ長期内服による副作用も報告されている。
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1: 渡辺晋一:美白剤の有効性について.日臨皮会誌 2009;26: 246-250.

肝斑の鑑別疾患―肝斑以外の疾患を疑う症状とその疾患―

肝斑と思われても表のような症状がある場合は、肝斑以外の疾患を疑う。特に顔面真皮メラノサイトーシス(FDM)(表[ID0614])は肝斑と誤診されていることが多い。
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光線性花弁状色素斑

光線性花弁状色素斑は森岡が命名した色素病変で、色白の人が日光浴など過度の紫外線を浴びていると生ずる。通常の老人性色素斑と異なる点は、金平糖形を呈していて、両肩や上背部など日光浴で日に当たる部位に発症することである。しかしこのような色素斑は白人ではしばしばみられ、欧米では日光色素斑(老人性色素斑)と呼ばれ、老人性色素斑と区別されることはない。
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扁平な脂漏性角化症(老人性疣贅)

脂漏性角化症は高齢者ではごく普通にみられる表皮の疣贅状良性腫瘍で、20歳代から発症し、60歳代では80%、80歳以上で約100%の人にみられる。隆起性の褐色ないし黒色調結節で、表面は疣状であるが、平滑なもの・有茎状のものなど種々の臨床像を呈する。隆起が目立たず扁平なものは、老人性色素斑と鑑別が困難なことがあるが、表面を触ってざらざら感があるかどうかで鑑別可能である。ただし老人性色素斑内の一部に老人性疣贅がみられることもあり、扁平な老人性疣贅は組織学的にしか老人性色素斑と区別できないことがある。
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顔面真皮メラノサイトーシス(facial dermal melanocytosis:FDM)の分類

太田母斑は、乳幼児に生ずる典型的な太田母斑以外に、種々の病型の太田母斑が存在する。海外では太田母斑は母斑ではなく色素異常症に分類されているので、これらの病型を顔面に生ずるFDMと一まとめにしたほうがよい。FDMのなかには古典的太田母斑(classical nevus of Ota)以外に、symmetrical type of nevus of Ota(パラパラ型太田母斑)(図[ID0617]) 、acquired, bilateral nevus of Ota-like macules(後天性両側性太田母斑様色素班:Hori’s nevus)(図[ID0606],図[ID0616],図[ID0617],図[ID0618],図[ID0619],図[ID3601])、nevus fusco-caeruleus zygomaticus(Sun’s nevus)(図[ID0617])、periorbital ring-shaped melanosis(panda-like nevus of Ota)が存在する。さらに真皮メラノサイトが表皮直下に存在すると、比較的境界が鮮明な褐色斑となり、カフェオレ斑や日本でいうところの扁平母斑と紛らわしいこともあり、これを一病型として古典的太田母斑から独立させ、カフェオレ斑様太田母斑(café-au-lait macules-like nevus of Ota)とした。
肥田野がいうsymmetrical type of nevus of Otaとnevus fusco-caeruleus zygomaticusは日本語で発表したか英語で発表したかの違いがあるものの、家族歴の存在や臨床像で異なるところはなく、同一疾患と考えられ、ソバカス様太田母斑(ephelides-like nevus of Ota)とした。acquired, bilateral nevus of Ota-like maculesはそれまで日本では両側性太田母斑とかsymmetrical variety of bilateral nevus of Otaといわれていたものと同じで、肝斑と誤診されていることが多い。またacquired, bilateral nevus of Ota-like maculesとsymmetrical type of nevus of Otaをまとめてaquired dermal melanocytosis(ADM)と呼ぶことがあるが、日本でしか使用されていない。またinfraorbital ring-shaped melanosis(目の下の隈)(図[ID0618],図[ID0616])は古典的太田母斑ばかりでなく、periorbital ring-shaped melanosis(パンダ様太田母斑)の部分症状、あるいは単独でみられることがある。
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1: Watanabe S: Facial dermal melanocytosis: Nevus of Ota and its related dermal melanocytoses, Asian skin and skin diseases, special book of the 22nd World Congress of Dermatology, Medrang Inc, Seoul, p283-291,2011 

固定薬疹

特定の部位にのみ生ずる薬疹の一種で、最初痒みを伴う紅斑が生じ、その後色素沈着となる。原因薬剤を投与するたびに痒みや紅斑を生じ、色素沈着の程度はひどくなる。皮膚と粘膜の移行部に生ずることが多い。色調は灰紫色調を帯びる褐色斑である。この症例は市販の風邪薬で生じたものである。
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後天性両側性太田母斑様色素斑(堀母斑):顔面真皮メラノサイトーシス(facial dermal melanocytosis: FDM)

病歴:40歳代女性、30歳代頃から両側の額に褐色斑が生じ、ほぼ同じ頃に両側の下眼瞼にも色素斑がみられるようになった。
診察:両額に不規則地図状のやや青みがかかった比較的境界鮮明な褐色斑が存在し、両下眼瞼には青紫調の色素斑がみられる。
診断のためのテストとその結果:肝斑(図[ID0602],図[ID0603],図[ID0604],図[ID0608])と紛らわしいが、皮疹は肝斑ほど境界が鮮明でなく、肝斑では皮疹がみられない下眼瞼にも色素病変がみられる。さらに色調は完全な褐色ではなく、特に下眼瞼では青紫色調を呈していることから後天性両側性太田母斑様色素斑、あるいは顔面真皮メラノサイトーシス(FDM)(図[ID0606],表[ID0614],図[ID0617],図[ID0618],図[ID0619],図[ID3601])であることがわかる。
治療:Qスイッチルビーレーザー照射を3~4カ月おきに計5回照射した。
転帰:色素病変はほぼ消失した。
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後天性両側性太田母斑様色素斑(堀母斑)またはsymmetrical type of nevus of Ota(パラパラ型太田母斑)

病歴:40歳代女性、20歳頃から両頬部にソバカス様の褐色斑が生ずるようになり、30歳頃には鼻根部にも褐色斑が生ずるようになったため来院。
診察:両頬部に点状から斑状のやや境界不鮮明な褐色斑が散在し、鼻根部では左右対照性に、境界不鮮明な褐色斑が存在している。
診断のためのテストとその結果:ソバカス様の老人性色素斑(図[ID3602])と間違われやすいが、境界がやや不鮮明で、やや灰紫色調を帯び、ほぼ両頬部に限局している。さらに鼻根部にも境界やや不鮮明な褐色斑がみられ、境界が鮮明である老人性色素斑とは異なる。
治療:Qスイッチルビーレーザー照射を3~4カ月おきに計5回照射した。
転帰:色素病変はほぼ消失した。
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infraorbital ring-shaped melanosis(目の下の隈)または後天性両側性太田母斑様色素斑

病歴:40歳代女性、20歳頃から両下眼瞼の隈が濃くなり、紫色調を帯びるようになった。生理前や疲れたときに濃くなるという。また30歳頃から両側のこめかみ部にも境界やや不鮮明な褐色斑が生ずるようになったため来院。
診察:両側のこめかみ部に境界やや不鮮明な褐色斑が存在し、両下眼瞼から鼻根部にかけて左右対照性に、灰紫色調の境界不鮮明な褐色斑が存在していた。
診断のためのテストとその結果:こめかみ部の皮疹だけをみると肝斑と間違われやすいが、境界がやや不鮮明で、やや灰紫色調を帯び、肝斑ではみられない下眼瞼に色素斑が存在する。また鼻根部にも境界やや不鮮明な淡い褐色斑がみられ、境界が鮮明である老人性色素斑とは異なる。念のため皮膚生検をしたところ真皮にメラノサイトが認められ、顔面真皮メラノサイトーシス(FDM)(図[ID0619]) であることがわかった。
治療:下眼瞼の色素斑(目の下の隈)に対し、Qスイッチルビーレーザー照射を3~4カ月おきに計3回照射した。
転帰:下眼瞼の色素病変はほぼ消失した。鼻根部の皮疹は未治療なため、残存している。
a:レーザー照射前
b:レーザー照射3回後
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後天性両側性太田母斑様色素斑(堀母斑):顔面真皮メラノサイトーシス(facial dermal melanocytosis: FDM)

病歴:30歳代女性、20歳頃から両頬部にソバカス様のしみが生じ、徐々に濃くなり大きくなった。最近は鼻根部にも薄いシミが生ずるようになったため、来院。
診察:両側の頬部から上眼瞼にかけて、比較的境界鮮明な点状から斑状の褐色斑が散在し、鼻根部にも左右対照性に、淡い境界不鮮明な褐色斑が存在していた。また目の下の隈も認められた。
診断のためのテストとその結果:ソバカス様の老人性色素斑や肝斑と間違われやすいが、境界がやや不鮮明で、やや灰紫色調を帯び、ほぼ両頬部に限局していることから鑑別は可能である。
治療:Qスイッチルビーレーザー照射を3~4カ月おきに計6回照射した。ただし鼻根部の色素斑は色調が薄く治療を希望しなかったため、レーザー治療を行っていない。
転帰:治療を行った部位の色素病変はほぼ消失した。
a:レーザー照射前
b:レーザー照射6回後
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後天性両側性太田母斑様色素斑(堀母斑):顔面真皮メラノサイトーシス(facial dermal melanocytosis: FDM)

病歴:50歳代男性、40歳頃から両額にシミが生じ、徐々に目立つようになったため、来院。
診察:両側の額にほぼ左右対称性に地図状~島嶼状にの境界不鮮明な灰紫色調を帯びた褐色斑が存在していた。
診断のためのテストとその結果:色素斑が灰紫色調を帯びた境界不鮮明な褐色斑であることから、後天性両側性太田母斑様色素斑であることがわかる。
治療:Qスイッチルビーレーザー照射を3~4カ月おきに計4回照射した。
転帰:色素病変はほぼ消失した。 
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ソバカス様日光色素斑

病歴:18歳女性、7~8歳頃から顔にソバカス様のシミが生じ、年齢とともに徐々に増数拡大してきたため、来院。スポーツをしているため日焼けする機会が多い。
診察:顔面全体、特に日焼けをしやすい部位に直径数mm大の点状の境界鮮明な褐色斑が多発、散在している。形は不規則地図状で、金平糖様のものもある。
診断のためのテストとその結果:境界鮮明な褐色斑で、大きさ、形あるいは色調の濃淡もさまざまであるが、金平糖様の形を呈するものもある。老人性色素斑(日光色素斑)である可能性が高いが、発症が小児期であることからパラパラ型太田母斑(symmetrical type of nevus of Ota)との鑑別が必要である。パラパラ型太田母斑はやや灰紫色を帯びる褐色斑であり、色素斑はほぼ両頬部に限局している。一方ソバカス様日光色素斑は発症年齢が若いものの、日焼けを受ける顔面に広範囲に存在することからパラパラ型太田母斑とは異なる。またたった1回のレーザー治療で色素斑が消失したことから、太田母斑ではないことがわかる。
治療:Qスイッチルビーレーザー照射を1回行った。
転帰:レーザー照射1カ月後に一過性の炎症後色素沈着がみられた部位も存在したが、レーザー照射を行った色素斑はすべて消失した。
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肝斑のアルゴリズム

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顔面のシミを主訴に来院した患者の色素病変の内訳

シミは皮膚科の教科書では肝斑の俗称とされている。しかし「シミ」を主訴に病院を訪れる患者をみてみると、肝斑の患者は意外と少なく、大部分は老人性色素斑(図[ID0605])あるいは扁平な脂漏性角化症(図[ID0613])で、なかには遅発性の太田母斑(FDM)(図[ID0606],表[ID0614],図[ID0616],図[ID0617],図[ID0618],図[ID0619],図[ID3601])や色素性母斑の場合も少なくない。また化粧品かぶれなどの炎症後色素沈着や固定薬疹(図[ID0615])なども含まれている。実際に帝京大学医学部付属病院皮膚科を受診した顔面の色素病変患者を調べてみると、シミを主訴にする患者が最も多く、シミを主訴に来院する患者の60%近くは老人性色素斑で、12%はFDM(太田母斑も含む)であった。次いで扁平な老人性疣贅(脂漏性角化症)が7%を占め、皮膚科教科書でその俗称がシミとされている肝斑は、わずか5%にすぎなかった。ただしこの集計は冬を2回含む1年半の集計であるため、紫外線暴露によって増加する肝斑患者は少なく見積もられたかもしれない。しかし夏季を2回含む集計であっても、10%に満たないと思われる。
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1: 渡辺晋一:シミ・ソバカスの実態、香粧会誌 2000;24: 290.