腸閉塞、イレウスの病態による分類
腸管通過障害を認めた場合、次にこの分類のどれに属するかを検討し、治療方針を決定していく。
出典
1:
著者提供
腸閉塞の腹部単純X線写真
腸管の拡張(a)とニボー(b)の出現が腸閉塞の典型的な所見である。
出典
1:
Feldman: Sleisenger and Fordtran's Gastrointestinal and Liver Disease, 10th ed.Saunders,2015:p2154-2170,Figure123-2.
腸重積による腸閉塞のCT画像
a: whorled appearance(矢印)を認める。
b: 小腸の重積(矢印)を認める。
出典
1:
Dushyant V Sahani, MD and Anthony E Samir, MD, MPH:Abdominal Imaging , 2nd Edition , Elsevier, 2016:p176-195, Figure25-15.
鼠径ヘルニア嵌頓による腸閉塞
a:右鼠径ヘルニア嵌頓を認める(矢頭)。ヘルニア内容は腸管であり(矢印)、腹腔内の小腸に拡張を認める。
b:嵌頓した小腸はclosed-loop obstructionになっており(矢頭)、その周囲に腹水の貯留を認める(矢印)。
出典
1:
Charles J. Yeo, MD, FACS:Shackelford's Surgery of the Alimentary Tract, 8th Edition, Elsevier, 2018:p842-850, Figure72.5.
小腸造影(腸閉塞の所見)
小腸狭窄部分(矢印)と口側腸管の拡張を認める。
出典
1:
Stephen E. Rubesin and Richard M. Gore: Textbook of Gastrointestinal Radiology 4th ed, 2014:46,Small Bowel Obstruction, 806-826, Figure 46-9.
イレウスの腹部単純X線写真
急性虫垂炎によりイレウスを発症し、拡張した小腸を認める。
出典
1:
Iain D Morrison, Patrick McLaughlin, Michael M Maher: Grainger & Allison's Diagnostic Radiology,6th Edition. Published January 1,2015. Pages 593-609.e1.2015. Figure 25-24.
Closed loop obstruction
腸捻転のためドレナージ不能の箇所(closed loop)と口側小腸内に造影剤の停滞を認める。
CL: closed loop
実線矢印: 捻転による閉塞
破線矢印: 閉塞より口側の小腸
出典
1:
Herring William MD, FACR: Learning Radiology: Recognizing the Basics. Published January 1, 2020. Pages 141-152. 2020. Figure 15.12.
年齢区分により考慮すべき疾患もしくは病態
腸閉塞、イレウスの原因となる病態は、発症する年齢によって頻度が異なる。年齢ごとに考慮すべき疾患もしくは病態の一覧を示す。
出典
1:
著者提供
腸閉塞の腹部X線検査
A:臥位。拡張した小腸を認める。
B:立位。拡張した小腸とニボーを認める。
出典
1:
Zarine K.Shah,William F.Bennett: Abdominal Imaging. Published January 1, 2017. Pages 176-195. 2017. Figure 25-2.
腸閉塞の腹部CT
拡張した腸管(白矢印)と拡張していない腸管(黒矢印)を認める。これらの腸管の間に閉塞部位の存在が疑われる。
出典
1:
Lee Goldman, and Andrew I. Schafer:Goldman's Cecil Medicine , Twenty-Fourth Edition.144 921-928,Figure 144-9,Saunders, 2012
上部空腸の腸閉塞
a:腹部単純X線検査。腹部に拡張した腸管を認めない。
b:腹部CT冠状断。上部空腸の拡張と狭窄部位を認める。
出典
1:
Mark Feldman, Lawrence S. Friedman, and Lawrence J. Brandt:Sleisenger and Fordtran's Gastrointestinal and Liver Disease , 10th ed.Saunders,2015:p2154-2170, Figure123-4.g
腹部CT(Whirl sign)
腸間膜の捻転による渦巻状の腸間膜血管(矢印)を認める。腸管の血流障害を示唆する所見である。
出典
1:
Feldman: Sleisenger and Fordtran's Gastrointestinal and Liver Disease, 10th ed.Saunders, 2015:p2154-2170, Figure123-6.
腹部CT(Small bowel feces sign)
小腸内に糞便様の内容を認める(Small bowel feces sign)。腸管の血流障害を示唆する所見である。
出典
1:
Feldman: Sleisenger and Fordtran's Gastrointestinal and Liver Disease, 10th ed. Saunders, 2015:p2154-2170, Figure123-6.
腹部CT(Pneumatosis)
腸管壁内ガス像(矢印)と大量の腹水を認める。腸管の血流障害を示唆する所見である。
出典
1:
Feldman: Sleisenger and Fordtran's Gastrointestinal and Liver Disease, 10th ed. Saunders, 2015:p2154-2170, Figure123-6.
腹部CT検査(肝内門脈ガス像と腸管内ガス像)
小腸の腸管壁内ガス像(画像右)と肝内門脈ガス像(画像左)を認める。腸管の血流障害を示唆する所見である。
出典
1:
Amer A. Alkhatib MD, et all. Journal of Emergency Medicine. Volume 40, Issue 6. 2011:125-126, Figure 2, Figure 3.
腹部CT
拡張した小腸とその肛門側に小腸の狭窄部位(矢印)を認める。
出典
1:
Adam: Grainger & Allison's Diagnostic Radiology, 6th ed. Saunders, 2014:p653-677, Figure28-37.
腹部CT(鼠径ヘルニア嵌頓)
左鼠径ヘルニアを認める。ヘルニア嚢内に壁の肥厚した小腸を認め、嵌頓している(矢印)。
出典
1:
Roberts: Clinical Procedures in Emergency Medicine, 7th ed.Saunders, 2018:p897-903, Figure44.7.
腹部CT(腸重積)
重積した腸管(矢印)と腸間膜脂肪(星)、拡張した腸間膜静脈を認める。
出典
1:
Feldman: Sleisenger and Fordtran's Gastrointestinal and Liver Disease, 10th ed.Saunders, 2015:p2154-2170, Figure123-11.
腸閉塞およびイレウス診断のアルゴリズム
腸閉塞、イレウスの診断は、問診、腹部単純X線検査、腹部造影CTを行う。その中で、複雑性腸閉塞を疑わせる所見(筋性防御、CK・LDHの上昇、代謝性アシドーシス)を認める場合は、迅速な対応が必要となるので、注意を要する。
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1:
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腸閉塞の治療アルゴリズム
腸閉塞では、まず単純性と複雑性の鑑別を早期に診断することが最も重要である。単純性腸閉塞では、腸管減圧後に原因の精査を行ってから待機的に手術を行うが、複雑性腸閉塞では緊急手術の適応となる。
小腸造影の画像:図[ID0607]
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1:
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イレウスの治療アルゴリズム
イレウスは何らかの原因が存在することが多い。その原因を除去することによって、改善が得られる。
イレウスに対する治療法の要約:
炎症に対する治療
抗菌薬
ドレナージ・手術による感染源の除去
蠕動促進薬
大建中湯
ガストログラフィン
パントール(血友病症例は禁忌、低K血症のときは効果が得られない)
プロスタルモン(緑内障、心疾患、高血圧症例には慎重投与)
オピオイド系鎮痛薬の中止・減量(塩酸モルヒネ、オピスタン、レペタン、ソセゴンなど)
原因となる薬剤・病態の除去
鉛中毒、ヒステリー、虫垂炎、胆石症、尿管結石症に対する処置
出典
1:
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