Now processing ... 
 Now searching ... 
 Now loading ... 

妊娠中の悪心・嘔吐に対する薬物治療のアルゴリズム

*1:RCTでの悪阻に対する有効性と安全性が確認されている。わが国での添付文書では
「妊婦へは有益性投与」である。
*2:「有益性投与」で、わが国で比較的広く使用されている。児への悪影響はほぼ否定されて
いるが、悪阻に対する有効性を示したRCTはまだない。
*3:悪阻に対する輸液療法を比較検討したstudyはなく、local ruleで行う。
出典
img
1: 著者提供

妊娠悪阻の病態像

つわりの原因については、妊娠10週頃をピークとして絨毛から分泌されるhCGが関与しているとする説、免疫反応であるとする説などがあるが、いまだ明らかになっていない。病状が進行すると、電解質異常や酸塩基平衡の異常を来す。また、ビタミンB1欠乏によるWernicke脳症の予後は、発症から治療開始までの期間が短いほど良好とされ、治療が遅れるほど健忘症状を主体とするKorsakoff症候群へ移行する可能性が高くなる。

つわりと妊娠悪阻の主な違い

つわりと妊娠悪阻を区別する明確な基準はない。ここに示すポイントや、本人の重症感、治療の希望などを総合して判断する。悪化すると治療が難しくなるため、本人の意向も聞きながらできるだけ早い段階での介入が望ましい。
出典
img
1: 東島 愛, 増崎 英明: 産婦人科の薬剤使用プラクティス:病態別処方-産科編-. 産婦人科の実際 2011;.60(11):1645.

生命を脅かす妊娠悪阻の重篤な合併症

頻回の嘔吐による食道や胃食道接合部の粘膜裂創により食道破裂やMallory-Weiss症候群を起こすことがある。縦隔炎や気胸、縦隔気腫などを合併することもあり重篤である。また、ビタミンK欠乏による出血傾向やビタミンB1欠乏によるWernicke脳症には注意が必要であり、発症する前に補充しておくことが重要である。脱水の程度によりさまざまな程度の腎機能障害を認めることがあり、透析を必要とした症例も報告されている。
出典
img
1: Cunningham F, Leveno K, Bloom S, et al.: Chap.54, Gastrointestinal Disorders. Williams Obstetrics 24th ed. McGraw-Hill Professional,p1071(改変あり)

妊娠中の悪心・嘔吐に対する食事療法

刺激物を避け、少量頻回の食事をとること、適切な水分の摂取により脱水を予防することがポイントである。
出典
imgimg
1: Optimal management of nausea and vomiting of pregnancy.
著者: Neda Ebrahimi, Caroline Maltepe, Adrienne Einarson
雑誌名: Int J Womens Health. 2010 Aug 4;2:241-8. Epub 2010 Aug 4.
Abstract/Text: Nausea and vomiting of pregnancy (NVP) is a common medical condition in pregnancy with significant physical and psychological morbidity. Up to 90% of women will suffer from NVP symptoms in the first trimester of pregnancy with up to 2% developing hyperemesis gravidarum which is NVP at its worst, leading to hospitalization and even death in extreme cases. Optimal management of NVP begins with nonpharmacological approaches, use of ginger, acupressure, vitamin B6, and dietary adjustments. The positive impact of these noninvasive, inexpensive and safe methods has been demonstrated. Pharmacological treatments are available with varying effectiveness; however, the only drug marketed specifically for the treatment of NVP in pregnancy is Diclectin(®) (vitamin B6 and doxylamine). In addition, the Motherisk algorithm provides a guideline for use of safe and effective drugs for the treatment of NVP. Optimal medical management of symptoms will ensure the mental and physical wellbeing of expecting mothers and their developing babies during this often stressful and difficult time period. Dismissing NVP as an inconsequential part of pregnancy can have serious ramifications for both mother and baby.
Int J Womens Health. 2010 Aug 4;2:241-8. Epub 2010 Aug 4.

静脈血栓塞栓症のリスク因子

妊娠悪阻患者は、脱水症状に加えて、嘔気により臥床がちとなるため、静脈血栓塞栓症のリスクが高くなる。
出典
img
1: 小林隆夫: 日産婦誌 2004;56(10):N381-392.

Wenicke脳症の頭部MRI

a:初診時FLAIR(上)とDWI(下)
b:9カ月後 FLAIR(上)とDWI(下)
 
発症当日の画像では視床内側に左右対称性の高信号域を認める(矢印)。
発症1カ月後のMRIでもすでに画像上の変化(改善)は認められていた。9カ月後の画像と比較すると、変化は明らかである。
この症例では、著明な体重減少を認め、重症悪阻によるビタミンB1欠乏がWernicke脳症発症の原因であることは言うまでもないが、発症当日の炭水化物摂取によりビタミンB1の消費が亢進したことも発症に関与していた可能性がある。発症当日、夫が在宅であったため比較的早期に異常に気付かれ、速やかにビタミンB1の投与ができたために後遺症なく治療ができたものと考えられた。
出典
img
1: 著者提供

妊娠中の悪心・嘔吐に対する薬物治療のアルゴリズム

*1:RCTでの悪阻に対する有効性と安全性が確認されている。わが国での添付文書では
「妊婦へは有益性投与」である。
*2:「有益性投与」で、わが国で比較的広く使用されている。児への悪影響はほぼ否定されて
いるが、悪阻に対する有効性を示したRCTはまだない。
*3:悪阻に対する輸液療法を比較検討したstudyはなく、local ruleで行う。
出典
img
1: 著者提供

妊娠悪阻の病態像

つわりの原因については、妊娠10週頃をピークとして絨毛から分泌されるhCGが関与しているとする説、免疫反応であるとする説などがあるが、いまだ明らかになっていない。病状が進行すると、電解質異常や酸塩基平衡の異常を来す。また、ビタミンB1欠乏によるWernicke脳症の予後は、発症から治療開始までの期間が短いほど良好とされ、治療が遅れるほど健忘症状を主体とするKorsakoff症候群へ移行する可能性が高くなる。