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航空性中耳炎(航空性中耳症)の成因・診断・予防・治療 フローチャート

航空性中耳炎の多くは下降時に生じ、アレルギー性炎症、上気道感染症などが誘因となる。鼓膜所見を正確に確定し、治療は誘因となる疾患の治療を行う。一般的に予後良好である。一般乗客と運航搭乗員で対応は多少異なる。
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1: 著者提供

一見鼓膜正常と思われる僅かな鼓膜所見

a:13歳男児。来院前日、下降時耳痛、アレルギー発作あり。ティンパノグラム-156 daPa(mmH2O)一見正常であるが、僅かに鼓膜内陥を認め、鼓膜弛緩部辺縁透見できるライン(上矢印)が認められる。鼓膜輪の血管(下矢印)。
b:51歳女性。下降時の耳閉塞感があったが鼓膜ほぼ正常、微小な点状出血を認める。
c:42歳女性。受診前々日降りてから耳閉塞感が持続する。一見正常だが鼓膜辺縁近くに多数の気泡が認められる。
中耳内圧の変化により微細な鼓膜所見が生じる。
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1: 著者提供

鼓膜の血管拡張と充血(内出血)

a:49歳女性。下降時耳が“ボー”、違和感が持続した。鼓膜緊張部から外耳道へ向かう血管、内陥した鼓膜弛緩部の血管拡張・充血を伴う。
b:35歳男性。下降時に 耳の違和感があり、鼓膜から外耳道へ向かう血管拡張を認めるも、弛緩部の内陥は認められない。
c:64歳男性。槌骨柄に沿い血管拡張・線状出血を認める:“ウオーン”という耳閉塞感を伴う。
d:9歳男児。受診前日飛行、耳がかゆいとのことで来院。
鼓膜槌骨柄下に沿い、鼓膜弛緩部から上外側へ向かう血管の拡張と充血(内出血)が認められる。
e:66歳女性。鼓膜辺縁に暗赤色の血管拡張・鬱血、耳痛。
f:31歳男性。受診前日飛行、左無自覚性、右のみ違和感あり、鼓膜の膨隆と血管拡張;血液の鬱滞。
鼓膜の内陥、少なくとも血管拡張、充血、うっ血を観察する。
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出血を伴う鼓膜所見

a:51歳男性。右耳閉塞感、耳抜きにて耳に響く。飛行3日後、黒赤色出血の中に槌骨突起が白く浮き上がって見える(chalk white appearance)。耳管咽頭口は炎症を伴うも開放気味。
b:31歳女性。耳閉塞感のみであったが鼓膜辺縁周辺へ出血が透見できる。
c:58歳男性。耳痛あり、中耳炎後遺症の鼓膜石灰化を伴い、出血を認める。
d:61歳女性。下降後“ボー”持続、鼓膜内陥と血管拡張、内出血を認める。
e:32歳女性。航空搭乗員で1日3回目の飛行時より耳閉塞感持続、槌骨柄に沿う線状出血、鼓膜上後方へ出血を認める。
f:39歳女性。下降時に耳に激痛があった。 鼓膜緊張部にbulla様膨隆出血を認め、鼓膜弛緩部の内陥を伴っている。
鼓膜の出血時間経過とともに鮮赤色から暗赤色へ。
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鼓膜弛緩部内陥を伴う鼓膜所見、高齢者症例 (c-e)

a:22歳女性。アレルギー性鼻炎発作中、下降時耳痛、内陥した弛緩部へも血管の拡張・出血がある。16歳の時も航空性中耳炎罹患。
b:20歳女性。“ボー” 鼓膜血管拡張、鼓膜弛緩部軽度内陥、少量の滲出液。
c:70歳男性。受診前日飛行、耳閉塞感あり。鼓膜弛緩部緊張部内陥あり、niveau形成を認める。鼓膜に張りがない。治療により弛緩部内陥も改善した。
d:76歳女性。2日前飛行し、“ボー” 弛緩部の内陥著明、中耳腔へ貯留液あるが自覚症状に乏しい。
e:71歳女性。受診前日飛行。耳閉塞感。鼓室に滲出液があったことが推察される。
鼓膜緊張部のみでなく鼓膜弛緩部の内陥・陥凹もチェックをする。過去に中耳炎の既往、薄い鼓膜。
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血性鼓室(hemotympanum)a: 耳管咽頭口より排出b,d

a、b:43歳男性。前日下降時耳閉塞感、難聴。 中耳腔へ赤褐色貯留液を認めた。耳管咽頭口から血液というより、ヘモジデリンと思われる黄色の液が排出していた。
c、d:62歳男性。5日前の飛行時より難聴、近医にて抗生剤内服、来院時鼓膜緊張部は比較的良好であるが、鼓膜弛緩部、後上部に出血が残存しているように思われる所見であった。耳管咽頭口より血液が流出していた。飛行直後は中耳腔へ血性貯留液があったと推察された。
中耳内出血・貯留液は繊毛機能により耳管咽頭口より排出される。
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幼児症例

a:2歳男子。1歳より飛行機に乗る度に後槌骨柄に沿った部位と鼓膜緊張部にも血管の拡張・出血様所見が認められる。
b:1歳の時の、飛行後の鼓膜所見。
c:5歳女児。受診前日飛行 アレルギー性鼻炎あり、水溶性鼻漏、中耳滲出液を認める。
未熟な耳管の乳幼児。無自覚性中耳炎が生じる。
乳幼児は症状を訴えないため、鼓膜所見のみが診断の手助けとなる。
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外界圧変動による中耳(鼓室―乳突蜂巣)圧と鼓膜の関係

上昇中は中耳(鼓室-乳突蜂巣)の空気が膨張し外界に対し相対的陽圧となり、鼓膜が膨隆する。上昇中は嚥下をしなくても過剰な空気が耳管より鼻咽腔へ排出される。嚥下をするとさらに改善される。水平飛行時、中耳圧と外界圧は等しくなる。下降中は中耳の空気が縮小し外界圧に対し相対的陰圧となり鼓膜は内陥する。通常は嚥下により耳管が開き、中耳圧と外界圧は平衡となり耳症状(耳閉塞感、難聴)がなくなるが、耳管が開かないと中耳圧と外界圧の圧差が増大し、耳症状が悪化する。中耳腔が陰圧になると、鼓膜の血管拡張・出血、鼓膜の内陥、中耳粘膜から滲出液露出、血性貯留液も生じうる。
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1: 新図説耳鼻咽喉科・頭頸部外科講座 中耳・外耳 編集委員 森山 寛、山口展正:航空性中耳炎pp126-127、メジカルビュー社2000 より一部改編

航空性中耳炎の予防法 内耳障害を避ける耳抜き法(低い陽圧負荷圧による耳抜き法)

鼻咽腔へ軽い陽圧をかけ、嚥下することにより容易に中耳腔へ空気が流入する。(autoinflation technique : modified Toynbee法)[4]。
息を吸い終えた時点で、呼気に鼻を閉じると肺からの空気が鼻咽腔へ達し圧が上昇する。鼻咽腔の陽圧の状態で嚥下すると耳管が開き中耳へ空気が流入する。また呼気に鼻を摘み下顎を左右へ動かすことにより耳管が開きやすくなり容易に耳抜きができる。
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1: 新図説耳鼻咽喉科・頭頸部外科講座 中耳・外耳 編集委員 森山 寛、山口展正:航空性中耳炎pp126-127、メジカルビュー社2000 より一部改編

一見鼓膜正常と思われる僅かな鼓膜所見、微小な点状出血

点状出血、線状出血の鼓膜所見があれば、気圧変動環境下にいたことが推測される。
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chalk white appearance

出血を伴う症例は2日目以後出血部位が黒ずみ、槌骨短突起が浮き上がって見えるchalky white appearanceの所見を呈す。
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血性鼓室(hemotympanum)

中耳腔へ赤褐色貯留液を認めた。
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航空性中耳炎(航空性中耳症)の成因・診断・予防・治療 フローチャート

航空性中耳炎の多くは下降時に生じ、アレルギー性炎症、上気道感染症などが誘因となる。鼓膜所見を正確に確定し、治療は誘因となる疾患の治療を行う。一般的に予後良好である。一般乗客と運航搭乗員で対応は多少異なる。
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一見鼓膜正常と思われる僅かな鼓膜所見

a:13歳男児。来院前日、下降時耳痛、アレルギー発作あり。ティンパノグラム-156 daPa(mmH2O)一見正常であるが、僅かに鼓膜内陥を認め、鼓膜弛緩部辺縁透見できるライン(上矢印)が認められる。鼓膜輪の血管(下矢印)。
b:51歳女性。下降時の耳閉塞感があったが鼓膜ほぼ正常、微小な点状出血を認める。
c:42歳女性。受診前々日降りてから耳閉塞感が持続する。一見正常だが鼓膜辺縁近くに多数の気泡が認められる。
中耳内圧の変化により微細な鼓膜所見が生じる。
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